「顔認証決済」、「タッチ決済乗車券」を抑えて、今年一番読まれた記事は・・・。

2023年も残すところあと少し。今年もキャッシュレスな話題をたっぷりとお届けしてきた電子決済マガジンだが、とくに多く読まれた(アクセスを集めた)記事のTOP5をご紹介することでこの1年間の出来事を振り返ってみたい。

●第5位 3社合併後の新会社名は「LINEヤフー」に、PayPayとのID連携は2024年度中に実施(2023/04/28)

https://epayments.jp/archives/47481

 ランキング第5位は、今年2月に突如発表された、ZホールディングスとLINE、ヤフーの3社合併に関する続報ネタに注目が集まった。4月28日に開催した2022年度通期および第4四半期決算説明会で、肝心の合併時期が「2023年10月1日」に決定したことが発表された。
 合併後の新社名は「LINE ヤフー株式会社(LY Corporation)」で、「そのまんま」なネーミングには多くの読者が納得したと思うが、電子決済マガジンが気になったのは同じ屋根の下で暮らすことになる「PayPay」と「LINE Pay」のサービス行方や棲み分けについて。
 これに先立って、今年10月4日からLINEとYahoo! JAPANのアカウント連携が始まっており、2024年度中にはPayPayとのID連携も開始される予定となっている。引き続き、2024年4月以降の動きをウォッチしていきたいところだ。

●第4位【さっそく現地で】代々木上原のYahoo!マートで「顔認証支払い」のPayPay決済を試す(2023/04/20)

https://epayments.jp/archives/47405

 立て続けにLINE ヤフー(当時はヤフー)の関連記事となったが、カードやスマホが不要で、レジに据え付けられたカメラに自分の顔を映すだけで決済できる、究極の手ぶら決済が話題を集めた。ユーザーを限定した試験導入は各所で始まっていたものも、実験とはいえ一般ユーザーが街中のお店、しかもなじみのあるコンビニ店舗で「顔認証支払い」が体験できるとあって、少なくとも筆者の周りでは散歩コースに代々木上原を追加する人たちが増えたようだ。(2023年12月25日時点で実験は終了しているので注意)
 勘違いしてしまいそうだが、こちらはPayPayの新サービスではない。サービスの提供主体はヤフーであって、PayPayはその「顔認証支払い」に対応する1つの決済手段であるとの位置付けや役割分担のしかたも新鮮だった。顔貌情報という個人の機微な情報を取り扱うこともあって、今後「顔認証支払い」が広がっていく中でさまざまなサービス提供形態が模索されていきそうだ。

●第3位 それわ決済端末ぢゃないだらふ 〜 人出が戻ってきた『リテールテックJAPAN 2023』会場レポート(2023/03/06)

https://epayments.jp/archives/47039

 電子決済マガジンでは毎年恒例となっている『リテールテックJAPAN』(主催・日本経済新聞社)の見学レポート。決済端末への偏愛的な視点が賛否両論を集める中、今年もわが道を貫いた。ところが最近の決済端末はOSがAndroidベースにほぼ移行し、筐体もシュッとしたスマートなものに席巻された結果、個性的な端末に出会える機会は年々減っているかのように感じられる。
 そんな思いで展示会を巡る中で、筆者がたどり着いたのが「ドッキング式のバスタブ端末」。その姿は記事本文でお確かめください。
 ちなみに、2024年のリテールテックJAPANは2024年3月12日から15日までの会期予定で、おなじみの東京ビッグサイトで開催される予定。来年もくまなく巡回しますので、覚悟しとけよなっ(ツンデレ)。

