【実際に使ってみた】Oliveフレキシブルペイのカード番号は全部同じ。完全クラウドで切り替わる仕組みだった

3月1日にサービス開始になったSMBCグループ のモバイル総合金融サービス「Olive」。その申し込みに応じて発行される「マルチナンバーレスカード」が約1週間後の3月8日、筆者の手元に届いた。さっそく近所のコンビニへ駆け込んで、世界初の仕組みである「フレキシブルペイ」を試してみた。

クレジット、デビット、ポイント払いで、それぞれ何か買ってみる

 もうテレビCMなどで目にした読者も多いのではないだろうか。SMBCグループが満を持して投入した「Olive(オリーブ)」のサービスが3月1日から始まった。新規開設に加えて、すでに三井住友銀行の口座を持っている人のOliveへの切り替え受付も同時に始まっており、3月1日にWebから申し込みを済ませた方も多いだろう。 
 かくいう筆者もそんな1人だが、筆者の手元にも3月8日に新しい「マルチナンバーレスカード」が届いた(写真1〜3)。三井住友銀行のキャッシュカードの機能に加えて、Visa ブランドの付いたクレジットカード、デビットカード、プリペイド(ポイント払い)カードの4つのカード機能が1枚に搭載された、まさにスペシャルなICカードだ。

写真1 裏表の区別がない「両A面」のデザイン

写真2 簡易書留で届いたOliveのマルチナンバーレスカード

写真3 何しろカード券面に一切のカード情報が記載されていないので、別紙カードが付いてくる

 Oliveのサービス詳細はこちらで紹介している通り、この新カードにはいくつかの「世界初」が込められている。とりわけ本誌の関心の傾向としては、わりと技術的な側面からの興味が強いので、到着してすぐで恐縮だが「フレキシブルペイ」を、先に紹介したそれぞれのモードでさっそく使ってみることにした。実際にお店で使ってみることで、Oliveアプリ上での取り扱われ方や、お店での処理のされ方など、詳しい仕組みをこの目で見てみたかったというのがそのモチベーションである。

三井住友銀行の「一体型カード」に世界初の新技術、アプリで切り替えて使うマルチナンバーレスカードが3月お目見え|電子決済マガジン(2023年2月6日掲載)

 レシートの比較をわかりやすくするために、今回はあえて同じコンビニエンスストアで買い物をしてみた。コンビニの選定に特段の意図はない。三井住友銀行アプリを操作して、それぞれ事前に「クレジットモード」、「デビットモード」、「ポイント払いモード」に設定した状態で(写真4)、毎回商品を1点ずつ買ってみた。その結果が写真5である。

写真4 三井住友銀行アプリより、各モードに設定を切り替えたところ(左から順に「クレジットモード」、「デビットモード」、「ポイント払いモード」)

写真5 モードをそれぞれ切り替えて、コンビニで何か買ってみたレシート(左から順に「クレジットモード」、「デビットモード」、「ポイント払いモード」)

まったく同じに見える3枚のレシートも、意味がわかると・・・

 はい、あなたの見間違いではありません。なんと、すべての取引で、会員番号(カード番号) 、APL名、AIDが見事に3枚とも一致しているではないか。つまり、カードの情報がコンビニのレジに伝わった時点では3回の支払いとも「まったく同じカード」として処理されたことになる。
 まさか、初体験に浮かれてモードの切り替えがうまくいっていなかったか・・・。そんな筆者の心配をよそに、カード利用アラートがそれぞれしっかりとメールで飛んできていたので、これを確認してみる(写真6)。うん、確かにクレジット、デビット、ポイント払いで処理がされている。口座残高を確認しても、ちゃんとデビット利用分が引き落としになっていたし、ポイントもしっかり減っていた。
 つまり、実験自体に誤りはなかったといえる。

写真6 利用直後に飛んできたメール通知(左から順に「クレジットモード」、「デビットモード」、「ポイント払いモード」)

 先の解説記事中では、「カード自体には1つのシンプルな決済機能を搭載しておきながら、Oliveアプリから飛んできた『指示』を受けて、決済を処理するサーバー側で電文の送り先を振り分ける仕組みが採用された」と記載したが、この「1つのシンプルな決済機能」の具体的な内容が、1つだけ設定されたカード番号(名義人や有効期限、セキュリティコードなどを含む)だったことになる。しかも写真5のレシート記載内容から、この1つのカード番号は「Visa Debit」のICカードアプリケーションを使用していることがわかる。
 疑り深い筆者なので、念のため三井住友銀行アプリを開いて、各決済モードに切り替えた上でそれぞれのカード番号を表示させてみた(写真7)。すると、ここでもまったく同じカード情報であることが確認できた。というか、落ち着いてこの画面を先に見ていたら、わざわざコンビニで買い物してみる必要はなかったのでは!? なんて野暮な疑問は2秒で心から振り払ってしまおう。

写真7 それぞれのモードで使用されるカード番号は三井住友銀行アプリから確認できる(左から順に「クレジットモード」、「デビットモード」、「ポイント払いモード」)

写真8 ついでにキャッシュカードも使ってみたが、そもそもVisaのカード(番号)とはまったく関連がない

 ここまで、随分ともったいをつけて報告してきた「フレキシブルペイはカード番号が全部同じ」という事実だが、実は、そもそもOliveのサービス紹介Webページでネタバレしていたことに後になって気が付いたので、該当の記載箇所を貼り付けて紹介しておく(写真9)。そもそも本記事冒頭の写真3を撮っている時点で、「カード番号」が1つしか書かれていないのを見た瞬間に気が付くべきだったのかもしれない。
 フレキシブルペイの真髄は、カード番号が同一のVisaカードを、サーバー(クラウド)側の設定状況に応じて切り替えて使用するという画期的な内容だった。1枚のカードを複数の決済カードとして切り替えて使用するアイディアとしては、かつて、カードのICチップ内部に記録されたカード情報(カード番号)を動的に書き換えて使用するものもあったが、見るからに特注ICカードのコスト高が課題として残りそうな気配が漂っていた。これに比べて、同じ1枚のカード(情報)をサーバー側で切り替えて使う方法は、素人目に見てもコスト有利に思える。コロンブスの卵、ってこういうことを言うのか。
 それにしても、機能が別々な決済カードを、まったく同一のカード番号で使い分けられるのだとは夢にも思わなかった。記者会見にも出席していたのに、そんな大事な事実にまったく気が付かなかったことの恥ずかしさも忘れてしまうほどに、筆者には大きな衝撃だった。
 「こりゃぁ、世界初に違いないわ。」と、心の底から唸ってしまった春の朝の出来事である。

写真9 長々と解説してきましたが、ここの下のほうに書いてありました(出典:「Olive」>「よくあるご質問」三井住友銀行のホームページ)

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。