「最新のリアルタイム情報に基づく新しい与信サービスを提供したい」、メルペイがお客の属性情報に頼らない少額融資事業を開始

2019年2月からコード決済を皮切りに電子決済事業に参入したメルペイが、今度は少額融資事業に参入を果たした。長らく、従来の貸金業者が与信の拠り所としてきた「属性情報」を利用せず、自社資産ともいえる「メルカリ・メルペイの利用実績」をメインに据えたリアルタイム与信に挑む構えだ。

メルカリ・メルペイの利用実績 × CIC照会 ×AIにより融資判断

 メルペイは8月3日、メルカリの利用実績などに基づいて少額融資を行う「メルペイスマートマネー」の提供を開始した。年齢が20歳以上〜70歳以下の個人が対象で、①引き落とし用の銀行口座を登録済みであること、②本人確認(eKYC)済みであること、③「メルペイスマートマネー」の審査に通過していること、の利用条件を満たすことが前提となる。
 「メルカリ」「メルペイ」の利用実績と、メルペイが登録する信用情報機関(CIC)への照会により審査が行われ、1,000円〜20万円の範囲で少額融資が受けられる(画面1)。貸出金利も同様の基準により、利用ごとに変動し、年率3.0〜15.0%が適用される。AIがその利用者の将来のメルカリでの販売傾向などを予測し、条件を優遇する。審査は最短では数分で完了する。利用者はメルカリアプリを操作するだけで申込から利用までが完結するため、店舗への来店や書類提出などの必要がない。

画面1 テクノロジーを最大限に活用して与信を提供(出典:メルペイ「新サービス記者向け発表会」資料より)

 融資された金額は、審査通過後にメルペイ残高として入金される。通常、メルペイ残高から銀行口座に出金する際には200円の振込手数料がかかるが、「メルペイスマートマネー」を銀行口座へ出金する際には手数料がかからないため、全額を現金で引き出すことが可能。他のメルカリ残高と同様に、メルカリ内での支払いや、メルペイ加盟店での決済(コード決済、iD決済、オンライン決済)に充てることもできる。
 返済は、銀行口座からの自動引き落とし(11日、16日、26日の3日から選択)のほか、メルカリの売上金やポイントによる充当にも対応する。また月々の返済日や返済額といった返済計画自体も、返済期限内を超えない限り、メルカリアプリからいつでも何度でも変更できるようにし、使いやすくした(画面2)

画面2 借入から月々の返済額や利息(適用金利)の確認、変更などの操作がアプリから実行可能(出典:メルペイ「新サービス記者向け発表会」資料より)

「極度貸付」でなく「証書貸付」を採用し、変動する与信サービスを提供

 同社では今回の「メルペイスマートマネー」の貸付方式に関して、融資で一般的に採用されている「一度の申し込みで利用限度額が決まる一般的な貸付方式(極度貸付)」でなく、「利用ごとに『メルカリ』における利用実績等を元に審査を行う(証書貸付)」を採用した(画面3)

画面3 貸付方式の違い(出典:メルペイ「新サービス記者向け発表会」資料より)。なお、メルペイは資金決済法に基づく資金移動業者としても登録があるが、「(資金移動のほうで)お客様よりお預かりしている資金については保全しており、貸付の原資とはしない。そのため、いわゆる『信用創造』には該当しないと認識している」(メルペイ取締役の信川 享介氏)とのこと

 メルペイ取締役COOの山本 真人氏は、「当社の与信サービスへの取り組みも、メルカリとして2017年6月に始めた『月イチ払い』からスタートし、2019年以降は『メルペイスマート払い』と、すでに4年ほどの運用実績を積み重ねてきた。お客様の最新の状況、リアルタイムの情報に基づいた与信サービスは、従来のお客様の属性情報だけを頼りとする方法では提供が難しかったが、メルカリやメルペイの行動実績、利用実績によって判断、与信することでそれが可能になる」と、新たに提供する「メルペイスマートマネー」の特長を説明する。「実際にスマート払いを提供する中でも、メルカリで何かを売って売上金が入ったときには(返済予定を変更して)すぐにも支払いたいというお客様からのニーズがあった」(画面4)ことなども、新サービスの内容に継承されているという。

画面4 メルペイでの支払いを後払いにできる「メルペイスマート払い」でも、メルカリの売上金が充当されるケースが一定数を占めている(出典:メルペイ「新サービス記者向け発表会」資料より)

 「メルペイスマートマネー」でターゲットとする利用者層のイメージについて山本氏は、「従来の金融システムではなかなか与信を受けられなかった方々を中心に、皆さんのチャレンジしたいこと、好きなことをより身近にしていきたい」と話している。

 

画面5 技術や機能面に加えて、金融リテラシーの向上に向けた専用コンテンツの作成なども行うことで安心安全なサービス提供に務めていく方針(出典:メルペイ「新サービス記者向け発表会」資料より)

写真 メルペイ取締役COOの山本 真人氏(左)とメルペイ取締役の信川 享介氏(右)

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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