三井住友カードと関西エリアの鉄道事業者5社は10月28日、大阪市内で「関西鉄道利用エリア拡大発表会」を開催し、翌29日から4事業者が新たに対応を開始する「タッチ決済乗車」サービスの概要と今後の展望について紹介した(写真1)。同日時点でのstera transitの採用事業者数は31都道府県の133事業に上り、今後も日本全国で拡大する見込みだ。
Mastercard対応は来年4月までの実現目指す
この10月29日から、いわゆる「タッチ決済乗車」サービスの関西鉄道エリアにおける利用範囲が大きく広がった。同日から大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)、近畿日本鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道の4社が三井住友カードが提供する公共交通機関向けソリューション「stera transit」を採用し、一斉にサービスを開始。関西エリア(一部東海エリアを含む)で新たに548駅での利用が可能になった(写真2)。
2021年4月から関西鉄道エリアで先行導入していた南海電気鉄道を含め、すでにタッチ決済乗車サービスを提供中の8社局(大阪モノレール、神戸電鉄、京都丹後鉄道、神戸六甲鉄道/六甲ケーブル、神戸市営地下鉄、泉北高速鉄道、神戸新交通、南海電気鉄道)に加えて、前記の4社が対応したことで、同エリアにおける対応社局数は12まで拡大した。今後もタッチ決済乗車が利用可能な路線や駅は拡大予定で、2025年春にはさらに多くの路線・駅で利用できるようになる見込みだという。
なお、タッチ決済乗車は、各鉄道事業者をまたがる相互直通利用にも対応している(画面1)。タッチ決済乗車に対応するのはクレジットカードだけでなく、デビットカード、プリペイドカードにも対応する。また媒体の提供形態では、プラスチックカードに加えて、スマートフォンに搭載するモバイル型(Apple Pay、Google Pay)にも対応する(画面2)。
国際決済ブランドは、Visa、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯の6ブランドに対応するほか、Mastercardについても現在調整を進めており、三井住友カードによると、2025年4月までに利用可能とすることを目指しているという。
先行導入の南海電鉄ではアジア訪日客の利用数増
10月28日に大阪市内で開催された「関西鉄道利用エリア拡大発表会」に登壇した大西 幸彦・代表取締役社長 兼 最高執行役員は、タッチ決済乗車の利用傾向として、「(stera transitは)大阪・関西万博で世界中の方が来られるときにぜひ使っていただきたいサービスだが、地域の皆さまにとっても日常的に便利にご利用いただけるもの。(実際に)stera transitでは国内の乗客利用が9割占めている」と初めて明かした。
特に訪日観光客(インバウンド)からの需要が大きいと言われてきた「タッチ決済乗車」に関して、足元の状況としては、交通系ICカードを日常的には利用せず、都度、切符を購入して乗車するような利用者を含めて、日本のユーザーの支持を一定数集めていることが判明した格好だ。
ただ、インバウンドの利用も最近では増加傾向にある。2021年4月から対応を始めた南海電鉄では、「現状は国内のお客が大勢を占めている」と認めた上で、「しかし最近ではアジア、特に韓国の方の利用が伸びてきており、利用者数の増加に期待している」(南海電気鉄道・取締役 常務執行役員 鉄道事業本部長の梶谷 知志氏)として、大阪・関西万博に向けて盛り上がる来日ムードに期待を寄せる(画面3)。
三井住友カードが提供するstera transitに対応する交通事業者は、関西エリアに限らず、日本全国で拡大局面にある(画面4)。10月28日時点での採用事業者数は31都道府県の133事業に上っており、これが2024年度末までに36都道府県、2025年度末には42都道府県へと広がる見通しだ。
三井住友カードによると、2024年度末までに、すでに導入済みの大手民鉄など16社と公営地下鉄8社の駅の約52%がタッチ決済乗車に対応し、2025年度末までに70%まで拡大する予定としている。