読者の皆さんはもう目にしたことがおありだろうか。日本コカ・コーラの自販機が国際決済ブランドの「タッチ決済」への対応を始めると発表したのは今年4月のことだったが、その設置ペースは今年いっぱいで(全国17万台のうちの)1万台を予定という事情もあり、なかなか身の回りにまで浸透しきていないのが実態だ。そこで本誌が炎天下(写真①)の東京を疾走し、数少ないタッチ決済対応の「マルチマネー対応自動販売機」を発見、使用感をレポートしようというのがこの企画である。
カード、スマホ(Android/iPhone)、ウォッチのすべてを試してみる
公式発表によれば、日本コカ・コーラの「マルチマネー対応自動販売機」(以下、「マルチマネー自販機」という)は2020年4月現在で国内に約17万台が設置されている。同社はこのうちの1万台を、2020年中にタッチ決済に対応させる予定だ。
この発表があったのは今年4月13日のこと。準備期間を考えれば、当然コロナ禍以前から計画されていた内容に思われるが、あれから4カ月が経過した8月中旬の現時点でも、なかなかタッチ決済に対応した「台」にお目にかかることができない。
筆者も折に触れて身の回りにあるコカ・コーラ自販機のチェックに余念がない毎日を送っていたが、ついに『東京の秋葉原近辺に設置されている』との情報が耳に入ったため、ここはぜひとも実機でタッチ決済を体験してくるべく、この炎天下にデジタルシティへと足を運んできた(写真②、③)。
秋葉原以外にも設置場所はあるようだが、なかなか見つけにくい状況であることは事実。そこで読者の皆さんにもこの新しい体験を共有していただくべく、実際にタッチ決済を用いて清涼飲料水を購入する模様を映像で収録してきた(動画①②)。ぜひ、涼しい場所でご鑑賞いただきたい。
【動画①】プラスチックカード(Visa LINE Payクレジットカード)、スマートウォッチ(ソニー銀行デビット/Fitbit Pay)、スマートフォン(三菱UFJ銀行デビット/Google Pay)でのタッチ決済(いずれもVisaブランド)
【動画②】iPhone/Apple Payでのタッチ決済。セディナのクレジット(Mastercard)、ビューカードのクレジット(JCB)、クレディセゾンのクレジット(American Express)。ウォレット画面には「iD」「QUICPay」のロゴマークも表示されているので紛らわしいが、それぞれのカードの国際ブランドで決済されていることは、「ポーッ」という味気のない決済音からも判別できる ※ビューカード、クレディセゾンはiPhoneのスクリーンレコーディング機能により撮影
予期していたことだが、タッチ決済の使用感としては、FeliCa系の電子マネーとほぼ大差がないものだった。「早い!」とも「遅い!」とも言えない、極めて「普通」の使用感である。私たちがそれだけ非接触IC決済に慣れてしまった、ということか。
購入したいドリンクを選んで金額下のボタンを押したら、カードリーダー上の決済選択パネルから最上段にある「タッチ決済」( 「 )))) 」 と国際決済ブランドのロゴマークが併記されている)の枠を選択(写真④)。その後、カードやスマホなどをリーダー部分にかざせば決済が完了する。その際、4点の点灯部が左から右に流れた後に、「ポーッ」という決済音が鳴って、決済の成功を伝えてくれる。
なお、単体のタッチ決済対応カード(他の非接触IC決済サービスが併載されていないもの)であれば、わざわざタッチ決済を選択せずともカードリーダーが自動で判別してくれるだろうと思って試してみたが、反応してくれなかった(下の「Kyashカード」を使ってみた動画③)。残念ながらタッチ決済で支払う場合には必ずパネル枠をプッシュする仕様となっているようだ。
【動画③】Visaプリペイド機能を持つ「Kyashカード」でのタッチ決済利用風景。非接触IC決済機能に関して、タッチ決済だけを搭載しているカードであっても、商品選択後に決済選択パネルからタッチ決済を選択し、プッシュしてからカードをかざす必要がある
「iDデビット/プリペイド」や「QUICPay+」はやっぱり使えないのか?
