【写真で見る】関西私鉄共通のQRコード乗車券「スルッとQRtto」が6月17日にサービスイン、スルッとKANSAI加盟の7社や提携施設がデジタルチケットに対応

スルッとKANSAI協議会は6月17日、QRコード乗車券サービス「スルッとQRtto(クルット)」の提供を開始したと発表した(写真1)。同協議会に加盟する鉄道・バス事業者が共通に利用できるサービスで、スマートフォンからサイバネ規格のQRコード乗車券が購入でき、チケットレスで電車やバス、観光施設などが利用できる広域型のデジタルチケットサービスとなる。

写真1 6月17日には阪神電車・大阪梅田駅でオープニングセレモニーが開催された。テープカットの模様(提供:スルッとKANSAI)

アプリレスですぐに使える、Webだけで購入からQRコードの表示までカバー

 6月17日からは、Osaka Metro、大阪シティバス、近畿日本鉄道、京阪電車、南海電鉄、阪急電鉄、阪神電車の7社で利用できるほか、提携する観光施設にも同サービスを使って入場できる(画面1、2)

画面1 「スルッとQRtto」のホームページ

画面2 6月17日から「スルッとQRtto」対応のデジタルチケットを販売する交通事業者(7社)(出典:スルッとQRttoのホームページ)

 スルッとQRttoを使うには、まず公式ウェブサイト上で会員登録を行う必要がある。といっても手順は簡単で、メールアドレスとパスワードを設定し、利用規約とプライバシーポリシーに同意。メールアドレスを認証することでアカウント登録が完了する。
 その後、氏名や連絡先などを登録すると、チケットが購入できるようになる。メニューから「チケットを購入する」を選択して、希望するチケットを表示する。キーワードや路線での絞り込みも可能だ。
 希望するチケットが表示できたら、注意事項を確認の上で、券種と購入枚数を入力する。次に決済画面に遷移するが、Visa、Mastercard、JCB、AmericanExpress、DinersClubの5ブランドのクレジットカードが使える。カード情報などを入力すれば、チケットの購入は完了だ(画面3)。領収書の発行にも対応しており、チケット画面の右上にある「領収書発行はこちら」から進み、購入済みチケット分のインボイス制度に対応した領収書が発行できる。

画面3 スルッとQRttoの会員登録からデジタルチケットの購入まで、すべてスマートフォンのブラウザ上で行うことができる

 乗降時には同じくスルッとQRttoのメニューから「チケットを使う」を選択して、QRコード乗車券をスマートフォンの画面に表示する(画面4)。その画面を改札に設置されたQRコードリーダーにかざして読み取らせた後に、改札を通過すればよい(写真2)

画面4 QRコード乗車券を表示したところ。利用開始後はステイタスが「入場」等に変わる(写真は一部加工しています)(右の画面)

写真2 鉄道の乗降時には、スマートフォン画面に表示されたQRコードチケットを、専用のQRリーダーにかざして読み取らせる(写真は一部加工しています)(提供:スルッとKANSAI)

 自身の分のチケットだけを購入して利用する使い方以外に、スルッとQRttoでは複数名分のチケットを代表者が購入しておくパターンにも対応している。まとめて購入したチケットは、Eメールなどを介して他の人に分配したり(画面5、受け取る人はスルッとQRttoサイトへの会員登録が必要)、代表者が全員分のQRコードを表示しながら順番に複数名が改札を通過していくような使い方も可能だ。この場合、チケットを購入した人が最後に改札を通過する運用となる。

画面5 まとめて購入したチケットは他の人への分配もできる(出典:スルッとQRttoのホームページ)

 このように、スルッとQRttoのサービスはブラウザから利用可能な「Webアプリ」により提供されている。スマホに専用アプリをダウンロードする必要がない点で、利用者にとっては敷居の低い仕組みになっている。
 スルッとQRttoのシステム開発は、本社を札幌市に置くウェルネットが担当した。ウェルネットでは、
 ・QR乗車券を購入・表示する専用ウェブサイト
 ・改札機と連動したQR乗車券の判定システム
 ・駅係員様向けの専用アプリ
を「オールインワンクラウドサービス」として提供し、システム全体をサポートする役割を担っているという。

