2025年も残りわずか。電子決済マガジンが選ぶ今年一番のニュースは、Perfumeのコールドスリープでもなく熊大量出没でもなく、やっぱりこれだった。今年、会場内の「全面的キャッシュレス決済」にチャレンジし、多くの会社にとって仕事納めとなった12月26日の前日にギリギリ滑り込みでその集計データを公表してくれた万博協会に敬意を表したい。
今年最大の電子決済的トピックは「大阪・関西万博」、人気記事も
2025年の電子決済的トピックといえば、4月13日から10月13日までの延べ184日間に渡って開催された「2025年日本国際博覧会(以下、「大阪・関西万博」)」を一番に挙げてよいだろう。会場全体で「現金を一切取り扱わない全面的キャッシュレス決済」による運営を実施し、会場内の235店舗で73種類にも及ぶ決済ブランドでの支払いに対応した。
また、会場内では既存の決済サービス以外にも、万博オリジナルの電子マネー「ミャクぺ!」、さらには生体認証により手ぶらでの決済を実現した「顔認証決済サービス」も提供された。この全面的キャッシュレスな現場と、今をときめく「顔認証」を存分に体感しようと、筆者も万博会場へ頻繁に訪れてレポートしている。
【夏休みスペシャル】顔認証でゆく、2025大阪・関西万博ツアーズ 〜 ひと筆書きでどこまでいけるか?(2025/8/8・8/15)
(前編)https://epayments.jp/archives/52871
(後編)https://epayments.jp/archives/52905
【解説】国境を超える「JPQR Global」が接続2カ国目のインドネシアと連携開始(2025/8/27)
https://epayments.jp/archives/53028
ちなみに筆者の場合、キャッシュレスは何かを果たすための「手段」ではなく、キャッシュレスを使ってみること自体を「目的」であると履き違えているので、会場へは三度足を運んだものの、人気のシグネチャーパビリオンにはまったく入場できなかった。後悔はないが、1つくらいは予約が当たってもバチは当たらないのではないかとは感じた。
ちなみに大阪・関西万博の終了後には、主催者である公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が「全面的キャッシュレス決済」の結果に関する詳細な報告書をとりまとめて11月中旬に公表している。
会場内「全面的キャッシュレス」は成功だったのか? 大阪・関西万博報告書から読み解く導入店舗拡大のヒント(2025/11/20)
https://epayments.jp/archives/53576
「ミャクペ!」利用者の4人に3人がタッチ決済を選択
ところでこの報告時点では、電子決済マガジン的には最大の関心事であった電子マネー「ミャクぺ!」と「顔認証決済サービス」の利用実績については集計が終わっておらず未公表だった。それがなんと、年末の12月25日に公表された「大阪・関西万博 全面的キャッシュレス決済運用の効果検証 報告書(更新版)」では、電子マネー「ミャクペ!」や 「顔認証決済サービス」の利用実績が初めて公表された。関係者による年末の丁寧な仕事に頭が下がる思いである。
大阪・関西万博における全面的キャッシュレス決済運用の効果検証(更新版)について | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト(2025/12/25)
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20251225-01/
大阪・関西万博におけるEXPO2025デジタルウォレットの成果について | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト(2025/12/25)
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20251225-02/
これによると、2024年7月にサービスを開始した「ミャクペ!」の利用者数は合計30万4,805人だった。総利用件数は約109万件、総利用金額は約22億7,100万円に上る。単純計算で1件あたりの利用金額は2,080円ほど。なお、同数字はシステム上の制約により会場内外の区別が不可のため万博会場外の利用を含んでいるそうだ(実績対象期間:2024年7月1日~会期末の2025年10月13日まで)。
「ミャクペ!」は1つのプリペイド口座でタッチ決済とコード決済、ネット決済のインターフェースに対応していたが、利用された決済種別の構成では「Visaのタッチ決済」が73.5%で、「QR加盟店でのコード決済」が25.8%だった。確かに万博会場内では 「ミャクペ!」のコード決済を利用している人をほとんど見かけなかったので、筆者の体感とも一致している結果ともいえる。
一方の「顔認証決済サービス」には8万2,988人が登録した。会場内で「顔認証決済サービス」が利用可能な店舗数は178店舗(会場内のキャッシュレス決済に対応した235店舗のうち「ミャクペ!」の加盟店契約締結店舗)だったが、顔認証決済の総利用金額は2,236万9,758円だった。こちらも単純計算で、登録者1人あたりの利用金額は270円弱となる。すべての登録者が頻繁に利用したとも言えない数字であり、先進的な顔認証決済は限定的な利用にとどまる結果となった。
ところで顔認証決済は、大阪・関西万博に限らず、2025年は多くの場面で導入が進んだトピックであった。そんな中にあって今年、日本で一番たくさんの顔認証決済を体験したのは電子決済マガジンではないか、と誰かに言いふらしてしまいそうなほど、全国さまざまな地域へ足を運んで数多くのサービスを使ってみた1年間だった気がする。
【実際に使ってみた】TRIAL GOの顔認証決済はなぜ超・快適に感じられるのか? 顔登録からレジでの利用方法までをフル解説(2025/12/12)
https://epayments.jp/archives/53764
【動画で体感】普通の外観で・普通に通れる顔認証改札機を東武鉄道が来春導入、顔認証に対応した「SAKULaLa」はJET-S端末のアプリ機能にも(2025/11/14)
https://epayments.jp/archives/53520
ゆく年くる年・・・サービス終了が発表されたPayたちも
新しい決済サービスも登場した2025年、その裏で残念ながら幕を閉じたサービスもある。スマホ決済のパイオニアとして今からちょうど11年前の2014年12月に発表された「LINE Pay(ラインペイ)」の終了には、時代の区切りを感じた読者も多かったのではないだろうか。
一方で、今月衝撃が走ったのが、ゆうちょペイをはじめとした「銀行Pay」の5サービスが来年12月をもって一斉に終了するとの発表だった。
【ありがとう】LINE Payの日本国内向けサービスが終了、キャッシュレスの新天地を盛り上げてくれた10年を振り返る(2025/4/23)
https://epayments.jp/archives/52202
【ニューストピックス~12月15日】ゆうちょペイ他 26年末終了/ほか(2025/12/15)
https://epayments.jp/archives/53815
2026年の電子決済マガジン的注目キーワードは・・・!?
