【レポート】「日本のEMV化も2020年までにはそれなりの規模に到達したい」Visaネット接続の開放/API公開でFinTech企業と協業へ




ビザ・ワールドワイド・ジャパンは2月10日、メディアに向けてVisaの日本市場戦略およびFinTech対応に関する説明会を開催した。Visaは2020年以降に向けて、「インバウンド」「FinTech」「セキュリティ」の3つのテーマに注力する。その最新施策として、Visaの決済ネットワークのシステムをオープンプラットフォーム化し、FinTechとの協業を狙っていく。


サイバーソース株式会社の代表を兼任する、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社のジェームス・ディクソン代表取締役(写真1)からは、2020年の東京オリンピックでワールドワイドスポンサーを務めるVisaが日本市場において2020年以降を見据えた戦略について説明があった。注力するキーワードは、「インバウンド」「FinTech」「セキュリティ」の3つだ。
ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社ジェームス・ディクソン代表取締役

ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社ジェームス・ディクソン代表取締役

ジェームス氏は、個人消費支出(PCE)に占めるカード支払い比率が諸外国(韓国73%、カナダ68%、中国55%、アメリカ41%、ロシア21%など)と比べて著しく低い日本の現状(17%)に対し、状況を一変する兆しが見えると説明し、支払い手段の多様化を挙げた。すでにVisaの全世界における取引件数ではクレジット決済をデビット決済が上回っているが、日本でもVisaデビットの年平均成長率は実に68.6%増にも達しているという(会計年度2007年〜2015年のショッピング取扱高ベース)。背景にはVisaデビットを発行する金融機関の増加がある。同様に、Visaプリペイドについても急増しており、バーチャルでカード(番号)発行する商品や、ANA(全日空)がこのほど発行を始めたVisaプリペイドのように13歳以上であれば利用可能なティーンエイジャー向け商品と、利用形態のバリエーションが広がっていることも特徴的だ。


Visaの注力キーワードである「インバウンド」、つまり訪日外国人による買い物消費については、訪日外国人の東京への評価として、「交通」や「食事」が高評価を得る一方で、「支払い」への不満が表れている。実際、インバウンド消費にしめるカード決済の割合は、日本を除くG8平均で59%に上るところ、日本では38%にとどまっているという。この現実からVisaが導き出したのは、「カードによる支払いがもっと利用できれば(インバウンドの)消費額は増える」という結論だ。その達成に向けて、安心、便利な決済環境の整備を推進し、また地方でのキャンペーン実施などを通じて「キャッシュレス・ジャパン」の後押しを目指す。


同社・新技術推進部の鈴木章五部長(写真2)は、Visaから見たFinTechの動向として、決済分野における、新しいプレーヤーによる新しいサービスの背景には決済環境の多様化があると分析。スマートフォン1つを取ってみても、その決済方法は従来型のオンライン決済にとどまらず、事前オーダー型決済、組込み型決済、従来型対面決済などが派生してきているという(写真3)。その際のインターフェースも非接触(NFC)、QRコード、BLE、ジオフェンシングと多様化しているが、Visaはこれらに加えて将来に登場してくるであろう技術や形状についてもいち早く対応していくスタンスだ。
ビザ・ワールドワイド・ジャパン・新技術推進部の鈴木章五部長

ビザ・ワールドワイド・ジャパン・新技術推進部の鈴木章五部長

Visa発表会の資料より

Visa発表会の資料より

そのためにもVisaは、Visaの決済ネットワークのシステムをオープンプラットフォーム化、「これまで金融機関や決済サービス事業者に限られていたVisaNet接続を開放し、APIを公開する」(鈴木氏)ことで、FinTech企業との協業を図っていく。この内容はすでに今年2月4日に米国でローンチされており、同プログラムは「Visaデベロッパー(Visa Developer)」と命名されている。



ところで、ジェームス氏は「(キャッシュレス環境の整備は)外国人にとって便利になるものだが、もちろん、日本人にとっても利便性は高まる」とプレゼンテーションを結んだ。カード決済インフラの整備となると、特に加盟店側におけるICカード対応、EMV化が必須となる。米国では昨年10月に実施されたライアビリティシフト(債務責任のイシュアからアクワイアラへの移行)と前後してEMV化の進捗が目覚ましいというが、翻って日本の見通しはどうか。そう問われた鈴木氏は、「米国や韓国では大統領令が出るまでのことをやってEMV化を進めている中で、日本だけやらないというのはありえず、日本のEMV化も加速するはずだ。2020年までに100%、EMV化を完了するというのはチャレンジングだが、それなりのスピード感をもって、それなりの規模に到達したい」とコメントした。



[2016-02-10]



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ePayments News

日々、電子決済サービス関連各社のプレスリリース発表を泳ぎ回り、秀逸なニュースを集めて紹介する電子決済研究所のスタッフ。ほぼ人力のボット。

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