MUFGが新金融ブランド「エムット」を発表、三菱UFJカードのポイント還元率は最大20%に引き上げ

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が新たな金融ブランドとして「エムット」を立ち上げると発表した(写真1)。銀行のリテール戦略の要として、リニューアルした銀行アプリを中心に据え、グループ共通のIDや、それに紐付く共通ポイントプログラムなどを特長とする。これに連動して、グループ内のクレジットカード会社である三菱UFJニコスからも、ポイント還元率引き上げなどの新しい施策が発表された。

写真1 写真左から、三菱UFJニコス 代表取締役社長の角田 典彦氏、三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員の半沢 淳一氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ 代表執行役社長の亀澤 宏規氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役常務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTOの山本 忠司氏

銀行アプリを軸にグループ連携、共通IDを発足

 三菱UFJ銀行を連結子会社とする三菱UFJフィナンシャル・グループは5月27日、グループで進める新しい金融サービスブランドとして「エムット」を発表した。
「金利のある世界が到来する一方で、大半の生活者が金融知識に自信がなく、アクションが取れない状況にある。われわれがグループとしてお金にまつわる根本的課題に対して出来ることはないかと考えた。そして、それらをすべてまるっとサポートさせていただくことを念頭に置き、『エム(M)』と『アットマーク(@)』の組み合わせにした」(三菱UFJフィナンシャル・グループ・代表執行役社長の亀澤 宏規氏/写真2

写真2 三菱UFJフィナンシャル・グループ 代表執行役社長の亀澤 宏規氏

 「エムット」を掲げた施策の第1弾を6月2日からスタート開始する。グループ連携では、三菱UFJ銀行口座アプリを中心に据える考えで、インターネットバンキングアプリの「三菱UFJ銀行アプリ」を同日にリニューアルする。ユーザーインターフェースを刷新し、利用者がよく使うサービスを上位に配置できるなどカスタマイズもできるようにする(画面1)。また、「三菱UFJカード」や「三菱eスマート証券」、「ウェルスナビ」、「バンドルカード」、「COIN+(今後、対応予定)」などへのリンクボタンも配置し、グループの金融サービスを利用しやすくする(画面2)

画面1 (出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「リテール戦略発表会」資料より)

画面2 (出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「リテール戦略発表会」資料より)

「基本的にこれまでは銀行、信託、クレカ、オンライン証券、と縦割りでやってきたが、技術が発展してアプリがつながるようになったため、お客様から見ればシームレスに横の連携があったほうがよい。そして、うちの一番の強みは銀行が強いところ。個人の口座数は多いし、預金量もダントツなので、その強みを横に展開していく。そのため、銀行アプリをゲートウェイにしてつなげていく発想になった」(亀澤氏)
 このグループ連携強化を目的としてグループ内の「共通ID」を発足させ、2026年度にはグループ共通のハウスポイントとして「エムットポイント」を開始する予定としている(画面3)。サービス内容や取引状況に応じてポイント還元率や金利・手数料などを段階的に優遇するロイヤリティプログラムも組み込まれるという(画面4)

画面3 (出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「リテール戦略発表会」資料より)

画面4 (出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「リテール戦略発表会」資料より)

サブスク契約で+5%、タッチ決済対応の新「ウォレット」アプリも登場

 6月2日からスタートする「エムット」関連施策のもう1つの目玉が、三菱UFJニコスが発行する「三菱UFJカード」のポイントプログラムを大幅に強化することだ。
 まず、「グローバルポイント」のポイント還元率を改定する。これまでコンビニや飲食店、スーパー、飲食店といった特定加盟店での利用で5.5%だった還元率を、7%(基本0.5%+特典6.5%)に引き上げる。あわせて対象となる特定加盟店の数も合計30ブランドに拡大する(画面5)

画面5 (出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「リテール戦略発表会」資料より)

