西日本旅客鉄道(JR西日本)はかねて予告していた通り、5月28日にコード決済に対応するスマホ決済アプリ「Wesmo!(ウェスモ)」のサービス提供を開始した。Wesmo!はお店側が利用者の表示したコードを読み取るCPM(消費者提示方式)のほか、利用者がお店に掲出されたQRコードを読み取るMPM(加盟店提示方式)の両方に対応しているが、このMPMの提供にあたってひときわ目を引く「BLUEタグ」なる加盟店ツールが用意された。新しもの好きの電子決済マガジンが、専用NFCタグが埋め込まれているというBLUEタグの使い勝手を現地からレポートする。
実物を見るために大阪へ降り立つ
Wesmo!が始まって3日目の5月30日、BLUEタグの実物を見学させていただいたのは、JR大阪環状線の鶴橋駅から徒歩3分の「ふぐかに処・心福(ここふく)」さん。同店のレジカウンター周りにはクレジットカードの決済端末をはじめ、コード決済のQRコードもいくつか立てかけられていたが、これに先週5月28日から新たに「Wesmo!(ウェスモ)」のBLUEタグが加わった(写真1)。

写真1 左の楕円形のスタンドがBLUEタグ。各種のキャンペーンも展開中(写真は一部加工しています)
ご覧の通り、JR西日本のICカード改札機の読み取り部を彷彿とさせる楕円形のフォルムが特徴的なスタンドになっている。単なる紙製のスタンドではなく、1センチほどの厚みを持ったアクリル板で成形されており、やや高級感がある(写真2)。この楕円形の中心部に設けられた「W」のマークの近くにNFC対応のスマートフォン(iPhone、Android)を近づけることで、自動でNFCタグの読み取りが行われ、Wesmo!のアプリが起動する仕組みだ。

写真2 厚みがしっかりとあるところは、他のコード決済のQRスタンドとの大きな違い。埋め込まれたNFCタグは裏面からも見えない(写真は一部加工しています)
この日の体験ではiPhoneを使用した。スマホのロックを解除した状態でBLUEタグに近づけると、スマホの画面上部に「『”Wesmo!”NFCタグ』 Wesmo!で開く」と書かれたタブが表示されたので(写真3)、これをタップすることでWesmo!アプリが起動した。Face IDによる顔認証の後、「リンク先を表示しますか?」のポップアップにOKと答えると、支払金額の入力画面が表示された(画面1〜3)。

写真3 読み取りが終わるとスマホの画面上にタブがポップアップしてくる

画面1〜3 MPMの金額入力画面が表示されるまでの遷移(筆者のiPhone設定の場合)。BLUEタグの読み取り以降は、タグからスマホを離して手元で操作すればよい
ここからはコード決済に共通のいわゆるスキャン払い(MPM)の要領で、店員さんから指定された金額を利用者が自分で入力する(固定の金額が自動入力されるパターンもあるらしい)。入力した金額に間違いがないか店員さんに画面を見せて確認してもらったら、下から上へボタンをスワイプ。その瞬間、スマホが「ウェスモっ!」と鳴いて、決済完了の画面に切り替わった(画面4〜6)。

画面4〜6 決済確定のUI画面では「W」のロゴが大活躍する。なお、Wesmo!の1回・1日あたりの決済上限額は本人確認前で25万円まで、本人確認後は50万円まで利用できる
実は、筆者は緊張のせいか、MPMの支払金額入力画面が表示されるまでの間、スマホをBLUEタグにかざしっぱなしにしてしまっていたのだが、よくよく考えてみればBLUEタグを読み取った直後、スマホにタブが表示された時点で、すぐにスマホをBLUEタグから離してしまってよかったことに後から気が付いた。つまり、1)スマホ決済アプリを起動して、2)お店のQRコードを読み取る、という2アクションが、BLUEタグにスマホを近づける1回のアクションに置き換えられた格好だ。確かにこれは便利かも。
ちなみに、BLUEタグの下部にはQRコードも印字されているので、昔ながら(?)のやり方で、Wesmo!アプリを起動してQRコードを読み取っても同じことができる。この方法はNFCタグの読み取りがなぜかうまく行かない場合にも有効かもしれない。
JR西日本グループの商業施設はCPMで利用可能、26年度にはICOCAへチャージ可能に
Wesmo!が利用できる加盟店は、サービス開始時点でJR西日本グループのほぼすべての商業施設と(写真4)、JR西日本ネット予約「e5489」で対応している。また、ジェーシービー(JCB)が提供するコード決済の共通スキームであるSmart Codeにも対応しており、全国では合計160万カ所以上で利用可能としている。これらの加盟店ではCPMによるコード決済対応となるが(画面7〜8)、MPMのBLUEタグではこれらのお店に加えて、街中や駅中、観光地の店舗などへの導入を広げていく予定だ。
その際には、決済売上金の入金が最短翌日に設定できる(出金可能なWesmo!残高として入金)ことや、決済手数料を1.9%(税別)に抑えたことに加えて、BLUEタグでは初期費用や固定費用が無料であることなども訴求していくという。

写真4 JR大阪駅直結の複合商業施設、ルクア大阪の館内通路でWesmo!のサイネージ広告を発見。新サービスの登場をアピールしていた(写真は一部加工しています)

画面7〜8 左はバーコード・QRを表示した画面。右はWesmo!のトップ画面で、JR西日本グルーブの共通ポイントである「WESTERポイント」の状況が大きく表示されている。Wesmo!の決済金額200円(税込)につき、基本ポイントとしてWESTERポイントが1ポイント貯まる(還元率0.5%)
ところでWesmo!は事前にクレジットカード、銀行口座、セブン銀行ATMから残高をチャージ(入金)して利用する、プリペイド式の決済サービスだが、お店などへの決済用途だけでなく、個人間での送金にも対応している(画面9)。飲み会代の割り勘や、家族間でのお小遣いの受け渡しなどに手数料無料で利用できる。アプリの管理画面から送金額に上限を設定することも可能。1回・1日あたりの送金上限額は最大10万円までの範囲で段階的に設定でき、1カ月の上限額についても最大30万円までの範囲で設定できる(ちなみに「決済」についても1回・1日あたりの上限額を最大50万円までの範囲で段階的に設定でき、1カ月の上限額は最大100万円までとなっている。どちらも本人確認後の決済上限額)。

画面9 個人間のWesmo!残高の送金にも手数料無料で対応している
JR西日本はWesmo!のサービス提供にあたり、国内の鉄道事業者としては初めて第二種資金移動業者としての登録を完了。すでに提供中のWesmo!残高の出金に加えて、今後はデジタル給与の受取にも順次対応していく予定を打ち出していることから、送金サービスの使い勝手もさらに向上していくことが見込まれる。さらには、Wesmo!から交通形ICの「ICOCA」へのチャージについても2026年度中の実現を目指すとしており、交通事業との連携も注目される。
というわけなので、電子決済への興味・関心が極めて高い本誌読者の皆さんならば、この夏はぜひともBLUEタグ発見を目当てに関西への旅に出てみるものよいだろう。
その際はもちろん、大阪・関西万博への立ち寄りもお忘れなく!

写真5 ふぐかに処・心福さんのとらふぐさんも、新入りのBLUEタグが気になるようで、ざわつき気味に見えた(筆者の妄想かもしれない)

写真6 「これから大阪来るならぜひ万博にも寄るべき」と、イコちゃんが言っている(写真は一部加工しています)