ICカードを供給する企業として世界最大のマーケットシェアを誇る、オランダのGemalto(ジェムアルト)社。12月中旬、その日本法人であるジェムアルト株式会社が2018年以降のマーケット別戦略やソリューションを報道陣に公開した。
■指紋認証機能を内蔵した非接触IC決済カードも
バンキング&ペイメント分野では、2018年以降、サービスのデジタル化がさらに浸透すると見る。技術面では生体認証の多様化(写真①)が進み、FIDO仕様に準拠したさまざまな認証方式や、行動認証などに注目している。
また、決済方式では、ISO/IEC 14443 TypeA/B仕様をベースとする非接触EMV決済(EMVコンタクトレス)が本格到来し、今後、ラグビーワールドカップ(2019年)、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(2020年)に向けた準備の年として導入が着々と進んでいくことを、同社では想定しているそうだ(写真②)。
■IoT向けではSurface Pro、モバイクなどに実績
モバイルサービス&IoT分野では、モバイルネットワークがLTEから5Gへとシフトしていくことを背景に、「IoTモジュール」を武器として、さまざまなIoT機器やサービスに対し、接続性(コネクト)、安全(セキュア)、収益化(マネタイズ)の3つの価値を提供していくという。
最近の事例では、マイクロソフト社のSurface ProへeSIM搭載によるLTE Advancedによる常時接続環境を提供したり、中国で爆発的人気を誇るシェアリング自転車「モバイク」において、位置データの送信やロックの遠隔操作に利用されている(写真③)。
デモが公開された「バーチャル・カー・キー」も、実際に商用サービスとして提供されているもの。レンタカーの予約から当日自動車に乗り込むまでの管理操作が自身のスマートフォンで行えるようになる。あらかじめオンラインで利用日などの予約情報を入力した後に、運転免許証などのIDカードをスマホカメラでスキャンする。その上で自身のセルフィー(自撮り写真)をその場で撮影してオンライン送信すると、先のIDカード券面の本人画像と、撮影された写真を機械照合し、本人確認を行う。認証がOKになれば、カード決済などで支払いを済ませ、バーチャルキー(電子データ)をスマートフォンにダウンロード。このバーチャルキー情報をBluetoothで専用キーに転送し、自身が手配したレンタカーをアンロックできる仕組みだ(写真④)。
■今年7月に日本でも政府向け事業本部が発足
政府、ボーダーコントロール、医療・保険など、公共分野にも強みを持つジェムアルトだが、日本では長らく専門部署は存在しなかった。そこへ、公共事業本部(GBU)が今年の7月に発足した。政府、地方自治体、公共事業体に向けて製品やサービスのプログラムを提供していきたい考えだ(写真⑤)。
ジェムアルトでは現在アメリカの4つの州で行われているデジタル運転免許証の実証実験をサポート。物理的な運転免許証カードに付随して、iPhoneに紐付ける子カード方式が採用されているという。
また、米国の3M社、および、その傘下で指紋、掌紋、顔、虹彩などさまざまな生体認証方式に対応可能な技術力を持つCogentを今年5月に買収したことで、生体認証サービスへの対応力が増したことも、公共分野での競争力強化に一役買いそうだ。
非接触ICカード技術が採用されているeパスポートリーダー(読み取り機)は、3Mのブランド名で供給(写真⑥)しており、同社の世界マーケットシェアは50%を超えているという。