いよいよ待ちに待ったこのときがやってきた。2023年2月28日から3月3日までの4日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された『リテールテックJAPAN 2023』の会場には、ほぼ全員がマスク姿という身なりの違いはあるものの、多くの来場者が詰めかけ、往時の展示会場を彷彿とさせる賑わいを見せた。そろそろ決済端末にも新機種ラッシュはあるのか、ないのか。今回も決済端末好きの筆者が、会場で見つけた決済端末の話題を中心にレポートする。
※タイトルと本文はそんなに関係ありません。
スマホが決済端末になると嬉しいことがある
昨年に引き続いて決済プラットフォームの「stera(ステラ)」をフィーチャーしたブースを出展した三井住友カード(写真1)。その象徴的な決済端末である「stera terminal(ステラ・ターミナル)」の勇姿は、この2年ほどで巷のあちらこちらのお店で目にするようになった。
今年の出展では、その端末上で提供するアプリマーケットの「stera market」や、広告配信アプリの「stera ads」といったオプションサービスのほか、端末メーカーPax Japanによる無人機対応の決済端末(「IM30」)などが紹介されていた。
筆者の最大の関心事であるステラの「新機種」については、コンセプトボード(写真2)に一部片鱗が見られたものの、具体的な実機やモックの展示はなかった。このことは、「stera」とはどれか特定の決済端末そのものを指す名称でなく、決済端末を裏側で支えるシステムであることの表れとも考えられる。
その意味では、三井住友カードの出資先でもあるマレーシアのフィンテックベンチャー、Soft Space社との協業で紹介していた「Tap to Phone」(写真3)もsteraの拡張形といえる。展示されていたのはNFC対応のAndroidスマートフォン(iPhone対応は未定とのこと)に専用のアプリを搭載することで、決済端末として利用する提案。デモではVisa、Mastercardのタッチ決済に加えて、コード決済への対応がうたわれていた。言わずもがな、既存のスマホが使えるので、決済端末のハードウェアコストをかけずにsteraが導入できるとの触れ込みだ。
このような「スマートフォンにアプリを入れることで決済端末に変身させる」サービスの紹介は、今年のリテールテック会場ではいくつかの場所で展示されていた。専用端末でなく、スマホやタブレットといった市販の製品を決済処理に流用するものを、英語では「COTS(Commercial Off-The-Shelf)」と呼ぶ。このCOTS(コッツ)をカード加盟店での決済に持ち込む提案はNTTデータのブース(写真4)でも行われていた(残念ながら写真はNGだった)。
NTTデータからのCOTSの提案で特徴的なのは、対応する決済手段の幅の広さ。EMVベースの「タッチ決済」に加えて、FeliCa対応の「電子マネー」では交通系ICカードを含めて対応する予定。また、コード決済についても利用できるようになるという。
さらにPOS連動についても対応するほか、加盟店契約のための会社(アクワイアラー)を加盟店の希望により選択できるようにし、マルチアクワイアリングにも対応するという。従来のスマホを決済端末に応用する発想では、催事や移動店舗での利用をはじめ、比較的小規模なお店による導入が中心であったように思えるが、NTTデータは既存のCOTSにあった制約を取り除くことで、中規模や大規模店舗からの導入ニーズにも応えようとしているようだ。
これはバスタブですか? いえ、決済端末です。
オムロンが今年発売を予定している新しい決済端末には、POSレジシステムなどを提供する日本リテイルシステムのブースで出会うことができた(参考出品/写真5)。ひと昔前であれば「据え置き型」と分類されるところだが、決済端末部とドック部を分離・着脱できるようにした、「据え置き型」と「モバイル型」のいいとこ取り端末だ(写真6)。
決済端末部とドック部の間はWiFiで通信する。大元の通信機能のほか、決済端末部への非接触充電機能、入出力ポート(写真7)、プリンター(写真8)などがドック部に内蔵される。Androidベースの決済端末部はカード決済や電子マネーの全般(磁気、接触IC、非接触IC)に対応しているほか、コード決済用のカメラをディスプレイ前面の上部(フロント)と、端末の上端側面(リア)の2台搭載した。リアカメラはドックに収めた状態でも、撮影できるように工夫がされている(写真9)。
決済端末が加盟店で利用される場面を想像してみると、精密機器として必ずしもデリケートに取り扱われるわけではなく、時に手荒に、時にはぞんざいに扱われることも日常茶飯事かもしれない。その点、WiFi接続でドッキングする新端末は、どちらの向きでもドックに収めることができるほか、接続ケーブルがからみにくい独自の工夫が施されるなど、「人間工学」の追求を彷彿とさせる。
ドッキング状態を横から見ると、まるで「バスタブ」のようなチャーミングさも魅力(写真10)。お店でその愛くるしい姿を見かけるのが今から楽しみになってきた。
中国の決済端末メーカーNewlandがついに初出展
リテールテックに初出展したのは、中国の決済端末メーカー「Newland Payment Technology(NPT)」。2画面のタッチディスプレイを搭載した「X800」(写真11)をはじめ、Android12ベースの最新モデル「N950」、スタンドアロンのミニPOS「ME60」などの実機を紹介していた。「ME60」のコンパクトな筐体(写真12)は、一見スマホと接続して使用するmPOSにしか見えないが、単体で動作する決済端末である。
また、日本では見かけないタイプの端末がサウンドボックスと銘打たれた「VB80P」。MPM(加盟店提示方式)のQRコードをディスプレイに表示する(動的QRにも対応)。ユニークなのは、端末のサイド画面に決済金額が表示され、内蔵のスピーカーから自動音声で金額が読み上げられるところ(写真13)。こうした発想はQR決済大国である中国メーカーらしい。
リテールテック会場を彩った決済端末たち
4日間の来場者数8万人はコロナ前の水準に迫る
それにしても、今年リテールテックの会場に訪れた人たちがまず最初に感じたのは「人の多さ」だったのではないだろうか。筆者も実際にそう感じたし、会場を行き交う人たちの口からは「(会場内が)満員電車のようだった」との声も聞いた。
結果、2月28日から3月3日までの4日間に来場した人の合計は7万7,160人(SECURITY SHOW 2023との合算)だった。昨年(2022年3月)は約5万人、一昨年(2021年3月)が約3万5千人であったことから考えれば、順調に人出がコロナ前の水準に戻ってきたと考えてよさそうだ。
来年は再び、10万人の大台を超えることにも期待して、今年の盛況の余韻を味わうことにしたい。
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