●第2位 様変わりする次世代の改札風景をひと足お先に体験、顔認証による究極のゲートレスも〜鉄道技術展2023レポート(2023/11/15)

https://epayments.jp/archives/48661

 2023年は交通乗車券の動向が極めて興味深い1年だった。国際ブランドの決済会社が推し進める「タッチ決済乗車券」を採用する事業者は全国の鉄道・バス事業者などに大きな広がりを見せた。
 しかし、よーく発表内容を見たり、現地に足を運んだりすると、EMVコンタクトレスに準拠する「タッチ決済」以外にも、「QRコード」や「顔認証」を用いて乗車券機能を実現する交通事業者も増えてきていて、交通乗車券を取り巻く環境が今まさに多様化の時代に突入していることがヒシヒシと伝わってくる。
 そんなことを考えていたら、これらを一挙に見学・体験できる展示会が幕張メッセで開催されると聞きつけて、いそいそと足を運ぶ筆者であった。自動改札あり、メカあり、ロボットあり、の楽しかった大人の社会科見学。勢い余って交通業界に権威のあるこんなところからも本誌にお呼びがかかるほどの巻き込まれようだった。

第91回運輸政策セミナー「どうなる? 今後の交通系キャッシュレス決済 〜鉄道事業者の戦略〜 」に登壇しました|電子決済マガジン(

●第1位【実際に使ってみた】Oliveフレキシブルペイのカード番号は全部同じ。完全クラウドで切り替わる仕組みだった(2023/03/11)

https://epayments.jp/archives/47147

 電子決済マガジンで根強い人気を誇るコーナーの「てみた」シリーズ。三井住友フィナンシャルグループが満を持して今年3月に新登場したモバイル総合金融サービスの「Olive(オリーブ)」が題材だったこともあり、第2位を圧倒的に引き離すアクセス数を稼ぎ出した。
 言ってみれば、スマホアプリを使ってカードのモードを「クレジット」「デビット」「プリペイド(ポイント払い)」と切り替えながら、コンビニで3回、何かを買ってみるだけのレビューなのだが、これが人気を集め、記事公開から1年近く経とうとする現在にあっても継続的に閲覧いただいている。ありがとうございます。
 カード番号ではなく、サーバー(クラウド)側で支払いモードを切り替える仕組みのため、カード番号自体はどのモード設定にして支払ったとしても同じカード番号がお店に伝わることを、コンビニの実物レシートで確認した格好。まさに「百聞は一見に如かず」である。
 ところで「Olive」のサービス発表会や、その後6月に発表されたTポイント(CCCグループ)との統合発表会でも、前面に立って勢いのあるプレゼンテーションをなさっていた三井住友フィナンシャルグループ・執行役社長 グループCEO(当時)の太田 純氏が2023年11月25日に逝去された。エネルギッシュなお姿を間近に見ていた筆者にはいまだ信じられない気持ちでいっぱいだが、太田氏がOliveを世に生み出すところに居合わせることが出来たことは、まさしく取材冥利に尽きる。謹んでお悔やみ申し上げます。
 TポイントとVポイントの統合発表会で、カルチュア・コンビニエンス・クラブ・代表取締役会長 兼 CEOの増田 宗昭氏が、統合のきっかけにもなった太田氏との出会いを振り返って、「太田さんと会ったときに、おもろいおっちゃんやなぁと思って(統合に向けた交渉話を)始めた」とコメントされていたことも、太田氏のお人柄を示す印象深いエピソードだ。 

三井住友銀行の「一体型カード」に世界初の新技術、アプリで切り替えて使うマルチナンバーレスカードが3月お目見え|電子決済マガジン(2023/02/06)

Tポイント消滅で生まれる「青と黄色のVポイント」、キャッシュレスへの「相乗り」で貯めやすさ・使いやすさを向上|電子決済マガジン(2023/06/13)

 TOP5で取り上げた記事以外にも、2023年の電子決済業界にとって非常に重要な発表やニュースについて、折りに触れて電子決済マガジンで紹介させていただいた。こうして記事が作成できるのも、取材先の理解や協力があってのこと。あらためて御礼を申し上げます。
 2024年も、自分で試してみずにはいられなかったり、興味を湧き立ててくれる新サービスのお知らせをお待ちしております。

 

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

Comments are closed.