CtoCの市場動向が素早くわかる「メルカリ物価・数量指数」が公開

 メルカリが運営するメルカリ総合研究所は5月16日、オンライン発表会を開催し、個人間商取引(CtoC)の価格や、商品流通量の変動を指数で可視化した「メルカリ物価・数量指数」を発表し、一般公開した。東京大学100%子会社の東京大学エコノミックコンサルティング(略称「UTEcon」)と共同開発した。
 「2018年1月」の取引実績(価格と数量)を「1」とし、カテゴリごとの価格指数と数量指数を作成、これを月次で集計して公表していく。対象商品は大・中・小のカテゴリ(例:レディース→靴→モカシン)に分類されており、具体的には画面1のようなものがある。

画面1 2022年4月に物価が上昇/下落した商品のトップ5(2022年4月)

 物価指数といえば、普通は新品の商材、つまり「一次流通市場」を対象に算出されるが、「メルカリ物価・数量指数」はメルカリ内の取引(月間利用者数は約2,000万人)に閉じた「二次流通市場」を調査対象としている。この点に関して、開発を主導した東京大学エコノミックコンサルティング 取締役/東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授の渡辺 安虎(やすとら)氏は、「一次流通市場」の価格は、環境変化があったとしても企業による価格調整が入りやすいこともあって、少しずつしか改定されない点を指摘。それに対して「二次流通市場」は「物価動向が素早く反映される傾向にある」という(画面2)。「コロナの状況下にあってリアルタイムのデータがなかなか取れず、経済がどうなっているのか掴めなかった。しかし、今後これらが毎月発表されるとなると、前月に何が起きたかがすぐわかるようになる。研究者の観点でも、産業組織論やマーケティング、物価に関するマクロ経済学など、さまざまな研究者が使えるものになりそうだ」と有効性を強調した。

画面2 「一次流通市場」と「二次流通市場」の特徴

 具体的に想定される利用例としては、流通における需給バランスの観測や、トレンドの可視化、などがあるという(画面3、4)

画面3 コロナ禍で人気が上昇したフィッシング(釣り)の物価・数量推移

画面4 レディース服の物価・数量推移から流行を読み取る

 また、2022年4月時の「スマートフォン/携帯電話」のデータ推移を見ると(画面5)、AppleのiPhone 13が新発売された昨年9月を境として、数量と落札価格(物価)に影響が出ていることがわかる。実際に4月の同カテゴリにおける落札実績を見ると、前機種のiPhone 12本体が最も取引件数が多くなっていたという(画面6)。「スマホの最新機種が発売されると、消費者心理としては、最新機種そのものでないとしても、少しでも最新に近い機種に買い替えたくなる」(ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員の久我 尚子氏)ことなどが、このデータから読み取れるそうだ。

画面5 スマートフォン/携帯電話の物価・数量推移

画面6 「スマートフォン」落札結果の実態

 メルカリ・執行役員 VP of Public Policyの吉川 徳明氏は「当社のほうではあまり用途を限定しておらず、消費トレンドを発信している報道関係者をはじめ、物価変動を取り扱うマクロ経済学、消費者行動、マーケティング等の研究者向けに情報を開示することで、経済・研究活動に寄与することを目指したい」と話す。
 それに加えて、「研究だけでなく公共政策にも使ってもらいたいし、長期的には公的機関と連携し、物品に対する需要の可視化によって災害対応の迅速化を支援する仕組みの構築と社会実装を目指していく」という。
 2020年のリユース市場規模は2兆4,169億円(2021年9月「リサイクル通信」調査)と推計されており、今後も拡大が予測されている。今後、公表されていく「メルカリ物価・数量指数」は、ますます巨大化するCtoC市場の実態把握に貢献する資料となりそうだ。

写真 オンライン発表会に出席した3名。左から、メルカリ 執行役員 VP of Public Policy 吉川 徳明氏、東京大学エコノミックコンサルティング 取締役/東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授 渡辺 安虎氏、ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員 久我 尚子氏

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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