紙のお札に対するユーザーの意識変化がPayPayの利用を後押し、成長スピードに推されてマネタイズも前倒しに

ヤフーなどを傘下に持つZホールディングスは4月30日、報道関係者に向けて、「2019年度通期および第4四半期決算説明会」をインターネットライブ中継で開催した。単なるスマホ決済サービスから、同社グループに横串を通す、総合的な金融・決済サービスへの成長が期待されているPayPayの概況を中心に報告する。

PayPayへの新型コロナの影響は「さほど大きくない」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響から、小売業や飲食業などでも営業の短縮や自粛を余儀なくされており、それに伴うPayPayの取扱高への影響が懸念されるが、Zホールディングス代表取締役社長 CEOの川邊 健太郎氏(画面1)は、「オフラインにおけるPayPay利用(店頭での対面決済)への影響はさほど大きくない。なぜならPayPayはコンビニやスーパーでの利用が多く、緊急事態宣言下においてもそれらの店舗に営業いただけているからだ」と説明した。

画面1 Zホールディングス代表取締役社長 CEOの川邊 健太郎氏

 さらに注目される点として、「お札での支払いに対するユーザーの(意識の)変化」(川邊社長)から、これまでPayPayを利用していなかった利用者層、特に高齢者の間でPayPayの利用意向が高まっており、PayPayや導入しているお店への問い合わせが増えているという。「問題は加盟店獲得のための営業手法。今までは対面でやってきたが、テレビ会議や電話での営業に切り替える努力をしている」(川邊社長)として、加盟店拡大のペースを維持したい意向だ。
 ただ、新事業年度の4月1日以降は、新型コロナウイルスの影響が徐々に表れてきている。PayPayのオフライン利用は外出自粛に伴って減少傾向にある(画面2)。PayPay事業全体としては、これをPayPayモールやPayPayでのネット決済といったオンライン利用の拡大により嵩上げすることで限定的な影響にとどめたいところだが、「この状況が長期化すれば、マイナスの影響は出てくると考えている」(川邊社長)という。

画面2 同社「コマース事業」への新型コロナウイルスの影響

オンライン決済を強化、ZOZOTOWN本体にPayPayを導入

 決算説明会ではPayPayの最新の利用状況も公表された(画面3)。2019年度第4四半期の決済回数は3億7,500万回で前年同期比で約17倍に伸長。2019年度期末時点での加盟店数は215万カ所、サービス登録者数は2,700万人に達している。

画面3 PayPayの最新状況

「サービス開始からわずか1年半の間に圧倒的ナンバーワンのスマホ決済サービスに成長した。それによって、マネタイズの時期も前倒ししていく」(川邊社長)
 その1つが与信事業である「PayPayあと払い」だ(画面4)。グループのワイジェイカードが培ってきた与信のノウハウを活用して、この4月から限られたユーザー向けに実験的に提供し始めた。今夏にはこれをPayPayの全ユーザーへ門戸を広げ、手数料収入の獲得を狙う。

画面4 PayPayあと払いの概要

 また、かねてから明言してきたPayPayアプリのスーパーアプリ化(画面5)も今年度に推し進めることで、自社内外のサービスとの連携を図っていくという。
 オンライン決済の利用拡大では、Zホールディングスが昨年、連結子会社化したファッション通販サイト「ZOZOTOWN」(運営会社・ZOZO)との連携を強化。昨年12月にはPayPayモールにZOZOTOWNを出店し、その取扱は順調に伸びているとするが、今年度の第2四半期にはZOZOTOWNの本体サイトに決済手段としてPayPayを導入する。これによりPayPay利用者の取り込みを図るほか、決済手数料のインハウス化による費用削減を狙っていく。

画面5 スーパーアプリ機能の拡充

画面6 PayPay株式会社の資本構成(変遷)

画面7 Zホールディングスの2019年度通期決算は増収増益に転換。売上収益は初めて1兆円超え

画面8 新型コロナウイルスへの対応方針

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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