「日本のフリーランスはもっと世界で活躍できる」、ペイオニアが世界と日本の「個人の働き方」を比較レポート

世界150以上の通貨に対応した、外貨受け取り用のオンラインアカウント(口座)を提供するペイオニア(Payoneer)は2月14日、東京都内で記者説明会を開催し、先に同社がまとめたグローバル調査「フリーランス収入レポート2020」と、日本のフリーランスの実状を比較した結果を公表した。海外企業も多いクラウドソーシングからフリーランサーが得る報酬の受け取りを、短期間で廉価に可能とするアカウントサービスを提供するペイオニアの調査結果から、日本のフリーランサーには越境ビジネスを拡大していける余地があることがわかったという。

日本のフリーランサーは「高齢層」が「人脈で仕事を受注」する傾向

 ペイオニア(Payoneer)が2月5日に発表した「フリーランス収入レポート2020」は、世界150カ国約7,000人のフリーランサー(個人事業主や個人企業)を調査対象としてまとめたグローバル調査。この調査結果に対してペイオニア・ジャパンが、日本国内を対象としてまとめられたレポート(「フリーランス実態調査【ランサーズ】」、「フリーランス白書【フリーランス協会】」、いずれも2019年版)の内容を重ね合わせたところ、世界と日本とで異なる傾向が浮かび上がってきたという。
 例えば、フリーランサーの主な年齢。グローバル調査では35歳以下が全体の70%を占め、36歳〜44歳が20%、45歳以上が10%と、圧倒的に若年層主体であることがわかった。しかし、日本では30代以下の若年層は33%にとどまり、40代が24%、50代以上が何と43%と最多を占める結果だった(写真1〜3)

写真1 フリーランサーの「年齢」分布に関する調査結果

写真2 フリーランサーの「男女比率」にも差が見られた。グローバル調査の結果が男性76%:女性24%だったのに対して、日本では女性が全体の37%と、少し高めの傾向が表れている。会社を退職した女性が、翻訳や事務などの仕事に取り組んでいるという例も多い

写真3 働き方と満足度の比較。グローバル調査では「家で働くこと」が満足度に貢献しているが、日本では「時間や場所に縛られない」ことへの期待が高い

 ジェーシービー(JCB)で海外加盟店獲得や規制関連プロジェクトに携わった後、多通貨プリペイドカードのシステム開発にも携わった経歴を持つ、ペイオニア・ジャパンの岡本 王湖カントリーマネージャー(写真4)は、この違いを生む要因はフリーランサーの「仕事の探し方」にあるのではないかと分析する。「世界ではクラウドソーシングの活用が進んでおり、リモートワークであってもオンラインで依頼主を探すのが一般的。対して日本では、会社で経験を積んだ方が、人脈を使って仕事を取ってくるスタイルが多いのではないか」

写真4 ペイオニア・ジャパン カントリーマネージャーの岡本 王湖氏

 売上を伸ばす販促や受注拡大の手段として、オンラインの活用度合いにも差が表れた。グローバル調査では、Facebook、LinkedIn、インスタグラムなどソーシャルメディアを活用する実態が浮き彫りになったが、日本では人脈活用が55%で最多。クラウドソーシングやSNSの活用はいずれも17%ほどにとどまった(写真5)。「日本では若い方が少なく、オンラインやソーシャルメディアの活用度合いが低い。これが世界との差分。逆に言えば、日本のフリーランサーは、越境でビジネスを広げていく余地がまだまだあるのではないか」(岡本氏)

写真5 フリーランサーの「オンライン活用」に関する調査結果

為替手数料の負担だけで外貨での報酬が受け取り可能に

 こうした課題を克服していくために、現在ペイオニアが注力しているのがクラウドソーシングとの提携だ(写真6)。オンラインで勤務可能な在宅ワークを提供するオーストラリアのAppen(アッペン)や、写真や動画などのデジタル素材をインターネットで販売するGetty Images(ゲッティイメージズ)など、ペイオニアが提携するクラウドソーシングでは、報酬の受け取り時に「ペイオニア・アカウント」が選択できる。煩雑な手続きが必要とされる国際銀行送金を利用しなくても、簡単な手続きだけで報酬が日本円が引き出せるようになる。

写真6 グローバルでサービスを提供するクラウドソーシング企業と提携

 ペイオニアの提供するアカウントサービスは、オンラインから3分で受け取り専用口座を開設できる。外国通貨で入金された売上は、日本の銀行口座に日本円で送金でき、日本円での引き出しが可能(写真7)。さらに、従来の銀行が提供する海外送金に比べて、手続き時間の短縮と手数料を抑えられる点が売りとなっている。

写真7 ペイオニアが提供されるアカウントサービス

 銀行の海外送金では、手続きに要する時間は約1週間ほどかかるのが一般的。利用に際しての手数料は、外貨と日本円の交換に対してかかる「為替手数料」のほかに、「振込手数料」、「仲介銀行手数料」、「受取手数料」などが上乗せされるため、送金金額にもよるが全体的に高額になりがちだ。これに対してペイオニアの場合、最短では1営業日で手続きを完了でき、手数料も2%以下に設定された「為替手数料」しかかからないという違いがある(写真8)

写真8 銀行の国際送金との比較。銀行の手数料は一例

 

 記者説明会の後半には、ストックフォトを提供するゲッティイメージズへの登録を通じて数年前にペイオニアと出会い、現在も愛用中というフォトグラファーの原 光平氏が登場し、岡本氏とトークセッションを行った(写真9)

写真9 フォトグラファーの原 光平氏(写真左)は、「予期せず災害があったりして仕事が出来ない時にでも、ゲッティイメージズのようなサービスに写真を登録して提供していると、安定した売上が見込める」として、フリーランスならではの不安要素にクラウドソーシングが強力な味方になることを自身の体験として語った。「自分の場合は英語のアレルギーもなく、フォトグラファーという職種も(クラウドソーシングにマッチして)よかったが、他のプラットフォームも同様に充実してくれば日本のクラウドソーシング活用はもっと広がってくるのでは」と期待するコメントも

 原氏は、ペイオニアと出会う以前に利用していた銀行の国際送金では、「着金時に日本の銀行から電話がかかってきて、それに応答できないと数日入金が遅れることがあった。業務中に電話が取れないこともあって不安だった」と振り返る。ペイオニアの場合、「各国に提携銀行があり、送金自体は「国内送金」になっている。だから、銀行から電話がかっかてこない」と岡本氏が補足。「銀行の場合、為替手数料に加えて振込手数料がかかっていたが、ペイオニアではそれも不要になった」と原氏は満足感を語っていた。
 ペイオニアでは、こうしたクラウドソーシングでの報酬受け取り(写真10)に対応するだけでなく、仕事を始めるにあたっての手引きの作成・公開、レポートや体験談、ブログなどを通じた情報提供も行い、フリーランサーの越境進出を全面的に支援していきたい意向だ。

写真10 ペイオニア・アカウントを通じた報酬の受け取りフロー

 

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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