バスや提携施設では掲出されたQRコードを読み取る

 前述の通り、鉄道での利用はスマホ画面に表示したQRコード乗車券を改札機にかざして読み取らせるCPM(利用者提示)方式が採用されているのに対して、バスや提携施設での利用方法は鉄道とは操作が反対になる、いわゆるMPM(加盟店提示)方式となっている。
 同じスルッとQRttoのメニュー画面から、MPMに対応したチケットを選択すると(画面6、この例では「Osaka Metro・大阪シティバス 1日乗車券」で「大阪シティバス」のタブを選んでいる)、スマホのカメラが起動してQRコードの撮影画面に切り替わる。この状態で、バスの運賃箱をはじめとしてバス車内のあちこちに掲出されたQRコードステッカーを探して、スキャンする(写真3)。正常に読み取りが完了すると、認証成功画面が表示されるので、これを乗務員に確認してもらえばよい。

画面6 カメラが起動するので、車内に掲出されたQRコードをスマホで読み取る

写真3 バスで利用する際には、車内に掲出されたQRコード( ※赤い円で示した箇所)をスマホカメラで読み取り、認証成功画面を乗務員に確認してもらう運用になる(写真は一部加工しています)(提供:スルッとKANSAI)

 提携施設で利用する場合も、バスと同じ使い方で、施設の入り口などに掲出されたQRコードをスマホのスルッとQRttoを用いて読み取る動作となる。例えば、Osaka Metroをはじめとした大阪エリアの電車・バスが乗り放題で、大阪城や通天閣など約40の施設に入場が可能となる「大阪周遊パス」の場合には、「施設利用」のタブが表示されているので、これを選択することでカメラが起動する流れだ。
 海外では「Osaka Amazing Pass」の名称で販売(画面7)されているこのデジタルチケットを使えば、スマホだけ持っていればチケットの発券も不要、当日券を買うためだけに自動券売機の行列に加わる必要もない(写真4〜6)。とにかく観光のための時間が惜しい訪日外国人にとっても、スルッとQRttoのデジタルチケットはメリットが大きい仕組みといえる。

画面7 旅行予約サイトで販売されているデジタルチケットの例(出典:Klookのホームページより)

写真4 外国人にも人気スポットである大阪城の「天守閣」。「大阪周遊パス」をスマホからデジタル購入しておけば、当日券購入待ちの行列に並ばずにスムーズな入城が可能(写真は一部加工しています)(提供:スルッとKANSAI)

写真5 大阪城天守閣の入口付近に設置されていた訪日外国人向けの「大阪周遊パス」紹介掲示物( ※赤い円で示した箇所。写真は一部加工しています)(提供:スルッとKANSAI)

写真6 提携施設の入場口付近に掲出された「大阪周遊パス」のQRコード( ※赤い円で示した箇所。写真は一部加工しています)(提供:スルッとKANSAI)

交通系ICカード「PiTaPa」は誕生から20周年で、記念イベントが続々

 なお、スルッとKANSAI協議会が展開する交通系ICカードの「PiTaPa(ピタパ)」は、2004年のサービス開始から今年の8月1日付けで20周年を迎える。日本で唯一のポストペイ方式(スルッとKANSAI協議会加盟事業者とJR西日本のポストペイエリアでは、銀行口座に紐づいた後払い式でチャージの必要がない)による交通系ICカードで、2024年3月末時点のPiTaPa会員数は約335万件に上る。
 PiTaPaはスルッとKANSAI協議会加盟の59の鉄道・バス事業者に加えて、日本全国の交通系ICカード導入事業者でも使えるほか、対応するPiTaPa加盟店、約6万店舗でのショッピングにも利用できる。
 20周年を記念して、2024年8月1日の当日に記念式典を大阪市のなんばCITYガレリアコートで開催するのを皮切りに、20周年キャンペーンの実施やPiTaPaオリジナルグッズの発売(写真7)、PiTaPa20周年記念ヘッドマークの掲出などの企画が予定されている。
 この夏、「スルッとQRtto」をお目当てに関西へ足を運ぼうという読者の皆さんは、これらのイベントも要チェックだ。

写真7 オリジナルグッズには、PiTaPaカードとICリーダーを模したカプセルトイのラインアップも!(出典:スルッとKANSAI協議会の報道発表資料より)

 

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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