メルカリは3月9日、メルカリアプリ内でビットコインの売買ができる新サービスの提供を開始した。メルカリアプリから、メルペイ残高やメルカリの売上金などを使って簡単にビットコインの売買をできるようにすることで、暗号資産取引にライトユーザー層の引き込みを図り、日本の暗号資産マーケット自体の底上げを狙う。
利用手数料なし・売買時に「スプレッド」がかかる
今回の暗号資産取引サービスは、メルカリの子会社で暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行うメルコインが同日より開始した暗号資産交換業を通じて提供される枠組みとなる。3月9日からは、暗号資産ビットコインの売買に対応。暗号資産取引に関してライトなユーザー層の取り込みを狙うため、まずはビットコインから対応を始めるが、ユーザーの利用動向なども踏まえて今後はビットコイン以外の暗号資産についても対応を検討する。
従来から提供してきた「メルカリ」アプリのバージョンアップを通じて新サービスを提供する(画面1)。3月9日から段階的に申し込み、利用が可能になる。利用には審査があるほか、20歳未満と75歳以上のユーザーは利用ができない。
また、利用にあたって、①メルカリアプリのアカウント登録、②生体認証の登録、③本人情報の確認(eKYC)、が必要になる。セキュリティ強化の観点から、②の生体認証ではFIDO認証仕様に基づく生体認証を採用した。
最小注文額1円からビットコインが購入でき、24時間365日(メンテナンス時間:毎週水曜日13:50〜16:03を除く)を通じて売買が可能。
ビットコインの購入方法は、メルペイ残高からチャージして購入できるほか、メルカリの売上金での購入、メルカリポイントでの購入、の3種類に対応。売買時の金額は日本円で入力する。また、どの購入方法でもいったん取引口座の「チャージ残高」に移してから、ビットコインの売買を実行する流れとなる(画面2)。
ビットコインの売買に際して利用者に手数料はかからないが、ビットコインの売買時に「スプレッド」と呼ばれる売値と買値の差額が上乗せされる仕組み。その具体的な金額は「片側1%程度。両側で2%程度と、業界でも安い水準になっている」(メルコイン・CPOの中村 奎太氏)という。
4,800万の全メルカリユーザーに暗号資産取引の体験を
メルカリで執行役員 CEO Fintechを務める山本 真人氏は、日本における暗号資産の展開では、口座保有者の絶対数が少ないことが課題と指摘する。「現在の640万口座(2022年12月次のデータ。一般社団法人日本暗号資産取引業協会調べ)は、ネット証券の取引口座数3,900万口座と比べても、限定的といわざるを得ない」
こうした状況に対し、累計利用者数約4,800万を誇るメルカリユーザーの保有する売上金を暗号資産に流入させることで、保有者増につなげようというのがメルカリの狙いだ(画面3)。
アプリを通じて気軽に暗号資産に触れてもらう機会を作り出すほか、メルカリならではの特性にも着目している。「暗号資産でハードルとなっている部分に、投資したお金が減るかもしれないといった不安と、安心・安全の観点がある。一方で、不要になったものを売って得られるメルカリの『売上金』には、給与や預金とは異なるお金を使う感覚があり、シナジーがあると考えられる」(山本氏)
メルカリでは今後、暗号資産取引サービスの拡張形として、他取引所との交換(入出庫)や、利用者間での送金、決済への直接利用なども検討していく。