やっぱり決済端末が好き-1.0(前編) 〜 開幕した『リテールテックJAPAN 2024』に今年もニューフェイスが揃い踏み

今年も、最新の決済端末が一堂に会する祭典(※注:決め付けていますが、展示会テーマはそれだけではありません)、『リテールテックJAPAN 2024』が3月12日に開幕した。東京・有明の東京ビッグサイトで3月15日まで開催中だ。恒例の会場レポート、前編ではシャープ、NTTデータ、三井住友カード、NEC(日本電気)のブース模様を紹介する。

シャープから「AQUOS」の技術も注ぎ込んだ決済端末

 NTTデータのブースでは、シャープと共同開発中の新しい決済端末を出展していた(写真1)。店員側とお客側の操作部が分離したセパレート型で、お客側の端末は接触IC、非接触IC、磁気ストライプ、コード決済(写真2)に対応するほか、暗証番号を入力する「PINパッド」や電子サイン用の「サインパネル」にもなる。

写真1 シャープの新決済端末は、店員側とお客側の操作部が分離したセパレート型

写真2 CPMのコード決済を読み取るカメラの位置は右下のココに

 NTTデータでは同社が提供するクラウド型総合決済プラットフォーム、「CAFIS Arch」の1提供形態として新たにラインアップに加える予定。これまでCAFIS Archでは店員側とお客側の操作部が共用の一体型を提供してきたが、バリエーションを増やすことで導入店舗のニーズに応えていく。リリース時期は2024年の秋ごろの予定で、CCTとしてリリースするほか、POSに直接つながる端末としても開発を進めているそうだ。
 NTTデータのブースからもほど近いシャープのブースでは、同端末の開発に携わる担当者にも話を聞くことができた。店員側である6インチのタッチディスプレイをはじめ、シンプルに見えるデザインが印象的だが、「どのような店舗にもなじみやすいデザインを心がけた。また、(物理的な)ボタンがなく、タッチだけで操作できるスマホのような使いやすさを目指した」という(写真3)

写真3 シャープブースではガラスケース内に鎮座しての展示

 店員側の筐体は、ちょうどスマホがお弁当箱のようなクレードルに乗った姿にも見え、ディスプレイ部だけ取り外せそうにも見えたが、取り外せるわけではない。利用明細などの印刷用紙が前面のスリットを通じて発行されるようになっており、ロール紙の交換時にはディスプレイの全面をこのバカっと跳ね上げて操作する構造となっている(写真4)

写真4 手前からバカっと跳ね上げてロール紙を交換する

 もう1つの特徴は、お客側のタッチディスプレイ部分。必要に応じて暗証番号をこの画面から入力することになるが、このディスプレイにシャープ製のスマートフォン、AQUOSシリーズではおなじみののぞき見防止機能の「ベールビュー機能」を採り入れている。これによって横や後ろからの視線に対して画面表示内容を保護する仕組みだ(写真5、6)
 久しぶりとなる日本メーカーからの決済端末新登場に、今から胸躍らせている読者は多いかもしれない。

写真5 PINパッドの表示画面。数字の配置はランダムに変わる

写真6 視野角度をちょっとズラすだけで確かに画面が見えなくなる

ヤオコーアプリやモバイルPASMOの裏側を支える「CAFIS Pitt」

 NTTデータのブースでは、自社独自のスマホ決済(アプリ)を作成したい企業向けに提供している「CAFIS Pitt(キャフィス・ピット)」の採用事例が目を引いた(写真7)。NTTデータの役割は、導入企業のスマホアプリ自体の制作代行ではなく、クレジットカードや銀行口座、プリペイド、後払いなどと連動した決済サービスとスマホプリをつなぎ込むところにある。プリペイド決済であればチャージ(入金)場面をどう整備するかの検討も課題になるが、オンラインチャージを含めて、それこそ同社の面目躍如たる領域ともいえる。決済ネットワークのCAFISをはじめ、多様な決済プラットフォームを提供してきた同社ならではの幅の広さと安定感が導入企業に響いているようだ。

写真7 「CAFIS Pitt」の導入企業例(公開されているもののみ紹介)