 これに、MUFGカードアプリ(同日にリニューアル)へのログインや、三菱UFJ銀行の給与受け取りなど条件に応じてさらにスペシャルポイントが最大8%の幅で付与されるが、今回さらに各種サブスクリプションサービスの利用(日経電子版、Appleの各種サービス、ほか)によって5%の追加還元が行われるようになる(画面6)。この結果、最大のポイント還元率は20%まで引き上がることになる(画面7)

画面6 (出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「リテール戦略発表会」資料より)

画面7 (出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「リテール戦略発表会」資料より)

「今回のポイント還元率引き上げでは、非金融のサブスクを還元条件にしたところがポイントだ。日常生活の中で無理なくポイントアップ、圧倒的にお得なポイントプログラムをご利用いただきたい」(三菱UFJニコス・代表取締役社長の角田 典彦氏/写真3

写真3 三菱UFJニコス 代表取締役社長の角田 典彦氏

 これらポイントの「入口」だけでなくポイントの「出口」、つまりポイントの使い道についても施策を用意した。それが新たに同日からダウンロード可能になるモバイル決済アプリ「グローバルポイントWallet」である(画面8)。新アプリではグローバルポイントの1P=5円換算でアプリ残高にチャージができ、お店ではVisaのタッチ決済で直接支払いに利用できる(Apple PayとGoogle Payに対応)。新アプリはポイントだけでなく、銀行口座やデビットカードからのチャージにも対応している。

画面8 (出典:三菱UFJニコスの報道発表資料より)

エムットポイント→コインプラス→銀行口座残高のルートも

 三菱UFJカードのポイントプログラム刷新では「貯まりやすさ」と「使い勝手」を全面に打ち出した形だが、来年度にグループ共通のハウスポイントとして登場する「エムットポイント」以降は一体どのような形になっていくのだろうか。
 これに関連して、会見中には三菱UFJ銀行とリクルートの合弁会社、リクルートMUFGビジネスが提供する資金移動業口座、「COIN+(コインプラス)」との今後の連携についても話題に上がった(画面9)。先述の「三菱UFJ銀行アプリ」の機能拡充策として、今年の夏には銀行アプリとの連携がスタートする予定で、「送金手数料が完全無料で、給与も受け取れるのが特長だ」(三菱UFJフィナンシャル・グループ・執行役常務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTOの山本 忠司氏/写真4

画面9 (出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「リテール戦略発表会」資料より)

写真4 三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役常務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTOの山本 忠司氏

 今後の共通ポイント展開ではこのコインプラスの活用が鍵となりそうだ。「来年度、三菱UFJニコスのポイントをグループ共通ポイントへ拡張する。エムットポイントはコインプラスにも交換できる予定で、その残高を銀行口座に移す(出金する)ことも可能になる。1円も無駄にしたくないというお客様のニーズに応えられるのではないか」(三菱UFJ銀行・取締役頭取執行役員の半沢 淳一氏/写真5

写真5 三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員の半沢 淳一氏

 一般的に、ポイントプログラムで貯まったポイントを銀行口座へ現金として引き出そうとする場合には、法的な制約も多いことから、そもそも対応していない提供事業者も多い。その代わりに、今回発表になった三菱UFJニコスの「グローバルポイントWallet」のように、ポイントをカード加盟店でそのまま利用できるようにすることで利便性を訴えてきた経緯がある。
 今回、MUFGグループではこの課題に、ポイントでも現金でもない「コイン」という新しい価値形態を介することで、新しいポイント還元の選択肢として提案していく考えだ。
「(共通ポイントについては)他社を徹底的に分析しているし、トライアルもやってきたが、経済圏を自分たちに閉じ込めるのは絶対に無理だと思う。今回の還元をきっかけにカードをお作りいただいても、他社のカードもお持ちになり続けるだろう。しかし、(今回の施策で)動いてくださった方たちが、すべて離脱してしまうかというとそうではない。お得感だけでなく、(カードを持つことでサービスの)利便性を感じていただくことで、止まっていただける率は高まると考えている」(前出・三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤氏)

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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