【レポート】翌月まとめて後払いのPaidyがトラベル分野へ進出、ホテル・旅行業界の「事前決済」ニーズを満たせるか

後払いサービス「Paidy」を運営するエクスチェンジコーポレーションは、物販を中心としたECサイトへの導入から、ホテル・旅館予約システム大手と組んでトラベル分野への導入拡大へ向けた動きを本格化させた。さらに来年度中にはリアル店舗での決済にも進出の意欲を見せる。

独自の与信で決済を完了、支払いは翌月まとめて
 エクスチェンジコーポレーションは2月28日、東京都内で記者会見し、ホテル・旅行業界での「Paidy(ペイディ)」の導入拡大を目指し、ホテル予約システム「Direct In」を提供するヤフーグループのダイナテックと提携すると発表した(写真①)
 「Paidy」は2014年10月にサービス提供を開始した決済サービスで、クレジットカードや事前登録を必要とせず、Eメールアドレスと携帯電話番号のみで決済を完了できるのが特徴。ネット決済の場面で「Paidy翌月払い」ボタンを押下して進むと、Eメールアドレスと携帯電話番号の入力が求められる。すると先ほど入力した携帯電話番号宛てに「SMS認証」のメッセージが届くので、通知された情報を次の画面に入力すると利用者に対する与信が行われる。結果OKであれば決済が完了し、翌月になると、請求額について1カ月分まとめて支払いを求めるEメールが飛んでくる流れとなる。この支払いは、コンビニ払いのほか、口座振替、銀行振込に対応しており、一部では分割払いへの変更も可能だ(写真②)
 と、文章で説明するよりも、以下の動画でフローを確認してもらったほうが早いかもしれない。

写真① 写真左から、ダイナテック・代表取締役社長 齋藤 克也氏、エクスチェンジコーポレーション・代表取締役会長 ラッセル・カマー氏、同・執行役員 営業本部長 橋本 知周氏

写真② 一部条件付きではあるが、後から分割払いへの変更も可能(今回のダイナテックの導入では現状非対応)

3,100の国内ホテルが対応、キャンセル料を100%保証
 Paidyを運営するエクスチェンジコーポレーション代表取締役会長のラッセル・カマー氏は、Paidyについて、「事前の申し込みが不要で、完全ペーパーレス。さらに、分割払いや柔軟な返済チャネルといった、クレジットカードの良いフィーチャーを取り込んだ」と自信を見せる。「クレジットカードを使おうとしない若い人たちは、『カード番号は危ない』、『審査が大変』と感じているが、Paidyはそのどちらも不要なので、強い」
 ファッション系のECサイトを中心に70万店舗の加盟店と、110万のユニークアカウント数を有するPaidyだが、同社が次に狙うのがトラベル分野だ。
 新たに提携したダイナテックは創業31年目を迎える老舗のホテル向けシステム提供会社で、約3,100の国内ホテル・旅館に対して予約エンジン「ダイレクトイン」を提供している(写真③)。2015年にヤフーの傘下に入ったことでYahoo!トラベルとの連携が可能になり、それまで弱かった「集客」についてもサービス提供できるようになったという。

写真③ ダイレクトインを導入しているホテルチェーン

 この「ダイレクトイン」を導入している3,100の国内ホテル・旅館で今後、Paidyが利用できるようになる。
 ダイナテック代表取締役社長の齋藤 克也氏は、Paidy対応への期待として「事前決済の重要性」を挙げた。「宿泊施設側の悩みとして、お客に現地での現金払いを選択されると、施設をキャンセルされた際でもなかなかキャンセルフィーを徴収しにくいとの事情がある。
 事前カード決済の比率も現地決済に対して徐々に上がってきてはいるものの、現在の30%前後で頭打ちととらえている(写真④)。欧米では7〜8割が事前決済とも言われており、その点でもPaidyに期待したい」(同・齋藤氏)
 キャンセル料については100%保証、とエクスチェンジコーポレーションがうたっている点もホテル・旅行業界にとっては魅力に映っているようだ。

写真④ 全Web予約中における「現地決済」と「事前カード決済」の比率(エクスチェンジコーポレーション調べ)

物販での与信率は9割強、貸金・店舗決済にも進出意欲
 Eメールアドレスと携帯電話番号だけを拠り所として「与信」を行っている同社だが、現在までの物販中心の導入では、その与信率は9割強に上っているそうだ。これに今後、トラベル分野が加わることでどのような影響が出るかは未知数だが、「当社の与信システムは日々AIで学習しているので、ユーザーの傾向をつかんで対応していける」(エクスチェンジコーポレーション営業本部長 執行役員の橋本 知周氏)と自信をのぞかせる。
 なお、Paidyの決済手数料については非公表だが、「クレジットカード以外の代引きやコンビニ払いなどの手数料を参考にして決めている」(同・橋本氏)という。
 これまでの「ネットショッピング」に続き、今回の提携で「トラベル」を事業領域に追加した同社だが、今後の拡張計画として、レンディングなどの「金融サービス」や、「店頭ショッピング」にも進出していきたい考えを表明している(写真⑤)。クレジットカードではない「後払い」の事業可能性をどこまで広げていけるか、これからの手腕を見届けたい。

写真⑤ 今後の事業拡大計画

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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