来年以降も注目の動きとしては、新スマホ法施行による決済プラットフォームの開放、請求書カード払い、ステーブルコイン、あたりだろうか。
特にブロックチェーン技術を採用し、価値が円や米ドルなどの法定通貨と連動するデジタル通貨「ステーブルコイン」の注目度の高まりは、さながら1990年代後半に興った電子マネーブームを彷彿とさせる。名称がやや長いので、おそらく短縮形で呼ばれるであろう少し未来を予見し、本誌では「ステブコ」と略してみた。
どこかへ消えてしまったかつての電子マネーブームとは違って、ステテコのように長く愛されるアイテムであってほしいとの願いも込められているとかいないとか。
●新スマホ法
スマホ法完全施行でも不完全燃焼!? 東京ゲームショウ2025に踊った「アプリ外課金」の残る課題(2025/10/8)
https://epayments.jp/archives/53274
【ニューストピックス~12月18日】アップル、国内新法対応を発表/ほか
https://epayments.jp/archives/53853
●請求書カード払い
【解説付き】増加する「請求書カード払い」の健全な普及に向けて自主規制の取引ガイドラインが公表、仲介事業者の加盟店契約解除条項も(2025/12/26)
https://epayments.jp/archives/53891
【ニューストピックス~4月16日】請求書カード払い 百憶円突破/ほか
https://epayments.jp/archives/52130
【ニューストピックス~10月20日】請求書カード払い推進で提携/ほか
https://epayments.jp/archives/53350
●ステーブルコイン
【一問一答で理解する】「電子決済手段」として国内初認定されたステーブルコイン「JPYC」とは何者か(2025/8/20)
https://epayments.jp/archives/52964
【ニューストピックス~5月8日】ステブコ連動ビザカード提供/ほか
https://epayments.jp/archives/52281
【ニューストピックス~8月18日】円建ステブコ、対応業者初登録/PayPay 米国上場へ準備/ほか
https://epayments.jp/archives/52947
【ニューストピックス~12月24日】ビザ 米国でステブコ決済開始/ほか
https://epayments.jp/archives/53874
【ニューストピックス~12月25日】大阪でもステブコ決済 来春に/ほか
https://epayments.jp/archives/53879
政府のキャッシュレス決済比率に新指標、すでに日本は50%超え?
2025年度までの目標だった「40%」を1年前倒しで達成したところで、年の瀬には経済産業省(METI)のキャッシュレス決済比率の計算式を変更する発表もあった。分母であった個人消費支出から持ち家の帰属家賃(実際には支払われることのない仮想的な数字)を除くことで、公表する比率をより生活者の実感に近づける狙いがある。この新指標(従来指標と区別するため「国内指標」と呼ぶ)によると2024年のキャッシュレス決済比率は51.7%だったことになるが、METIではこれを2030年に「65%」まで向上させる新たな目標値を定めた。
【ニューストピックス~12月26日】経産省、非現金化比率に新指標/ほか
https://epayments.jp/archives/53904
もちろん、数値目標の設定はキャッシュレス決済の普及において本質ではないが、「支払いの2回に1回はキャッシュレス」と現実地点をとらえて、より高みを目指す姿勢は、ここからさらに一歩踏み込んで社会の隅々にまでキャッシュレス決済を浸透させていくためには欠かせない一手ともいえる。来るべき2026年は、8年前の2018年頃から始まった国策としてのキャッシュレス推進が決して一過性の取り組みではないことを力強く示すべく、あまねく関係者の努力や工夫が求められる1年となりそうだ。
来年もキャッシュレスが一人でも多くの人に笑顔を運んでくれるように、少し休んでまたがんばりましょう(^^)