デジタル通貨「DCJPY」の本格導入第1弾、「環境価値トークン」の発行・運用がスタート

DCJPYの活用で「既存の業務プロセスの8割を改善できる」

 ディーカレットDCP、インターネットイニシアティブ(IIJ)、GMOあおぞらネット銀行の3社は8月28日、IIJが環境価値取引の一方式である「非化石証書」のデジタルアセット(資産)化を開始したと発表した。ディーカレットDCPが2024年7月から運用を開始した「DCJPYネットワーク」上で、GMOあおぞらネット銀行が発行したデジタル通貨「DCJPY」を用いることにより、価値の移転と決済取引を同時に完了できるのが特長(画面1)

画面1 「環境価値トークン」と「DCJPY」の動作フロー

 今回、DCJPYの本格導入第1弾として「環境価値のデジタルアセット化」が選択された背景として、既存の環境価値取引における課題意識があるという。日本における環境価値取引には現在、「非化石証書」「グリーン電力証書」「J-クレジット」の3種類があるが、管理や取引面での手間がかかる一方で、環境価値の証明が難しいという課題があった。
 これに対して、種類、量、流通経路が管理できる「環境価値トークン」を用いることで「通常、モノを売ると請求書を発行して振り込んでもらうことになるが、月末締めなどの商習慣もあり、取引完了までに数ヶ月を要することもあった。(今回の仕組みを使うと)環境価値が移転する背後に『請求書』が隠れていてそのままその場で決済まで完了できるので、既存の業務プロセスの8割を改善できる」(ディーカレットDCP・代表取締役社長の村林 聡氏)という。
 IIJでは、2023年10月から白井データセンターキャンパスを利用する十数社の取引先企業向けに非化石証書の代理調達サービスを提供しており、これをブロックチェーン上で提供する「環境価値トークン」に置き換えていきたい意向だ。加えて今後は、デジタルアセット化した環境価値の二次流通の可能性なども検討していく。
 デジタル通貨「DCJPY」のビジネスモデルは、「ビジネスゾーン」と「フィナンシャルゾーン」(画面2)の間に介在するディーカレットDCPが両側の企業(サービス事業者と金融機関)からサービス利用料を貰い受ける形が基本となる。

画面2 DCJPYネットワークの構造

 今回の事例では、「環境価値のデジタルアセット化」のサービス事業者となるIIJが、利用する企業に対して、サービス利用料に環境価値取引にかかるコストを上乗せてして請求する。一方のIIJは、「DCJPYネットワーク」を使って環境価値とデジタル通貨決済を使用する際に、送金手数料に相当する費用をディーカレットDCPに支払う。その後、ディーカレットDCPはGMOあおぞら銀行に対し必要な手数料を支払う流れになるという。
「(ビジネスモデルの内訳は)基本は変わらないが、今後、ビジネスゾーンの形態によっては変化していく可能性はある」(ディーカレットDCP・副社長執行役員 COOの時田 一広氏)

 

画面3 DCJPYネットワークの今後の展開。2025年頃の開始を目指すPhase2では、デジタル証券やNFTなどへの応用を視野に入れている

写真 記者発表会の登壇者(写真左から)ディーカレットDCP・副社長執行役員 COOの時田 一広氏、インターネットイニシアティブ 常務執行役員の山井 美和氏、GMOあおぞらネット銀行・執行役員の小野沢 宏晋氏、ディーカレットDCP・代表取締役社長の村林 聡氏

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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