ところで、タッチ決済に対応したマルチマネー自販機をよく観察してみると、ある特徴が見えてくる。1つは、グレーカラーのカードリーダー(読み取り)部分に、FeliCaのシンボルマークに加えて、EMVコンタクトレスのシンボルマークと4点の点灯部が併記されていること。もう1つは対応する非接触IC決済に「QUICPay」が含まれていることである。
本記事の冒頭でも紹介した通り、まだまだ市中で確認できるタッチ決済対応の「台」は少ないのだが、上記2つを備え持った自販機(写真⑤、⑥)はすでに相当数が市中に設置されている。これらはもしかすると、今後タッチ決済に対応する予備軍と言えるのかもしれない。
感覚的にとしか言いようがなく、うまく説明できないのだが、なぜか筆者はタッチ決済対応のマルチマネー自販機では、「iD」や「QUICPay」のうちでこれまで対象外だった決済も使えるような予感がした。具体的には、カードやスマホなどをかざした際、リアルタイムに口座残高を照合しにいく決済ーー「iD」のデビット/プリペイドや「QUICPay+」ーーのことである。
そこで、もののついでに、同じ自販機を使ってこれらの使用可否も試してみた。その結果は・・・。こちらも検証動画をお楽しみいただければ幸いである。
【動画④】どさくさにまぎれて「iD(デビット/プリペイド)」や「QUICPay+」にも対応しているのではないか、との仮説も検証してみた
本日の検証結果
今回のタッチ決済対応「マルチマネー対応自動販売機」の検証結果は以下の通り(◎=成功、×=NG)。いずれも2020年8月10日時点での検証結果である。ご覧の通り、決済ブランドや支払方法、形状と手を変え品を変えて試してみたが、タッチ決済がうまく行かなかったのは「メルペイ」だけだった。メルペイは、Apple Payに登録すると自動的に「iD」と「Mastercard(コンタクトレス)」の2つの識別番号(デバイスアカウント番号)が付与されるのだが、前記した通り、マルチマネー自販機は現状「iD(デビット/プリペイド)」に対応していない。このことが原因なのではないかなどと想像を巡らせてみるが、本当のところはよくわからないし、「Mastercardコンタクトレス」として使えてもおかしくはないはずである(※記事文末に追記あり)。同様に、他にも使えない「タッチ決済」があるのかもしれないとの疑念を残す結果となった。
現場からは以上です!
【2020年8月17日12:00追記】
この動作に関してメルペイの公式サイトに注記がありました。Mastercardコンタクトレスには対応していないそうです。「Mastercardコンタクトレスでのお支払いには現在対応しておりません。」
メルペイ – iD/Apple Payを利用できるお店
カード発行会社 | 決済ブランド | 支払方法 | 形状(形態) | 利用結果 |
三井住友カード/LINE Pay | Visaのタッチ決済 | クレジット | プラスチックカード | ◎ |
日本航空(JAL GLOBAL WALLET) | Mastercardコンタクトレス | プリペイド | プラスチックカード | ◎ |
三菱UFJ銀行 | Visaのタッチ決済 | デビット | スマートフォン(Android/Google Pay) | ◎ |
ソニー銀行 | Visaのタッチ決済 | デビット | スマートフォン(Android/Google Pay) | ◎ |
クレディセゾン | Amexのタッチ決済 | クレジット | スマートフォン(iPhone/Apple Pay) | ◎ |
ビューカード | JCBコンタクトレス | クレジット | スマートフォン(iPhone/Apple Pay) | ◎ |
セディナ | Mastercardコンタクトレス | クレジット | スマートフォン(iPhone/Apple Pay) | ◎ |
メルペイ | Mastercardコンタクトレス | プリペイド | スマートフォン(iPhone/Apple Pay) |
× ※ |
ソニー銀行 | Visaのタッチ決済 | デビット | スマートウォッチ(Fitbit) | ◎ |
<参考:iD(デビット・プリペイド)、QUICPay+> *いずれも自動販売機はサービス対象外との記載あり
カード発行会社 | 決済ブランド | 支払方法 | 形状(形態) | 利用結果 |
メルペイ | iD | プリペイド | スマートフォン(iPhone/Apple Pay) | × |
三井住友銀行 | iD | デビット | スマートフォン(Android/Google Pay) | × |
Kyash | QUICPay+ | プリペイド | スマートフォン(Android/Google Pay) | × |
※iDプリペイドおよびデビットでは、飲料自販機・ガソリンスタンド・その他ホテル等一部店舗でご利用頂けません。(iDの説明サイト)
※QUICPayとQUICPay+の違い(QUICPayの説明サイト)