デジタル(電子)クーポンの配信をコア事業として、システム開発から販売促進の企画提案、クリエイティブ制作などを手がけるエムディーピー(MDP)は12月20日、東京都内で記者発表会を開催し、新たに訪日外国人観光客(インバウンド)向けのデジタルクーポンサービスを提供開始すると発表した。インバウンドの増加に伴って巷で急増中の「IDが付かないレシート」の課題を、デジタルクーポンで解決する狙いだ。
ベトナム、タイ、シンガポールの通話アプリ経由でクーポン配布
最近、コンビニのレジでのオペレーションとしては、各社が提供する自社のポイントカード会員証アプリを提示して利用客の「ID」を確認。それをシステム的に販売商品と紐付けることで、購買分析やマーケティングなどに活用するのが一般的になっている。ところがこのところ急増するインバウンドの来店で、「IDが付かないレシートが増えてきた」(エムディーピー・代表取締役兼COOの河野 結城氏/写真1)
商品の大量買い傾向なども見られる一方で、誰が買っているのかがよくわからない。コンビニにとっては由々しき状況であり、解決策が模索されていた。こうした課題に対して、「IDを付けるための代わりの仕組みとして、クーポンに注目いただいている。使用されたクーポンの情報が付加された『バスケット(買い物カゴ)』を、コンビニさんは研究されているのではないか」と河野氏は指摘する。
新サービスは、東南アジアの3カ国で多く利用されている通話アプリ、ベトナムでは「Zalo」、タイとシンガポールは「LINE」と提携し、それらの利用ユーザーが来日した際にミニアプリを介して日本で使えるデジタルクーポンを配布する(画面1、2)。これに先立って、中国と韓国でも同サービスを試験的に提供した実績があり、その際には発行した2万枚のデジタルクーポンのうち実に1.5万枚が、間違いなく在中韓のユーザーに使用されたことを確認できたという。
JCBが狙うは、パーソナライズ化されたキャンペーンの迅速実行
2009年創業のエムディーピーは、デジタルクーポン配布・管理システム「プチギフト」(画面3)の提供をコア事業として、組み込み型やASPといった提供形態にも柔軟に対応しており、ナショナルブランド企業にも多数の導入実績がある(画面4)。プチギフトは、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートといった大手コンビニをはじめ、飲食、ドラッグストアなどさまざまな業種の景品と交換できることも特長になっている(画面5)。
同社の仕組みは、クレジットカード会社のジェーシービー(JCB)も採用している。JCBではカードの利用促進を目的に各種のキャンペーンを展開しており、デジタルクーポンも重要なサービスツールの1つ。ことJCBカードで決済した利用者に向けた「マストバイ型」キャンペーンの立案では、「スピード」「パーソナライズ」「柔軟性」の3つの課題への対応がポイントになるという。
「担当者が1本のメールを送るくらいの感覚で、キャンペーンが実施できるようになるのが目指す姿。もともと基幹系で持っている売上のマスターデータを、キャンペーンシステム自体でも持つようにすることで、システム部門とのコミュニケーションに要するタイムラグをなくし、すべてマーケティング部門で完結できるようにした」(ジェーシービー・販売促進部 次長の藤林 健太氏/写真2)
そうした狙いで、このほどJCBでは「リアルタイムクローズドキャンペーン」の仕組みを開発(画面7)。利用者ごとに内容をパーソナライズ化したキャンペーンを生成し、デジタルクーポンともシステム上で連携する。このうち、抽選と景品受取のためのWebページ提供の部分でエムディーピーが採用された。
「当社が選ぶと、どうしても景品の調達力と管理の面で見劣りしてしまう。エムディーピーとの協業により、お客さんが欲しい景品を選べるようになったことが成果だ」(藤林氏)
従来の「一律固定」のキャンペーンに対して、「お客さまごと」に最適化が可能になる新手法を組み込むことで、キャンペーンの効果向上と効率化に期待しているという。
「近い将来にはお客さんの反応を生成AIに入力して、個別のキャンペーンを考えてもらう。そうなれば、誰にでも運用できる(キャンペーンシステムになる)」(藤林氏)として、JCBでは今後もサービス改善を続けていく考えだ。