カード会社業態の三井住友カード(SMCC)が2020年から設置を開始した据置型の決済端末「steraターミナル」。キャッシュレスの追い風もあり、本当に街で遭遇する機会が増えた端末といえる。30万台の目標を前倒しで達成し、勢いに乗る同社は、利用シーンに特化した新しいステラ端末を2024年に相次いで投入する。steraシリーズのラインアップ拡充で、2030年までに100万台の設置を目指すという。
ステラ好調も手伝って、三井住友カードのショッピング取扱高は35兆円に
三井住友カードは3月25日、東京・豊洲の東京本社にて記者発表会を開催し、同社が事業者向けに提供する決済プラットフォーム「stera(ステラ)」の最新状況を公開した。2画面を搭載する決済端末のイメージが強い「stera」だが、そのサービス範囲は加盟店向けの決済端末にとどまるものではなく、EC対応のマルチ決済システム、決済センター(GMOペイメントゲートウェイとの提携)、ネットワーク(国際ブランド会社のVisaとの提携)、アクワイアリング(加盟店管理)を一気通貫で提供するソリューションの総称となっている(画面1)。
とりわけ2020年7月から設置を開始した据置型のsteraターミナルは、3年10カ月で30万台を突破。ステラの取引件数ベースでも2021年以降、対前年比1.5倍で成長しているという。
「当初、開始5年後の目標としていた30万台設置を、少し前倒しで実現できた。こうしたステラの好調もあり、当社の買い物取扱高は35兆円に達する見通しで、2018年度の18兆円弱から5年で倍増した形になる」(三井住友カード・代表取締役社長の大西 幸彦氏/写真1)
このペースを維持、さらに拡大すべく、マルチ決済対応や業務アプリ追加機能といったAndroidベースの端末特性はそのままに、提供する端末の形態を拡充する(写真2)。2024年9月から提供する新steraターミナルの名称は「ユニット(unit)」。POSレジとの連動やセルフレジ、KIOSK端末への組み込みなどに対応している。また同年12月からは「モバイル(mobile)」を追加。SIMによるモバイル通信やWiFi対応により宅配先での決済や飲食店のテーブル決済などに持ち運んで利用できるほか、店舗内のPOSカートとして利用したり(写真3)、従来の据置型端末の子機として使用することも可能になっている。このラインアップ拡充により、従来の据置型steraターミナルは「スタンダード(standard)」のサブ名称で呼ばれることになる。
なお、同日のネットスターズの発表によると、新たに投入される「ユニット」、「モバイル」の2機種では、コード決済ゲートウェイ(中継機能)をネットスターズが担当する。同社がコード決済に関するプロセシング業務(加盟店に関する契約管理・精算等、決済システムを用いた決済管理業務)を担い、三井住友カードはコード決済のアクワイアリング業務を担う役割分担となる。
決済手数料を2.7%に抑えたCOTS決済の「ステラ・タップ」
さらに、前述してきた専用端末ではなく、お店や事業者が保有している一般的なAndroidスマートフォンに提供アプリをインストールするだけで、Visa・Mastercardのタッチ決済に対応する決済端末として利用できるサービスも2024年3月25日から申込受付を開始した(写真4、5)。サービス名は「stera tap(ステラ・タップ)」で、主に中小事業者や個人事業主に向けた簡易な決済サービスとして導入を促進する。iPhoneへの対応も今後検討する。
ステラ・タップはSMCCとGMOペイメントゲートウェイなどの合弁会社であるSMBC GMO PAYMENTがサービス提供し、stera tapアプリ自体はGMOフィナンシャルゲートが提供する。決済手数料は2.7%と低い設定とし、今後、決済手数料還元キャンペーンなども提供することでクレジットカード決済導入時の垣根を下げる。据置型steraターミナルを用いて、やはり中小事業者や個人事業主向けを中心に、同じ座組で提供している「stera pack(ステラ・パック)」でも、Visa・Mastercardのカード決済手数料を2.7%に据え置いているが(スタンダードプランの場合。別に月額税込3,300円がかかる)、その追加オプションとしてステラ・タップを申し込むこともできる。
なお、ステラ・タップやステラ・パックを利用中の事業者向け資金調達サービスとして、「stera finance(ステラ・ファイナンス)」も提供する。利用された決済データを元に、AI審査モデルを用いて、各加盟店で「将来発生するであろうクレジットカード等の売上」やリスクを予測し、その債権を三井住友カードが買い取ることで資金を提供する方式で、「将来債権ファクタリングサービス」とも呼ばれるもの。加盟店はWebから簡単に申し込みができる。
「コロナ禍を経てクレジットカードを非常に日常的に使っていたけるようになったが、一方で、小さなお店、個人営業のお店などへのクレジットカードの普及率は6割弱と言われていて、そこは率直に申し上げてPayPayをはじめとしたコード決済の後塵を拝しているのが実情だと思う。中小事業者の皆さんがカード導入の課題として挙げられるのは、端末の価格、決済手数料、キャッシュフローの3点。こうした課題に真正面から向き合い、新たなサービスを展開してまいりたい」(大西社長)
モバイルオーダー、テーブル注文などに対応するDXサービスも
さて、本記事の冒頭に「steraとは決済端末にとどまるものではない」との情報整理をお伝えしたにも関わらず、ここまでの話題は「どれも決済端末ばかりじゃないか」とお叱りの声が聞こえてきそうである。その説明の後段に出てきた「EC対応のマルチ決済システム」に関する内容こそが、ここから先の新発表に当たる。
その新サービス名が「stera smart one(ステラ・スマート・ワン)」で、2024年4月から提供を開始する。この発表に先立ち、今年2月27日、三井住友カードはELESTYLE社とモバイル決済ソリューションを中心としたFinTech領域の推進における協業について資本業務提携を締結している。
両社が共同開発したステラ・スマート・ワンを使うと、EC決済やモバイルオーダー、サブスクなどの決済プロセスやサービスを1つのプラットフォームで提供できるようになる。具体的には、店舗側で必要になる店舗レジ機能、ECカート機能、モバイルオーダー機能、サブスクリプション機能の管理機能と、各種の決済手段にワンストップで接続可能な決済基盤をセットで提供する(画面2)。
これにより加盟店は、お客からのスマホ注文によるモバイルオーダーや、店舗のタブレットを使ったテーブル注文などについて、注文、商品、在庫、決済情報などを1つの管理画面で閲覧・編集できるようになるという(写真6〜10)。まさに、加盟店のDX・キャッシュレス化を促進するソリューションといえそうだ。
「本日発表した事業者向けのさまざまな対応により、2030年までにstera端末の100万台を達成したい。この中で、中小のマーケットについても50万台を目指していきたい。大変大きい目標だが、30万台も前倒しで達成できたので、今回も達成できると思う」(大西社長)