「博物館や美術館を応援したい」ファンのためのエポスカードが登場、12の券面デザインで利用金額の0.1%が寄付になる

近年、「『好き』を応援するカード」のラインアップを強化しているエポスカードから、新企画となる「ミュージアム エポスカード」が登場した。丸井グループの社内コンクールから生まれたというこの企画。いずれも美しいデザインが特長のこのカードに、発案者が込めたミュージアムへの思いとは?

「『好き』を応援するカード」の延べ会員数は101万人に

 丸井グループは3月21日、独立行政法人の国立美術館、国立文化財機構、国立科学博物館と共同で「ミュージアム エポスカード」を同日から発行開始したと発表した。券面のデザインに3法人が運営するミュージアム(博物館、美術館)の美術品や文化財、展示物を採用した。
 券面デザインは各法人ごとに4種類がラインアップされ、合計で12種類のカードを用意する(写真1)。カードの発行主体はエポスカード。年会費は永年無料で、国際ブランドはVisaのみ。同日からカード申込受付を開始しており、マルイ/モディのカードセンターや関連イベント、エポスカードのWebページから申し込みすると1週間ほどで手元にカードが届く。

写真1 「ミュージアム エポスカード」は全12種類の券面デザイン。タッチ決済にも対応する

 丸井グループでは近年、「『好き』が駆動する経済」(画面1)を標榜しており、とりわけカード事業では「『好き』を応援するカード」として、アニメやゲーム、エンタメなどとのコラボカードのほか、自分のペットの写真をカード券面にできるペットカードなどの「オンリーワンカード」に力を入れている。その数、2024年9月時点では88企画に上り、延べ会員数は101万人を超えた。
 「あわせて当社社員の『好き』も、仕事に生かせないかと始めたのが今回の取り組みになる」(丸井グループ・常務執行役員 CDOの相田 昭一氏/写真2

画面1 「『好き』が駆動する経済」では、好きなものに対する感情や価値が重視され、コスパとは正反対、対極に位置付けられるという

写真2 丸井グループ・常務執行役員 CDOの相田 昭一氏

 丸井グループでは昨年から全社員参加型のコンクールを実施し、自分の「好き」を事業化するアイディアを社内から募る取り組みを始めた。今年の2月に実施した2回目のコンクールにはアルバイト社員やインターンを含めた210名から応募があり、大盛況だったという。
 この1回目のコンクールで今回の「ミュージアム エポスカード」を提案したのが新宿マルイに勤務する三橋 真唯さん(写真3)。カードの企画や販促に従事した経験もない彼女が提案したのが、日々のカードの利用が、寄付の形になって、美術館と博物館の運営に寄与できるクレジットカードだった。
「最大の特長は、日常の買い物などで貯まるポイントの一部がミュージアムに寄付されること。私は気持ちが沈んだときに、ミュージアムを訪れて心を動かされることが何度もあった。私がミュージアムから受け取ったものをお返しするために、また同じことを感じている人たちと一緒に応援できたらいいなと考えて提案した」(三橋さん)

写真3 丸井グループの社内コンクールで「ミュージアム エポスカード」を提案した三橋 真唯さん

カード新規入会1件ごとに、エポスカードが1,000円を寄付

 文化を将来世代へ継承するためにも必要な施設と位置付けられる美術館や博物館だが、近年の光熱費高騰や増え続ける所蔵品の維持管理により経費の増大が避けられないなど、運営や経営を取り巻く環境は決して明るくない。例えば今回プロジェクトに参加する国立科学博物館でも、2023年8月に実施したクラウドファンディングや、現在も継続するマンスリーサポーター制度といった取り組みから、苦しい台所事情が垣間見える。
 そこで「ミュージアム エポスカード」では、カードの発行や利用に応じてミュージアムへ寄付が行われる仕組みを用意した。具体的には、カードの新規入会1件ごとに、カード券面デザインを提供するそれぞれの法人に対してエポスカードが1,000円を寄付する。
 また、カード利用時には会員に対して利用金額の0.5%(200円につき1ポイント)分のエポスポイントが付与されるが、そのうちの0.1%分をカードの券面デザインに応じた3法人へエポスカードが寄付する。その結果、カード会員には0.4%のポイント還元となる。

写真4 日本全国で7つのミュージアムとセンターを運営し、年間400万人ほどの来場客を受け入れている国立美術館の小松 弥生氏(東京国立近代美術館長)。「頂戴した寄付金は鑑賞者の皆さんが、より楽しんで作品をご覧いただけるように丁寧に使わせていただきたい」

写真5 国立博物館(東京、京都、奈良、九州)と皇居三の丸尚蔵館の5つの博物館を設置するほか、計8つの施設を通じて文化財の保存と活用を図っている国立文化財機構・理事の水田 功氏。「(今回のミュージアム エポスカードの発行を受けて)ミュージアムを愛する皆さんに支えていただいているんだな、と感じている」

写真6 国立科学博物館の理事・副館長を務める栗原 祐司氏。「修学旅行の子たちや、ご父母や祖父母さまに連れられたお子さんたちにご来館いただけているが、20〜30代となるとお忙しくてなかなか足を運んでもらえない。そういう方たちをターゲットにしてこのような企画を打っていただいたことは嬉しい。国の予算も減る中で、企業から支援いただくご提案は本当にありがたいこと」

写真7 写真左から順に、丸井グループ 常務執行役員の相田 昭一氏、国立美術館 東京国立近代美術館長の小松 弥生氏、新宿マルイの三橋 真唯さん、国立文化財機構 理事 水田 功氏、国立科学博物館 理事・副館長 栗原 祐司氏

「エポスカードは1人1枚の発行」の枠を超えたくなる豊富なラインアップ

 それでは、ここで3法人×4種類=計12種類となったカードの券面デザインをご覧いただこう(画面2〜4)。誰もがよく知るあんな絵画や文化財がバラエティ豊かにカードを彩っている。
 そうなると、ミュージアムファンとしては個人的に愛着が強いあの絵画や作品も、今後カードにしてほしいと願いたくなってくる。スタートしたばかりで恐縮だが、今後のラインアップ拡大予定を聞いてみた。
「(今回の12種類は)私の発案と、各館とご相談しながら決めた。デザインを増やすことについては私も同じ思いだが、現段階では各4種類から始めて、今後も『周年記念』などのタイミングで増やしていけたらと思う」(三橋さん)
 一方で、エポスカードから発行されている「『好き』を応援するカード」のラインアップが充実すればするほど、利用者のほうでは「あのカードだけでなく、このカードも持っておきたい」との思いが募るのもうなずける。今後、エポスカードを1人で複数枚持てるようになる可能性はあるのだろうか?
「現在は仕組み上、お1人1枚の発行になっている。ただ、他のカードも含めてご要望を頂いているので、今後はそうしたこともできるように検討していきたい」(相田氏)
 エポスカードの複数枚持ちを切望するユーザーの皆さんは、もう少しだけ辛抱のしどころかもしれない。

画面2 <デザインラインアップ> 国立美術館

画面3 <デザインラインアップ> 国立文化財機構

画面4 <デザインラインアップ> 国立科学博物館

画面5 入会後3カ月以内に3万円(税込み)以上カードを利用すると、選んだ券面デザインに応じた特典がプレゼントされるという嬉しい企画も

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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