NFC Forumでは10月6日から10日までの期間、東京・お台場のホテル日航東京にて総会を開催した。8日には、NFC Forumチェアマンの田川晃一氏(ソニー/写真①)、同バイスチェアマンのアレクサンダー・レンズィク氏(NXPセミコンダクターズ/写真②)、エグゼクティブディレクターのポーラ・ハンター氏(NFC Forum/写真②)が出席し、報道機関向け説明会を開催。同日には合わせてNFC Forum主催の交流イベント「Tap into NFC Showcase」も開催され、多数の関係者が参加した。
NFC Forum会員には、新たに12社・団体が加盟、また大日本印刷(DNP)が会員クラスについて「プリンシパル(正会員)」から「スポンサー」への変更を行った。同イベントから、田川晃一チェアマンによるプレス発表の内容と、イベント「Tap into NFC Showcase」の出展模様について紹介する。
●NFC搭載端末の出荷数は5億台に
報道機関向け説明会では、チェアマンの田川氏より以下の説明が行われた。
現在、世界でNFC機能を持ったデバイスには約300機種があり、マーケットに出荷されている台数としては約5億台に上っている。1日に100万台というペースで生産されている計算となり、NFCへの加熱度が見て取れる数字となっている。
NFCの主な利用シーンとしては、家電、ヘルスケア、輸送業(鉄道、エアライン)、ペイメント(決済)やリテール(小売)、などの分野が挙げられる。そのうち、例えばエアライン分野では、「IATA(イアタ)」と呼ばれる、全世界の航空会社をカバーしている組織とNFC Forumとの間で共同作業(リエゾン)を進めてきており、さまざまなホワイトペーパーの作成や規格化作業を推進している。IATAでは全世界レベルで、NFCを使ったボーディングパス(搭乗券)や、ラウンジへのチェックインなどを実現しようと奮闘しているところだ。
ペイメント分野では、エコシステムが要求するセキュリティレベルとそれに関わる登場人物が大勢いるため、なかなかサービス開始にたどり着けなかった。しかし、ようやく規格の整理や、エコシステムにおいてプレーヤー間の合意が得られるようになり、ペイメントのセグメントが立ち上がりを見せている状況にある。また、このほどAppleが「Apple Pay」のサービスを発表したこともあり、ペイメント分野の加速度はますます増していくものと思われる。
リテール分野では、(ポイント、クーポンなどの)ロイヤルティプログラムや、商品に貼ってあるタグで商品情報を読み取るなど、順次サービスを開始しようとしている状況だ。
●専用サイトを立ち上げ、NFCを用いたシステム開発を支援
NFC Forumの主なミッションである技術規格の策定については、今後も引き続き推進していく計画である。本総会までのアップデート情報としては、①デベロッパープログラム、②ハンドオーバー、③Nマーク、④メンバーシップ、⑤リエゾン——の5点がある。
デベロッパープログラム(開発者向けプログラム)では、10月2日に新しいプログラム(“Tap Into NFC” Developer Program)をリリースし、活動のシェアや情報共有が円滑に進められるようにしたところである。このおかげで、デベロッパーにおけるNFC Forumの認知度が増してきている。
ハンドオーバー関連では、この6月にBluetooth SIG(Special Interest Group)と共同でホワイトペーパーを作成した。WiFiの認定プログラムに正式なNFC対応が入っているため、認定付きでミラキャスト(スマホの画面をテレビなどへ転送して映し出す機能)などが利用できるようになっている。
またNFC Forumの「Nマーク」は、2009年から無料で提供を始めたところ、現在までに2,878件のダウンロード実績があり、さまざまな製品や画面表示などに利用されている状況だ。
メンバーシップの更新情報としては、現在、全世界の170〜180社が加盟している状況であり、10月8日にはプリンシパルメンバーであった大日本印刷(DNP)が、スポンサーメンバーへとステップアップすることになった。
リエゾン関係では、エアライン分野のIATAなどとリエゾン契約を結び、連携して規格を策定しているところである(写真③)。
●NFC技術の交流イベントを開催、A3/NFC賞受賞の3社も展示
交流イベント「Tap into NFC Showcase」では、大日本印刷(DNP)、ソニー、Tapcentive、DUALiの4社に加えて、「Andoroid Application Award(略称A3、主催・日経BP社)」のNFC賞を受賞したブリリアントサービス、ドリームオンライン、LitePointの3社、合計7社がNFC関連製品・サービスを出展した。
大日本印刷(DNP)は、東海理化と共同で開発した「DNP SMARTPHONE KEY SYSTEM」のプロトタイプを披露した。NFCスマートフォン(以下、NFCスマホ)を車の窓付近に貼付されたNFCタグにかざすことにより鍵の開閉を管理できるほか、車載の操作ボード上にNFCスマホを置くことによりエンジンの始動/停止が操作できる(写真④⑤)。Bluetoothにも対応しており、車から離れた場所からでも鍵の開閉や、エンジンの始動/停止などが可能である。プロトタイプでは、スマートフォンとMNO-TSMをKDDIが提供している。
ソニーは、NFCスマホをNFC対応のスピーカーにかざすことにより、自動でBluetoothのペアリングを行って音楽を再生するデモや、NFCスマホをデジタルカメラにかざして、カメラをNFCスマホでリモート操作するなど、家電連携関連の展示を行った(写真⑥)。
Tapcentive(アメリカ)では、ショッピングセンターや個店などが顧客ロイヤルティを高める用途を想定し、ソリューションを展示した。展示では、抽選会を想定したデモとして、読み取り端末にNFCスマホをかざすことにより抽選をする(写真⑦)。抽選確率をどの割合にするかなどのシステム運用管理や、顧客管理についてもNFCスマホを通じて操作可能な点などをアピールした。
DUALi(韓国)では、非接触のリーダライタやモジュールなどハードウェアのソリューションを中心に展開している。展示では、P2Pのプラグフェストに使用される試験用リーダライタや、NFC対応のリーダライタ製品を紹介した(写真⑧)。
ブリリアントサービスでは、水槽をモチーフにしたNFCアプリ「Ikesu」を展示した(写真⑨)。あらかじめ情報が書き込まれたNFCタグに対し、NFCスマホをかざすことにより、アプリ内にさまざまな魚が追加できる。水族館での採用例をイメージしたデモを紹介した。
ドリームオンラインでは、NFCスマホのロック解除用途にNFCタグを用いるソリューションの提案を展示した。ユニークな例では、指輪にNFCタグを内蔵(写真⑩)し、NFCスマホのロック解除をコントロールする。さらに、ロック中にNFCスマホが不正使用された場合に、フロントカメラで不正利用者を撮影、保存する機能(監視モード)などを紹介した。
LitePoint(アメリカ)は、NFCデバイスの開発者向け試験装置を提供するベンダーである。今回、展示したNFCの試験システム「IQnfc」(写真⑪)は、NFC物理層の特性評価をワンクリック操作だけで簡単に試験・検査でき、製品の欠陥を検査する機能試験と、RFパラメータ試験の両方に対応している。
[2014-10-28]