「りそなサステナペイ プロジェクト」(仮称)が26年度始動へ、第1弾はVisaデビットカード連動のCO2排出量可視化アプリ

2026年度上期から、りそなグループの4銀行が発行するVisaデビットカードのショッピング利用データをもとにCO2排出量をアプリで可視化する新サービスがスタートする。同社の個人向けデビットカードが特に浸透しているという若年層に向けて、SDGsにつながる具体的なアクションを示すことによって、気候変動に向けた具体的な対策の拡大と、キャッシュレスの推進を両立しようとするのが「りそなサステナペイ(仮称)」と呼ぶ取り組みの第1弾だ。

独・ecolytiq社との協業による提供はアジア初

 りそなグループのりそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行の4社は7月22日、同グループが発行するデビットカードの利用に応じた「CO2排出量可視化サービス」を2026年度上期から開始すると発表した。4銀行が個人向けに発行するVisaデビットカードが対象で(画面1)、「りそなグループアプリ」の画面上に、デビットカードで支払った商品やサービスが生産、提供される過程で排出されたCO2排出量を表示する(画面2)。併せて、CO2削減につながる行動変容を後押しするメッセージやヒントなども配信する。アプリ提供に先行して、2025年10月からWebページ上で簡易的にCO2排出量を算出できるツールも先行公開する予定だ。

画面1 (出典:りそなホールディングス)

画面2 (出典:りそなホールディングス)

 新サービスは、デビットカードのブランドであるVisaに加え、Visaとパートナーシップを結んでいる独・ecolytiq(エコリティック)社との協業により開発、提供する。Visaとecolytiq社はすでに欧州、中東、北米の地域で10社のカード発行会社を通じて、CO2排出量可視化のサービスを展開しているが、アジア太平洋地域での提供はりそなグループが初となる見通し(画面3)

画面3 (出典:ビザ・ワールドワイド・ジャパン)

 りそな銀行では2023年に公表した中期経営計画で「CX(コーポレートトランスフォーメーション)」への取り組みを打ち出しており、さらにその内訳として、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)やDXへの注力を掲げてきた。
 そうした中で、キャッシュレスの推進ではデビットカードを戦略的に強化してきた経緯がある。2011年に発行開始したりそなデビットカード(Visa)の発行枚数は330万枚(2025年3月末時点)に上っており、デビットカードから得られた収益も2025年3月期で76億円を計上した(画面4)
「(デビットカードの発行枚数は)5年で2.3倍になった。個人向けデビットでは特に、20代を中心として若年層に受け入れが進んでいる。アプリと連動する形でキャッシュレスの推進がうまく回っているのかな、と感じている」(りそなホールディングス・執行役兼グループCDIOの川邉 秀文氏/写真1

画面4 (出典:りそなホールディングス)

写真1 りそなホールディングス 執行役兼グループCDIOの川邉 秀文(かわべ・ひでふみ)氏

SDGs教育が根付く若年層に、具体的な対策アクションを提示

 その若年層に対して、アプリを通じてSDGsが13番目に掲げる「気候変動に具体的な対策を」につながる具体的なアクションを促そうというのが、りそなグループが立ち上げる「りそなサステナペイ プロジェクト(仮称)」である(画面5)

画面5 (出典:りそなホールディングス)

 現在の若年層は、いわゆるSDGs教育が社会的に浸透し始めた以降の世代であり、課題意識や考え方は根付いている。その一方で、「具体的にどのようなアクションをしたらよいかわからない」ことが実効性の面でネックとなっている。こうした実情に鑑みて、相対的にCO2排出量が多いと言われる現金決済に代えて、デビットカードでのキャッシュレス取引を推進しつつ、CO2排出量可視化アプリを通じて消費者の行動変容を促していく。
 CO2排出量可視化アプリ以外の取り組みとして、りそなデビットカード(Visa)の利用件数に応じて算出した金額を、国内の自然災害による被災地へ寄付したり、りそなの基盤となる地域などへ環境保全のための寄付を実施する。また、環境問題に関心のある大学生との共創プロジェクトを立ち上げる予定で、企画検討段階から学生の柔軟な発想や発信力を取り入れることで、若年層とのコミュニケーションを強化していくという。

 

写真2 ビザ・ワールドワイド・ジャパン プロダクト本部長の飯高 和也(いいだか・かずや)氏。「Visaがパートナーシップを結ぶecolytiq社との提携によるCO2排出量可視化サービスの提供は、アジア太平洋地域では日本のりそな銀行が初となる」

写真3 ecolytiq GmbH・Chief Commercial Officerのエヴァン・ペティジョン氏。「銀行の強みは2つある。1つはお客様に信頼されていること。もう1つは、銀行は大事な取引データを見ており、その大部分がわれわれの購買している商品であること。(CO2排出量の削減に向けて)どこをどう変えれば良いのか分析できる」

写真4 りそなグループのコミュニケーションキャラクター「りそにゃ」と、Visa公式マスコットの「VISAビィちゃん」も応援に駆け付けた

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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