Square(スクエア)は4月12日、iPadを組み合わせて利用できるPOSレジ端末「Squareスタンド」の第2世代版を、日本を含む世界8カ国(米国、カナダ、日本、オーストラリア、イギリス、アイルランド、フランス、スペイン)で同時発表した(写真1、2)。洗練されたデザインと、そのスタイリッシュさでは決済端末界の「オシャレ番長」とも目される同社の最新ハードウェアについて、本体から外箱までを含めてレビューする。
クルッと回転した瞬間、画面が見やすい「ダークモード」に
日本では2022年5月からオンラインで注文受付を開始する。販売価格は2万9,980円(税込)で、日本では2019年から販売する前機種(第1世代)の3万2,980円と比べて、10%安価になった。iPad専用で、Androidには対応しない。対応するiPadは、10.2インチのiPad(第9世代 2021、第8世代 2020、第7世代 2019)とiPadAir(第3世代 2019)、10.5インチのiPad Proに対応する。
第2世代スタンドの最大の特徴は、第1世代ではUSBケーブル経由の外付けになっていた接触・非接触ICリーダーのハードウェアを、iPadをはめ込むジャケット部分に内蔵したこと。いずれも決済利用時にはリーダー付近に配置された白色LEDランプが点滅(写真3)するため、お客さんが迷いなくカードをタッチしたり、差し込んだりして決済手続きを進めることができる。
対応する決済サービスは従来と変更なく、お店が契約すれば、クレジットカードをはじめとする国際決済カード(タッチ決済にも対応)と、FeliCa系の電子マネー(交通系、iD、QUICPay+)に対応できる。決済手数料もSquareが定める料金テーブルの適用となる(写真4)。
店員側を向いていた画面がお客さんの側に向かって「クルッと回転」することも、Squareスタンドの特徴だったが、決済リーダーが内蔵された第2世代スタンドではこの使い方がさらに強化された。店員が購入商品や金額を売上登録し、いざ決済というところでiPadのスクリーンをお客さん側に向ける流れになるのだが、それまで標準的な白基調だった操作画面が、お客さん側に向けられるところで、いわゆる「ダークモード」的な黒画面に反転。お客さんは見やすく表示された決済金額などを目で確認しながら、安心してカードやスマートフォンを提示して決済が完了できる(動画)。
接触IC型のカードの場合には、お客さんが自身でカードを右手下段のスロットに右側から差し込み、画面に表示されたキーパッドから4桁の暗証番号を入力する必要があるのだが、この際にも端末画面が完全に反対を向いているので、店員側からは見えない仕組みとなっている(写真5)。暗証番号でなく、サイン取引の場合でもお客がサインしやすいだろう。
ここがいいね! 第2世代スタンド
今回、Squareの広報ご担当者さんのご厚意で、特別に発売前の実機を触らせていただく機会を得たので、ここからは実際に目で見て触れてみた感想と、良かった点、がんばってほしい点を、勝手ながら筆者の私見を含めて紹介したい。
まずは「良かった点」(いいね!)から。
・圧倒的にオシャレ
まぁ、ご覧の通り、全体の佇まいがオシャレである。Appleが提供する製品ではないのかと見まごうほど、iPadのデザインに溶け込んでいる。いわば決済端末界の「オシャレ番長」とも言えるSquareのデザイン性の高さを見れば、お店にもファンが多いことはうなづけるだろう。少し広げてみれば、「オシャレな端末が店内にあると、お店自体がオシャレに見える」効果もあるかもしれない。
・接触・非接触ICリーダーが内蔵
接触・非接触ICリーダーがiPad横の「ジャケット」部分に内蔵されたことで、ケーブルで外付けリーダーとつながっていた第1世代スタンドに対して、POSレジとの一体感が飛躍的に高まっている。
一体感だけでなく、「接続の安定性」も評価したいポイントだ。mPOS形態の製品、例えば同社であれば「Squareリーダー」のような端末では、スマートフォンとリーダーをBluetoothなどの無線通信で接続する必要がある。ところが接客時に思わぬ接続不良が発生して、手間取っている事態を時折見かけることがある。それに対して一体型の第2世代スタンドはiPadと有線で常時つながっているので、安定感はハンパない。これがひいては、決済取引時の信頼性を向上させることは間違いない。催事場やモバイル環境での利用には致し方ない面もあるが、固定された場所で商売したいお店にとって、このPOSレジとリーダーとの間の接続の安定感は必須なのではないかと感じた。
