ネットプロテクションズは5月9日、会員制の後払いサービス「atone(アトネ)」を拡張した「atoneプラス」を2024年冬に投入する計画を発表した。現時点で後払い業界最強のポイント還元率となる1.5%を掲げる一方で、使い勝手の良い「分割払い」を開発、提供していくことで、3年後にatoneプラス単体で100万会員の獲得とatoneの利用額拡大を目指す。
実店舗でも利用できる「atone」、会員数は700万超に
新サービスの「atone(アトネ)プラス」は、同社が2018年に提供を始めた会員制(会員登録なしでも一部利用が可能)の後払いサービス「atone」がベースになる。atoneは、ECサイトでの物販・非物販を含めた支払いに加えて、QR・バーコード決済規格の「Smart Code(スマートコード)」に対応するスマホアプリを通じて、Smart Codeの110万店を超える実店舗(画面1)でも利用できる後払いの決済サービスで、利用した金額は後日、コンビニエンスストアの店頭やPay-easy、口座振替などの方法で返済する仕組み。
利用金額(請求金額)に応じて0.5%のポイントが貯まり、貯まったポイントは1ポイント=1円換算で、atoneでの決済に充当できる。クレジットカードよりも申し込みが簡易な点などが受け、現在までに700万人を超えるユーザーが利用しているという。
2024年の冬から新たに企画、投入予定の「atoneプラス」には、アンケートを通じてatoneユーザーのニーズ(画面2)を汲み取り、「すべて取り込ませていただいた。会社としてめちゃくちゃ力を入れている商品だ」(ネットプロテクションズ・代表取締役社長の柴田 紳氏/写真1)。
まず、ポイント還元率を現行の3倍に当たる常時「1.5%」とする。サービス面では、これまで5万円が基準の変動制だった上限金額を、最大30万円まで増額する。あわせて、既存のatoneユーザーからの要望が多かった「分割払い」にもいよいよ対応する(画面3)。現時点では最大3回までの分割払いを手数料無料で提供する計画だが、「(3回以上の)分割払いの回数も開発に入っており、順次、拡大していく予定だ。いま徐々にテスト中だが、今冬以降にしっかりとしたリリースを出していきたい」(柴田社長)
分割払いの強化を見据えて「割販法のライセンスを取得する」
後払い(BNPL)に関連する日本の法律としては、クレジットカードや個品割賦の事業を営む際に「割賦販売法」の規制を受ける形になっているが、いわゆる「翌月1回払い(マンスリークリア)」の場合にはその限りではない。また、近年では「マンスリークリアにも広がりがあり、(決済から返済までの)全体が60日以内に収まっていれば、その間に分割払いで支払う場合であっても、マンスリークリアとして割賦販売法の適用外になる」(森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士の堀 天子氏)。
つまり、ネットプロテクションズが提供予定のatoneプラスにおいても、分割の方法や範囲によっては必ずしも割賦販売法に基づく事業者登録を受ける必要はないが、「分割払いに力を入れていこうと思うと、日本は法律が大変しっかりしているので、そこに乗るしかないという判断だった」(柴田社長)として、割賦販売法のライセンスを取得する意向だ。
利用者にかかる手数料の関連では、これまでコンビニでの返済時にかかっていた決済手数料を無料にする。一方で、会費として月額300円を徴収する有料制のサービスとした(画面4)。柴田社長によれば、いま海外のBNPL事業者にはこぞってこの有料制のサービスを開始している傾向が見られるそうで、「海外ではサブスクのようなイメージで展開されているが、ちょうどわれわれも同じことを考えていた」(柴田社長)
同社では、atoneにおける上限金額の増額と分割払いの提供によって、決済金額が上がることで、利用シーンの広がりと高額商品への対応に期待を寄せる。物販では、家電やPC機器、衣類・服飾雑貨、家具・雑貨・インテリアなどが対象市場として視野に入ってくる。またサービス系でも、旅行サービス、チケット販売、定期以外の通信教育などを想定しているという。「すでに既存店に声掛けしていて、10店舗以上から内諾も頂いている」(柴田社長)
ネットプロテクションズの事業はatoneの他にも、EC物販に特化した「NP後払い」などの後払いサービスを通じて1,500万人のユニークユーザーを抱える。このうちの700万人がatone会員となってる現状実績を踏まえ、新サービスのatoneプラスでは3年後に100万会員の獲得を目指していく(画面5)。