共通ポイントの「Ponta(ポンタ)」を2010年3月から展開するロイヤリティ マーケティングは6月9日、報道陣向けにセミナーを開催し、KDDIとの業務資本提携、au PAYとのサービス連携開始によって変化した直近2年間の展開状況を振り返った。ますます熾烈さを極める共通ポイントのサービス競争の中にあって、Pontaが目指す世界とは?
月間の取引件数は提携前の約2倍に
ロイヤリティ マーケティングとKDDIの業務資本提携、つまり共通ポイントのPontaと、通信会社が提供するスマホ決済au PAYのサービス連携が発表されたのは2019年12月のこと。2020年5月にはKDDIがauのポイントサービス「au WALLETポイント」をPontaへ移行し、共にオレンジ色をサービスカラーに据えるポイントと決済の連携が始まった(画面1)。
au WALLET ポイントが共通ポイントのPontaに来春統合へ、KDDIはローソンと提携で「ウォレット」の陣取り合戦に挑む | 電子決済マガジン
この大型アライアンス開始を受けて、月間の取引件数は提携前の約2倍にまで伸長(2020年4月と2022年3月の比較)。特に、PontaのIDとau PAYのIDを紐付け登録した「ID連携会員」では、Pontaの提携先サービスの利用増加が顕著だという(画面2)。
また、これらの傾向は片方向でなく、Ponta会員のau PAY利用に対しても大きな効果が見られるという。例えば、利用しているスマホ決済手段として「au PAYを使う」と答えたPonta会員は提携前の2倍にまで広がり、「au PAYをメインのスマホ決済手段としている」Ponta会員は2.7倍となった。Ponta IDを連携したユーザーのほうがau PAYをよく利用する傾向にあるとのアンケート結果も出ている(画面3)。
ポイントと決済、両アプリをシームレスに連携
Pontaの会員数は2022年4月末現在で1億729万人。特に単年度の増加数を見ると、提携前(2019年5月〜2020年4月)の年間純増数が336万人だったのに対して、提携直後(2020年5月〜2021年4月)の年間純増数は640万人とほぼ倍増。直近(2021年5月〜2022年4月)の数字でも556万人増と高い水準を維持している。
一方、加盟店の数も順調に増加しており、141社・26万店舗(2022年5月1日現在)まで拡大した。
こうした躍進の背景には、「Ponta」(ポイント)と「au PAY」(決済)のアプリ間連携もある。今年の1月にはアプリをリニューアル。お互いのアプリ画面から、あらためてアプリを起動し直さなくても、両サービスのバーコードやQRを表示できるようにした(画面4)。
ロイヤリティ マーケティングでPontaの営業およびプロダクトの責任者を務める野田 和也 常務執行役員(写真1)は、協業先となったKDDIとの関係性について「まさに連合体といえる。加盟店開拓でも2社が共同で動くものが多くなってきている」と語る。ロイヤリティ マーケティングとしては、Ponta会員の属性や購買データを起点とした加盟店のマーケティング支援にも力を注いでいるが、その点にも両社の協業は広がりつつあるという。
「Pontaで貯まったデータを分析しつつ、企業の課題解決に取り組んでいるが、その中にはポイントと決済が密に重なってくる点での課題もある。そうした際には、入り口はわれわれであったとしても、2社で連携して対応していく」(野田氏)
「共通ポイントの格差は今後なくなっていく」
セミナーの中では、ポイントビジネスに詳しい野村総合研究所・コンサルティング事業本部 CXコンサルティング部 IDエコシステムグループ・グループマネージャーの冨田 勝己氏(写真2)がゲスト出演し、Pontaを含めた共通ポイントを取り巻く国内の動向を紹介した。最近の状況変化として、「ポイントの有無によってお店を変える消費者」が従来は2割以上存在していたのに対し、直近のアンケートでは2割を切って15%ほどにまで落ち込んでいることに着目。つまり、ポイントの消費者の行動変容を変える力が弱まっていると見る。
その理由について冨田氏は、2019年から2020年にかけて実施されたキャッシュレス還元事業などをきっかけとして、お店の利用に対してではなく、キャッシュレス決済の利用で貰えるポイントの還元率が高騰したことを挙げる。そもそもそれ以前の水準では、お店が付与するポイントの還元率は「0.5〜2%」程度だったのに対して、クレジットカードなどキャッシュレス決済によって付与されるポイントは「0.5〜1%」と見劣りする内容だった。これがキャッシュレス決済の利用でも「2%」や「5%」といったそれまでとは桁違いのポイント還元が台頭してきたことで、「消費者の態度変容に必要なポイント数の水準が上がってきた」(冨田氏)。その結果、相対的にお店が付与するポイントの魅力が低下している可能性があるという。
そこでポイントプログラムに求められるのは「企業側の創意工夫」。例えば、インセンティブの提供においても「ステータス感」や「ならでは感」といった金銭価値ではない施策であったり、スマホアプリを活用して会員との接点を購買時点のポイント利用だけにとどめない工夫、さらには会員の属性や購買に関わるデータを活用した商品企画、販売促進などの施策立案と実行が重要になってくるそうだ。
「Tポイントのヤフー、ソフトバンクとの提携終了や、PayPayポイント(旧PayPayボーナス)の参入などの影響もあり、共通ポイント同士の格差は縮まってきている。おそらく、年間で発行しているポイント数などの面でも各陣営の差はなくなっていくので、今後は『コンタクトスケール(顧客接点の豊富さ)』や『プランニングスケール(加盟店の利益への貢献)』が競争の主要因となっていくのではないか」(冨田氏)
将来的にはメタバースなどの仮想社会にも融合目指す
翻ってロイヤリティ マーケティングでは、最近の施策として、日常の顧客接点を増やすことに注力している。その1つは、まさに通信キャリアであるKDDIとの関係を生かしたSMSなどとの連動。すでに「+メッセージ」を通じてPontaポイントが貯まるサービスも提供しているほか、新ソリューションも開発中だという(画面5)。
また、アプリ提供を通じてSDGsへの貢献を訴求する。今年4月にリリースした「Green Ponta Action」(画面6)では、さまざまなSDGsアクション達成に対してPontaポイントを付与する仕組みを提供し、ユーザーのSDGsへの関心を高めるきっかけにもなっているという。
メタバース(ロイヤリティ マーケティングは業界団体の日本デジタル空間経済連盟に加盟)やNFTといった新技術や新しい社会環境にも大いに注目しており、中長期的には1億人超の「Ponta経済圏」をこれらの世界に対応させていきたい考えだ(画面7)。