・磁気カード読み取りに非対応
ここはあまり目立ったアナウンスがされていない箇所だが、第1世代スタンドにあった磁気カード読み取り機能が第2世代では省略されている。第2世代スタンドでは、基本的に磁気カードの読み取りができないという思い切った仕様が採用された。
Squareによると、同社の統合型決済端末を利用したキャッシュレス決済の取引のうち、タッチ決済またはICチップ付きのカードを差し込む決済の割合は世界で98%、日本国内でもSquareリーダーを利用するお店の95%以上ではチップ取引に移行していることもあり、磁気カード読み取り機能の搭載を見送ったという。もっとも、Squareが無償提供するPOSレジアプリではカード番号の手入力による決済処理にも対応しているため、磁気カードリーダーの不在が及ぼす影響は大きくなさそうだ。
ここが残念、第2世代スタンド
これから発売される製品に対して大変おこがましいのだが、今後の改良に向けたリクエストの意味で「がんばってほしい点」も挙げておきたい。
・コード決済やポイントカードに非対応
同時発表された世界8カ国の中でも日本固有の課題といえるのかもしれないが、第2世代スタンドではコード決済や共通ポイントなどに対応していない。現時点でSquareがカバーしているカード決済や電子マネーが受け入れられれば十分なお店も少なくないはずだが、周囲のお店との関係やマーケティング上、どうしても対応する必要のあるコード決済や共通ポイントがあるお店では、これが理由で第2世代スタンドの導入に踏み切れない事情もあるかもしれない。脇に専用の処理端末を置けなくはないが、決してスマートな佇まいにはならないであろうことが課題だ。
とはいえ、世界で共通展開する一方で、日本固有のFeliCa系の電子マネーには対応してきた実績のあるSquareなので、お店からの要望も踏まえた今後の対応には期待したい。
・ちょっと高価?
前機種から値下げした2万9,980円(税込)という販売価格は、相対的には確かに安い。ただ、第2世代スタンドを利用する上で必須のiPadをどう調達するかの課題が残る。Squareとしては、もともと店舗で利用していたiPadを使ってもらいたいスタンスだが、第2世代スタンドに一目惚れしてこれから一括導入しようとするお店にとっては、7万円からの設備投資を検討する必要があるだろう。また、メールやSMSでのレシート発行にも対応している第2世代スタンドだが、加えてレシートプリンターや現金ドロワーなども用意しようとすると、それなりの金額になってくるはず。この費用負担をお店がどう吸収できるか。
もちろん、iPad自体はPOSレジ以外の用途にも使える(むしろそちらが本筋だ)し、売上管理以外での活用場面も多そうなので、十分に元が取れる計算はできるだろう。そこまで出せないというお店は、スタンドアロン型の決済端末「Squareターミナル(税込4万6,980円)」や、スマホとペアリングして使用する「Squareリーダー(税込7,980円)」も選べるので(写真9)、お店の規模やレジの混雑度合いなどに応じて検討するのもよいかもしれない。
・暗証番号の入力配列が固定
細かい点だが、前記した通り、第2世代スタンドでの暗証番号入力はiPad画面にお客さんが直接入力する。業界では近年認められるようになった「PIN・オン・グラス」と呼ばれる技術のため、セキュリティ上の問題はまったくないが、その際に表示される数字の配列が電話番号方式で固定であることが少し気になった。
最近ではATMや自動決済機などの操作画面で、この数字配列がランダムに切り替わる方式に直面することがあるが、指の位置によって後方などからタッチした番号を類推されないための配慮と思われる。このあたりはソフトウェアの変更で対応可能とも思われるので、第2世代スタンドでも今後のバージョンアップに期待したい。
なかなか体験できない、第2世代スタンド「開封の儀」を疑似体験
最後にせっかくなので、筆者も第2世代スタンドを購入した気持ちになって、擬似的に「開封の儀」をさせてもらった。環境に配慮して完全に紙で仕上げられた外箱と梱包からしてすでにオシャレな体験が始まっており、「POSレジを買ってきた」のとはまた感覚的にひと味異なるところに感動を覚えるオーナーも多そうだ。