通信分野の需要減響き、世界のICカード出荷数が対前年比マイナスに〜欧州ユーロスマートが展望を公表

SIM登録とMNO統合に関する規制影響で出荷数が純減に

 欧州スマートカード関連の業界団体であるユーロスマート(Eurosmart)は6月10日、世界中でICカードなどに用いられている専用のICチップ、「セキュアエレメント(Secure Elements:SE)」の2019年の出荷状況と、2020年の出荷見通しを公表した
 2019年のセキュアエレメントの出荷総数は2018年から減少、対前年成長率でマイナス2%に当たる100億3,300万ユニットだった(2018年は102億3,000万ユニット)。
 分野別内訳で見ると、通信、金融・決済、政府・ヘルスケア、セキュアエレメントを埋め込んだデバイス製造者、その他(交通など)があるが、全分野の中で最も出荷数の多い通信分野において、SIM登録とMNO統合に関する規制の影響から需要が減少し、唯一、対前年成長率でマイナス(▲7%)に転じたことで、他分野の成長に影を落とした格好だ(表1、図1)

  2018年 2019年 2019年 対 2018年の前年成長率
通信 * 5,600 5,200 -7%
金融・決済 3,210 3,350 4%
政府・ヘルスケア 500 530 6%
デバイス製造者 ** 440 465 6%
その他 *** 480 488 2%
合計 10,230 10,033 -2%

表1 セキュアエレメントの出荷予測<2018年→2019年>(単位:百万ユニット)(出典:2020年6月10日付けプレスリリース「2019 shipments and 2020 outlook」より https://www.eurosmart.com/2019-shipments-and-2020-outlook/
* モバイル通信事業者によるもの。(SIMアプリケーション+セキュアエレメント)
** デバイスは、携帯電話、タブレット、ナビゲーションシステム、ウェアラブルなど。(SIMアプリケーションを搭載しない埋め込みセキュアエレメント)
*** その他には、交通、ペイTV、フィジカル/リモートアクセスを含む。

図1 セキュアエレメントの出荷予測<2018年→2019年>(出典:2020年6月10日付けプレスリリース「2019 shipments and 2020 outlook」より)

 ユーロスマートでは通信分野におけるセキュアエレメントの2020年の出荷見通しについて、新型コロナウイルス感染症の影響に加えて、消費者の購買行動の変化に伴って減少傾向が続くとした。他方で、同じ環境下でも埋め込み型UICC(eSIM)の出荷については2桁成長を見込んでいる。

着実な成長を続ける「コンタクトレス」市場

 2020年は新型コロナウイルス(COVID-19)への感染対策として、世界各地で利用上現金額を引き上げるなどの動きが活発化しているのが「コンタクトレス(contactless)」に対応するセキュアエレメント。2019年のコンタクトレス市場は、対前年比20%の成長を見せた。成長の主要因はモビリティとコンタクトレス決済で、利便性と安全性を備えた使い勝手が評価された。ウェアラブルも、決済には便利に使える形状となっている。
 分野別の出荷状況は表2、図2の通りで、金融・決済分野が全体の76%を占めている。これに政府系・健康保険系のカード、交通カードが続く結果となった。

  2018年 2019年 2019年 対 2018年の前年成長率
金融・決済 1,650 2,050 24%
政府・ヘルスケア 300 335 11%
交通 295 310 5%
合計 2,245 2,695 20%

表2 コンタクトレス向けSEの分野別出荷予測<2018年→2019年>(出典:2020年6月10日付けプレスリリース「2019 shipments and 2020 outlook」より)

図2 コンタクトレス向けSEの分野別出荷予測<2019年>(出典:2020年6月10日付けプレスリリース「2019 shipments and 2020 outlook」より)

 

 なお、本発表文中における2020年の予測に際し、ユーロスマートはCOVID-19の世界経済に与える影響が不確定要素であり、2020年4月時点での見通しであることを注記。10月にあらためてマーケットとセキュアエレメント分野の状況をレビューする予定としている。

 

 

 

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日々、電子決済サービス関連各社のプレスリリース発表を泳ぎ回り、秀逸なニュースを集めて紹介する電子決済研究所のスタッフ。ほぼ人力のボット。

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