完全オンラインとして初めて開催されるCEATEC、リアル会場の『体験』を演出する3つの工夫とは

CEATEC(シーテック)といえば幕張メッセ。幕張メッセといえばCEATEC。そんな極端な印象すらお持ちの読者もおられるのではないか(筆者もその一人)。実に過去20年に渡って幕張メッセ(千葉市美浜区)を会場に開催されてきた「CEATEC」が、今年は完全オンラインで開催される。10月20日(火)の開幕を控え、オンラインのWeb空間でありながら、リアルの展示会を体現するためのさまざまな工夫が凝らされた「CEATEC 2020 ONLINE(シーテック 2020 オンライン)」の開催概要を紹介する。

ニューノーマル時代のイベントのあり方を模索し、完全オンライン化に覚悟

 電子情報技術産業協会、情報通信ネットワーク産業協会、コンピュータソフトウェア協会の3団体で構成するCEATEC実施協議会は10月1日、今年初めて完全オンライン開催する「CEATEC 2020 ONLINE(シーテック 2020 オンライン)」の詳細を発表した(写真1)。スローガンは「CEATEC – Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」。協議会では今年5月末に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応を交えた検討の結果、通常開催を中止し、オンラインでの開催を決定していた。

写真1 CEATEC 2020 ONLINE エントランスのイメージ

 CEATEC実施協議会でエグゼクティブプロデューサーを務める鹿野 清氏(写真2)は、会見で思いの丈をこう語った。「展示規模の縮小や参加者を制限するなどして、『何とかリアルでも開催出来ないか』と考えてしまった時期もあったが、完全なオンライン開催をすることで覚悟を決めた。出展者、来場者の皆さんには戸惑いや心配もあると思うが、ニューノーマル社会を一緒に歩むために、さまざまなトライアルとチャレンジを一緒にしてまいりたい」

写真2 CEATEC実施協議会 エグゼクティブプロデューサーの鹿野 清氏

 実際、直近の3カ月間は、開催形式について出展者から多数の意見が寄せられ、事務局側で何度も修正を繰り返す試行錯誤の連続だったという。そうした苦労を経て出来上がったCEATEC 2020 ONLINEは、2020年10月20日(火)から23日(金)までの4日間の日程で開催される。
 日本経済新聞社が主催する「AI/SUM & TRAN/SUM 2020」とも初めて連携するほか、例年開催されているコンテスト「CEATEC AWARD」では、ニューノーマルに関連する部門賞を新設する。

年内はオンデマンド視聴も可能。リアル会場の『体験』生み出す機能も

 準備期間中には、前例のない完全オンライン開催とあって、出展者の減少が危ぶむ声も聞かれたが、10月1日時点では300社/団体以上の参加が確定し、昨年の通常開催時とほぼ同規模の数字になる見込み。今年の特徴として新規の出展者数が45%以上(昨年は39%)と増加しており、「残念ながら今年は出展を見送られた会社も多々あるが、『オンライン開催だからこそ出展したい』と思っていただけた先もあると評価している」(鹿野氏)
 CEATEC 2020 ONLINEは「完全オンライン開催」のため、リアルの展示会場は設けない。また、前記のように「会期」は存在するものの、一部のライブ中継によるコンテンツを除いては年内いっぱい、今年の12月末まではアーカイブとして、オンデマンドで視聴可能となる。
 参加するにはまず、CEATEC公式ウェブサイトからの入場登録が必要。入場登録完了後、ログインすることで5つのエリアに入場できる(写真3)

写真3 公式ウェブサイトから入場登録するだけですべてのコンテンツが利用可能になる

 用意されるエリアは以下の通り(写真4)

1)テーマ展示エリア(ニューノーマル)・・・同一テーマでの企画展示スペース。プレゼンテーションも併設される。
2)企業展示エリア・・・出店企業による展示スペース。一部ではプレゼンテーションも併設される。
3)コ・クリエーションエリア・・・100を超えるスタートアップや大学の研究機関が出展。
4)コンファレンスエリア・・・番組表のように整理されたチャンネル一覧(写真5、写真6)から選んで視聴できる講演プログラム。一部を除いてオンデマンド視聴が可能。
5)公式イベントエリア

写真4 各エリアへの入り口イメージ

写真5 コンファレンスは全体のプログラムが見通しやすい番組表形式になる

写真6 キーノートスピーチにはソニーの石塚 茂樹社長ら豪華スピーカーが登壇

「CEATECの体験とは、展示を『見て』、コンファレンスを『聴いて』、未来の社会を『感じて』『考えて』、共創に向けて『動き出すこと』」(鹿野氏)を意識し、リアル会場と同様の「CEATEC体験」を演出するために3つの機能を搭載した。
 1つ目は「コミュニケーションチャット機能」(写真7)。バーチャルブースの訪問時に出展者の担当者と1対1で会話(テキストベース)ができる。2つ目は「ブース訪問履歴機能」(写真8)で、来場者のブース訪問履歴が記録されるため、出展者側がリアルタイムに閲覧状況を確認できる。「閲覧状況が振るわなければ、途中でコンテンツを差し替えるような運用も考えられる」(鹿野氏)

写真7 コミュニケーションチャット機能のイメージ

写真8 ブース訪問履歴機能のイメージ

写真9 CEATEC GO機能のイメージ

 3つ目は「CEATEC GO機能」(写真9)。CEATEC 2020 ONLINEのページ上で、ランダムに各出展者のチャンネルを表示する機能を用意する。「『展示会場をぶらぶら歩いていたら偶然にユニークな展示を見つける体験』に代わる機能」(鹿野氏)として、出会いの場を作り出す。

 CEATEC実施協議会では4日間の「会期中」の来場者数目標として、20万人超(2007年に来場者数で最高を記録した際の数字)を掲げるが、誰でも移動の負担なく「足を運べる」オンライン開催だけに、国内外からの参加を踏まえれば、会期後のアーカイブ配信を含めて桁違いの来場者数を叩き出すことも夢ではないのかもしれない。
 いずれにしてもCEATEC 2020 ONLINEの成否が、ウィズコロナ/アフターコロナ時代の展示会のあり方に影響を与えることは間違いないだけに、ITに少しでも関心をお持ちの方は、ぜひ積極的な参加を心がけたい。

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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