PayPayが上場に向けた準備を開始、キャッシュレス市場のシェア2割に

フィンテックの上場が多い米国市場も「スタディしていく」

 LINEヤフーは5月7日、同社の連結子会社であるPayPayが上場を目指して準備を開始したと発表した。同日午後に開いた2024年度通期および第4四半期決算説明会の中で明らかにした。
 LINEヤフー・代表取締役社長CEO(最高経営責任者)の出澤 剛氏は、「上場後もLINEヤフーはPayPayの事業と企業価値拡大に関与していく。PayPayが決済アプリから総合金融プラットフォームへの飛躍を力強く実現するための1つの手法だと考えている。資本市場の力を借りることで経済圏拡大を加速させ、さらなる成長に打って出たい」と説明した。
 上場先は米国市場も視野に入れるが、具体的な上場時期はまだ明確ではないという。「米国に絞り込む意図はなく、今日からスタディしていって適切な市場を見つけたい。米国のほうがフィンテック関連での上場が多いので、検討に値する」(LINEヤフー・上級執行役員CFO(最高財務責任者)の坂上 亮介氏)

PayPayの黒字幅が大幅伸長、銀行連携もスタート

 LINEヤフーは事業セグメントを、メディア、コマース、戦略の3つに分類するが、PayPayを含む金融サービス関連は3つ目の「戦略事業」に含めている。2024年度の通期決算では3つすべての領域で増収増益を確保したが、PayPayが牽引する戦略事業の伸びが著しく、売上収益は対前年度で371億円を上乗せした(画面1)

画面1 PayPayを含む「戦略事業」の概況(出典:LINEヤフー「2024年度 通期および第4四半期 決算説明会」資料より)

 PayPay単体の推移を見ると、登録ユーザー数は6,838万人、連結売上高は2,488億円に達した。連結EBITDAは昨年度から大幅増の455億円となり、EBITDAを売上高で割ったEBITDAマージンは18.3%まで伸長した(営業利益は非開示)(画面2)
 こうしたPayPayの急拡大について、前出の出澤社長は「日本のキャッシュレス決済比率は2024年度に40%に達したが、他国に比べるとまだまだ低く、成長の余地がある。その中でPayPayは決済回数で約20%のシェアを持っている」と評価した(画面3)

画面2 PayPay連結事業の概況 (出典:LINEヤフー「2024年度 通期および第4四半期 決算説明会」資料より)

画面3 キャッシュレス市場とPayPayのシェア(出典:LINEヤフー「2024年度 通期および第4四半期 決算説明会」資料より)

 そうした環境下にあって、近年、特にPayPayとして検討してきたのは、銀行とのサービス連携だという。そもそもPayPayは決済方法として、残高払いのほかに、クレジットカードのPayPayカードに紐付けて代金支払いを行う「PayPayクレジット」がある。この際に、PayPayのメニュー画面の背景色がレッドからブルーに変化する作りになっているが、こうしたサービス連携の成果がPayPayカードの取扱高や発行枚数の伸びに表れているという(画面4)
 この成功を受けて、PayPayはPayPay銀行を今年4月に子会社化(PayPayカードは2022年10月にPayPayが子会社化している)。同じ4月から、PayPay銀行アプリを使ってPayPayでのデビット決済(PayPay銀行の口座残高からの引き落とし)を利用できるようにした。今後はPayPayアプリからもデビット決済機能を利用できるようにする予定だ。
「PayPayカードで実現したような高成長をPayPay銀行でも実現していきたい。PayPayの広範なユーザーベースを活用し、連携強化によって、保険や証券といった各金融サービスをさらに成長させていく」(出澤社長)

画面4 PayPayカード、PayPay銀行の実績推移(出典:LINEヤフー「2024年度 通期および第4四半期 決算説明会」資料より)

画面5 PayPayの名称を冠するLINEヤフー グループ各社の金融サービス実績数(出典:LINEヤフー「2024年度 通期および第4四半期 決算説明会」資料より)

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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