 公開されている先だけでも、食品スーパーのヤオコーや、モバイルPASMO、西武ホールディングス、セブン-イレブンなどそうそうたる企業の名前が並んでいる。CAFISブランドだけでなく、例えば東急とは「.Pay(ドットペイ)」の名称で共同展開するなど、提供形態も多様。最近の傾向として、「(スマホ決済を自社アプリに組み込む企業が)爆発的に増えているということはないが、着実に拡大している印象」があるそうだ。今年度も、誰もがよく知るような大規模店舗への導入が決まっているとのことなので、乞うご期待だ。
 そのほか昨年に引き続いて、専用端末でなく既存のスマートフォンを非接触ICやコード決済に対応する決済端末として活用できる「CAFIS Tap to Pay」や、スマホをかざして入店し、好きな商品を選んで退店するだけで自動でオンライン決済される「CATCH & GO」の仕組みも紹介されていた。CATCH & GOはダイエーとの共同店舗として、2021年9月からNTTデータの本社屋内で稼働中のほか、横浜にあるイオンフードスタイル横浜西口店内でも昨年10月から利用可能となっているという。

三井住友カードは「ステラ」の新端末2機種を披露

 クレジットカード会社として、すっかりリテールテックの常連となった三井住友カードだが、今年も「stera(ステラ)」ブランド推しなブースを展開していた。
 ブランドを象徴してきたのが決済端末の「stera terminal(ステラターミナル)」だが、今年は新たに加わる端末ラインアップとして、セルフレジやKIOSK端末などに設置可能な据置型の「unit(ユニット)」と、モバイル通信やWiFiで運用できるので移動販売やカート型POSなどにも適した可搬型の「mobile(モバイル)」の試作モデルが展示された(写真8、9、10)。現行機種と同様に、いずれもPanasonicのロゴと型番がプリントされていた。

写真8 stera terminalシリーズにこの秋以降、新たに2機種が加わる

写真9 据置型の「unit」

写真10 可搬型の「mobile」

 いずれも従来のステラターミナルでは対応できなかった利用場面への導入をにらんだもので、従来のステラターミナルと併売する。「ユニット」は2024年の秋、「モバイル」は2024年の冬からのサービス提供を目指している。
 デザインカラーの黒とグリーンが3筐体とも統一されていることもあり、一目でsteraシリーズとわかる外観が印象的な端末群となっている。提供形態もステラターミナルの方式を踏襲し、POS接続先への提供のほか、月額の利用料と固定の決済手数料の負担で使える「stera pack(ステラ・パック)」としての提供も予定しているそうだ。
 こうした専用端末だけでなく、普通のスマホを決済端末化として利用する、いわゆる「COTS決済」もsteraシリーズに加わる。昨年も参考出展されていたものだが、今年はサービス名を含めて紹介された(写真11)。その名も「stera fasstap(ステラ・ファスタップ)」。日本人の読み方だと「s」が1つ多い印象を受けるが、これはCOTSでの協業先であるマレーシアの企業、Soft Space社のサービス名称をそのまま採用したため。
 COTSの展開では、三井住友カードの出資先でもあるSquareとの重なりが気になるが、三井住友カードとしては大型の店舗における面前決済や店員の持ち運びなどの用途を中心に導入を提案していくスタンスとのことだ。

写真11 既存の普通のスマホにアプリを入れるだけでタッチ決済とコード決済に対応できる「stera fasstap」(写真は一部加工しています)

「ステラ」は決済端末ありきでなく、無人店舗やカート型POSまで支援

 さらに、今年の展示ブースで大々的にフィーチャーされていたのが「stera smart one(ステラ・スマート・ワン)」のサービス名。こちらは決済端末ありきのサービスではなく、裏側で支えるプラットフォームの総称となっている。基本的には物理的な決済カードに代表される対面のローカル決済ではなく、スマホやタブレットを利用したオンライン決済を対面店舗の支払いに充てようとするもの。具体的には、モバイルオーダーやテーブルオーダー、オフィス内コンビニや無人販売などの決済を支援することを想定している。
 展示会場でデモが用意されていたのが無人決済の場面。利用者は自身のスマホを使って最初に付近に掲出されたQRコードを読み込み、購入したい商品のバーコードをスマホのカメラ機能を使ってスキャンしていく。その後、支払いに使いたいオンライン決済をメニューから選んで決済を完了する流れとなる。デモではクレジットカードとPayPayが利用できた(写真12)

