4月5日、au WALLETプリペイドカードに3つの新機能が追加された。目玉は、支払時にカード残高が不足していた場合に、その場で不足する差額分だけが自動でチャージされる「リアルタイムチャージ」機能。勢い込んでさっそく使ってみると、意外な事実が。これを上手に使うと、au WALLETプリペイドカードを「au WALLETデビットカード」に変身させてしまうこともできそうだ。
■不足した差額「だけ」チャージされるのが「世界初」
4月5日発表されたKDDI、沖縄セルラーとじぶん銀行の共同リリースでは、「世界初」が大きくうたわれている。「店頭支払時のオートチャージなんて他の電子マネーでもとっくに提供している機能では?」と疑問に思った読者もいるだろう。おそらく脳裏に浮かんだそれらの「オートチャージ」は、「決済時に電子マネー残高が一定金額を下回ったら一定金額が自動でチャージされる」ものと思う。au WALLET プリペイドカードでもすでに提供されてきたサービスである。それに対して今回のリアルタイムチャージは、決済時に不足した差額分「だけ」が自動でチャージされる。この「だけ」がミソであり、世界初となる部分だ。
世界初!「au WALLET プリペイドカード」に残高不足分が即時でチャージされる「リアルタイムチャージ」機能を追加
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/04/05/3061.html
この「リアルタイムチャージ」機能を使うためには、au WALLET プリペイドカードとじぶん銀行の預金口座との連携、紐付けが必要だ。その後、アプリの設定画面からオートチャージの「設定」(画面①)と、1カ月間にオートチャージできる上限額(じぶん銀行の口座残高を超える設定は動作しない)を決める必要がある(画面②)。
この状態まで設定すれば、あとはau WALLET プリペイドカードを使ってみるだけ。宵越しの電子マネーは持たない筆者のカード残高は「10円」(画面③)だったので、リアルタイムチャージを試すには打ってつけの状況といえる。au WALLET プリペイドカードは磁気ストライプ方式のMastercardカードなのだが、せっかくなので、iPhoneに登録しているApple PayなQUICPay+のほうで試してみることにした。
近所のコンビニで恐る恐る180円のカフェラテを購入しようとする。何しろカード残高は10円しか入っていないので大変心許ないが、ここは勇気を出して「QUICPayで支払います!」とハッキリと告げる。店員さんの「どうぞ」の声にしたがってiPhoneをリーダにタッチ。「・・・・・」。元々QUICPayではSuicaのようにタッチした瞬間に音が鳴って決済完了、とまではいかないのだが、じりじりとリーダが読み取っている音が聞こえてくるような緊張感と、店員さんと筆者の間に思いがけず生まれた沈黙の時間に「もう耐えられないかも!」と思った瞬間に決済が完了した。
無事、カフェラテを受け取って戦利品であるレシート(画面④)を点検すると、見事にQUICPayで180円のカフェラテを決済できていた。
と次の瞬間、じぶん銀行からのCメールがiPhoneに着信(画面⑤)。そこには口座から払い出された金額の記載こそないものの、銀行口座から確かにオートチャージが行われたことを示すメッセージに安心感を覚えた。これはなかなか良いのではないか。
と、ここまで来て気が付いた。筆者のau WALLETプリペイドカードの残高はすでにゼロ円。ということは、このままお店でカードを使い続けるたびに、じぶん銀行口座から毎回支払いに必要な金額だけが引き落とされ、お店に支払われる。そしてプリペイドカードの残高は常にゼロ円。そう、もはや筆者の手元にあるのは「au WALLETデビットカード」と呼ぶしかない代物ではないかと。
なお、上記で使ってみたとおり、au WALLETプリペイドカードは「QUICPay/QUICPay+」なApple Payだけでなく、「Mastercardコンタクトレス」なApple Payにも対応しているので、日本だけでなく海外でのApple Pay支払いにも利用できる(はず)。つまりこれは、「Apple Pay対応のMastercardデビットカード」の誕生と言ってもよいのかもしれない(よくないのかもしれない)。
■プリカから資金移動サービスへ衣替え
少し興奮してしまったので、落ち着いて他の機能も見てみよう。
今回、au WALLETプリペイドカードの新機能として追加されたのは、以下の3つの機能だ。
1)リアルタイムチャージ
2)au WALLETプリペイドカードユーザー間の送金(電話番号による送金)
3)じぶん銀行口座への払出
いずれもじぶん銀行との口座連携が欠かせない。特に、このうち2)と3)については、実はau WALLETプリペイドカードの商品特性を大きく変える重要な変化といえる。
そもそも法律(資金決済法)上では「前払式支払手段」と定義されるプリペイドカードでは、送金も、現金への払出(出金)もは禁じられている。この機能を提供するために、au WALLETプリペイドカードは「前払式支払手段」から「資金移動サービス」へと法的な位置付けを変更する必要があった。そのため、利用者もこれらの新機能を利用するためにはあらためて申込が必要とされ(前の段落であえてさらっと書いた「au WALLET プリペイドカードとじぶん銀行の預金口座との連携、紐付けが必要だ」の部分)、銀行口座連携による本人確認を活用することを見据えた手順になったと推測される。
なので、「前払式支払手段」と「資金移動サービス」とは法的にはまったく別の物。それを象徴するようなメニュー画面が、バージョンアップしたau WALLET プリペイドカードのアプリ中に登場した(画面⑦)。例えば「資金移動サービス」では、クレジットカードからチャージした残高を送金や現金への払出に使用することが法律上できない。そこでアプリ内でもチャージ元の違いによる利用の制約がわかりやすく明記され、しかもクレジットカードを使ってチャージしようとすると、アラート画面まで登場する念の入れようとなっていた(画面⑧)。
なかなかに力の入ったau WALLET プリペイドカードの新機能。リリースでは「『au WALLET』を活用した、スマホ決済改革の第一弾」と書かれているし、4月1日付けでKDDI社長に就任した高橋 誠新社長は、同5日の就任記者会見で今年度中にQRコード決済市場へ参入する意欲を示したところ。第二弾、第三弾と、果たしてどんな弾が飛んでくるのか、これは面白くなってきた。
※【訂正】(2018年4月6日21:00)本文後段の資金決済法に関連する記述中に誤りがありましたので、修正しました。修正箇所は打ち消し線により残しています。