グループ会社を含めて経費管理を一元化、対象は12万人
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.(以下、「AMEX」という)は11月18日、富士通が同社の「アメリカン・エキスプレス・コーポレート・カード」を全世界で採用し、世界最高水準の経費管理体制構築に向け、すべての富士通およびグループ会社の経費管理を一元化することになったと発表した。
富士通は全世界約12万6,400人の従業員を対象に単一の経費精算・管理を行い、経費のDX化を戦略的に推進する。現在、経費精算方法や経費データは社内や国単位で別々に管理されているが、今後はこれらを一元管理し、従業員の経費精算の効率化および経費データの分析の効率化を図るという(画面1)。
またAMEXは、自社のコンサルティングサービスを富士通に提供することで、主要な経費項目における業界や競合との経費のベンチマーク分析や経費のコンプライアンス分析を通して、富士通の経費管理の高度化やガバナンスの強化をグローバルで支援していく。
経費精算をDX化する意義は、利便性や効率化だけではない
AMEXは同日に記者説明会を開催し、日本の中堅・大企業を対象とした経費管理の最新動向に関する意識調査結果を発表した(インターネット調査、実施期間は2021年10月8日〜10月11日)。国内年商4億円以上の中堅・大企業で、海外拠点を有している、または進出意欲がある日本企業が対象。
調査の結果、多くの経営層は、経理部門のDX化に関し企業成長戦略において電子決済や請求・契約処理のポジティブな関係を認識しているものの、DX化の目的は利便性や効率化に偏っている。海外でのビジネス拡大を狙う中、海外取引において重要となるコンプライアンスやガバナンス、またサステナビリティを優先順位に置いた企業はまだ少数、との結果になった。
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. 法人事業部門 副社長の須藤 靖洋氏は、「コロナ禍による環境変化の中で、経費精算のDX化はまさにいま加速中といったところ。これに改正『電帳法(電子帳簿保存法)』の施行も追い風になる。日本企業がこれから世界と戦っていく上で、グローバルスタンダードは非常に大事。このことを経営者にご理解いただけるように、今回の富士通様との提携のような事例を数多く発表していきたい」と意気込みを見せた。
調査結果の主なトピックは以下の4点。
1.日本企業の83%が経理部門DX化で海外取引増加に期待
DX化が海外での取引先の増加、または開拓につながるとの認識で、ポストコロナにおける業績の回復・拡大に際し、海外との取引拡大に期待している。
2.DX化の進捗は経理部門が他部署を上回るものの、電子帳簿保存法への対応は約半数のみ
DX化の取り組みについて進捗率を聞いたところ、経理・財務・会計部門の平均が50%となり、人事・労務、広報・宣伝、営業・販売など他の業務領域と比べて高く、会社全体の平均46%を上回った。また、経費精算の実務におけるDX化に関連して、電子帳簿保存法への対応については企業によって差が出ており、これからの対応といえることがわかった(画面2)。
3.利便性や効率化に偏った経理DX化と海外取引のコンプライアンスやガバナンスのリスク
コロナ禍や、ポストコロナの接待や出張など増加の可能性を踏まえ、「現在、または今後、御社の出張規定等の規約を改訂等する予定はありますか?」という問いに対しては、日本企業の68%が「改訂した、もしくは改定する予定がある」と回答した。
また、経理部門のDX化の必要性や重要性に対する意識調査では、経営層の約半数が「ペーパーレス化(52.3%)」、「経費精算の効率化(46.7%)」を筆頭に挙げ、上位項目は利便性や効率性に偏っていることが明らかとなった。
一方、DX化によるデータ可視化で実現できる「支店や海外拠点の粉飾の防止(21.7%)」や「贈収賄や資金洗浄などの抑止(19.0%)」といった不正におけるコンプライアンス項目を選択する経営層は少ないことがわかった(画面3、4)。経理部門のDX化は、世界標準のコンプライアンスやガバナンスを目指す日本企業の成長戦略の中で、限定された役割にとどまっていることを示す結果といえる。
4.取引先選定でサステナビリティ重視するのは3割程度、ESG変革が進む海外と温度差
海外においてはサステナビリティの点から取引先の選定や管理が進む中、「取引先の選定・管理においてCO2の削減を条件としますか?」という問いに対し、「はい」と答えたのは40%、また「地球温暖化や大気汚染防止は取引先の条件となりますか?」と答えた経営層は30%との調査結果だった。また、ペーパーレス化に関しても、取引先への支払い方法において抜本的な業務プロセスの見直しや変更予定がある企業は3社に1社のみとなった。
一方、サステナビリティを重視する、という取引先の選定や管理をする上でCO2削減、地球温暖化や大気汚染防止といったサステナビリティの意識も高いといった特徴が確認された。