写真12 無人販売のスポット拠点には静的なQRコードを掲出しておくだけでよく、利用者が自身のスマホを使って商品選択と支払いを行う

 実は、利用する端末にはお客のスマホを使う以外に、先述したsteraの新しい「モバイル」端末を使う提案もしている。この場合にはいわゆる「カート型POS」の用途となり、お店側が貸し出して、店内で買い周り中に商品をスキャンしてもらった上で、同じ端末で決済まで処理できる仕組みとなる(写真13、14)。最近、スーパーなどで見かける機会が増えてきた「持ち運び式セルフレジ」のサービスを思い出してもらえばよいだろう。
 決済端末の提供だけでない、ステラの事業領域の広がりを感じさせてくれる展示内容だった。

写真13 stera新端末の「mobile(モバイル)」を用いたデモ。もちろんタッチ決済にも対応

写真14 支払い忘れを防ぐため、退店時にはQRコードを表示して店員さんにスキャンしてもらう流れを想定

早過ぎちゃって困る(?)ほどスムーズな顔認証体験コーナー〜NEC

 NEC(日本電気)のブースでは、同社が得意とする「顔認証」の技術をリテール(流通小売)の分野に活用する提案が行われていた。その中で、実際にいくつかの活用場面を体験できるコーナーが用意されていたので、筆者も体験してみた。
 同社が目指す世界観は、お客側から見ると「生体認証を活用した安心・便利・快適な購買体験」で、店舗や従業員側にとっては「業務最適化と新たな顧客サービスの提供」を実現するための手段となる。体験デモでは、来店、スタンプラリー、接客、決済、商品の受け取り、の5つの場面で顔認証の活用が提案されていた。
 体験では最初に個人情報の取り扱いに関する説明を受けた後、それらに同意した上で、タブレットで自身の顔を撮影してもらって登録を行う。ここで自身の顔情報に固有の番号(数字3桁)が紐付けられる。
 この状態でお店に来店し、カメラの範囲に収まると、顔認証により自身の数字が表示されるため、来店していることが店舗の従業員に伝わる仕組みだ(写真15)。さらに、任意の棚の前であらかじめ規定した秒数、お客がとどまった場合には、従業員に向けて「接客が必要な可能性のあるお客がどの棚の前にいる」という通知やメッセージを飛ばすこともできる。従業員はこうした情報も活用して、接客に当たることができるようになる(写真16)

写真15 顔認証により来店を識別する。筆者に割り当てられた番号は「753」(写真は一部加工しています)

写真16 じっと棚の前から動かずにいると、接客が必要かもしれないお客と判定される

 スタンプラリーの例では、顔認証することで来店スタンプの付与が受けられ、ラリースポットを2回通過することで景品が貰えるデモになっていた(写真17)。また、顔認証で決済まで実施する「セルフショッピング」のデモでは、購入したい商品をセルフレジでスキャンした後、支払いの場面で「顔認証決済」を選択。顔認証が瞬時に行われた後に決済処理が進み、あっという間に支払いが完了した(写真18)

写真17 スタンプラリーもスマホを出したリせず、手ぶらだと参加しやすいかもしれない(画像は一部加工しています)

写真18 支払いの画面で顔認証決済を選択→顔認証が完了→決済の順番でPOS処理が行われていた(撮影中の顔が反射で見えづらくてすみません)

 デモでは他に、商品の受け渡しを想定したロッカーの開閉管理に顔認証を活用する事例も紹介されていた(写真19)。いずれも肝心の顔認証がほんの刹那で終わってしまい、撮影者泣かせのスピーディさだった。
 今回披露された顔認証決済や入場管理などのソリューションは、実際にトライアルホールディングスの複数施設で実証が行われているという。

写真19 顔を撮影するカメラがロッカーから離れた右横に設置されているにも関わらず、顔認証は瞬時に終わる

写真20 イオンリテールでも採用されている「棚定点観測サービス」は、対象とする棚の直上や、対向する棚側に設置したカメラにより商品の陳列状況をリアルタイムに把握し、品出しのタイミングを通知したり、在庫状況の可視化が可能。人物の映り込みは自動消去され、個人情報保護への配慮も万全だ

 

【記事バックナンバー】やっぱり決済端末が好き in 『リテールテックJAPAN』
https://epayments.jp/welovepaymentterminals

 

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。