【解説】国境を超える「JPQR Global」が接続2カ国目のインドネシアと連携開始

7月5日から、まずは「大阪・関西万博(正式名称:2025年日本国際博覧会)」で提供が開始された「JPQR Global」。同日からカンボジアの「KHQR」、早くも翌月の8月17日にはインドネシアの「QRIS」と対応国を拡大した。これを記念して8月25日には大阪・関西万博会場内のインドネシア館でセレモニーが開催された。

QRコードや掲出スタンドは「JPQR」も「Global」も共通

 大阪・関西万博会場のインドネシア館(写真1)では、インドネシアの独立記念日である8月17日から、インドネシアの統一QRコード決済規格である「QRIS(クリス)」に対応した「JPQR Global」のQRコードスタンドが設置され(写真2)、対応するインドネシアのコード決済での支払いに対応している。例えば、インドネシアから来日して万博会場を訪れた方が、現地で利用しているコード決済のアプリから「JPQR Global」のQRコードを読み取ると、日本円に換算された金額表示に沿って操作、支払うことができる仕組みとなっている。

写真1 大阪・関西万博のインドネシア館(写真は一部加工しています)(写真提供:ネットスターズ)

写真2 「JPQR Global」のQRコードスタンド(写真は一部加工しています)(写真提供:ネットスターズ)

 日本におけるコード決済の統一規格である「JPQR」と、諸外国の統一規格との相互連携を実現する「JPQR Global」とは、そもそも名称が異なるため、まったくの別物と誤解してしまいがちだが、MPM(加盟店提示方式)で使用する統一QRコード(規格とそれを貼り出すスタンド)は、実は同じものになっている。
 写真1の様子を眺めて、すでに鋭い読者は気が付いていると思われるが、実際に日本のコード決済である「J-Coin Pay」のアクセプタンスマークも貼付されており、インドネシア館のこのショップでは「J-Coin Pay」での支払いも可能になっている。つまり、1枚の「JPQR」だけで、国内のコード決済サービスと「JPQR Global」を介した決済サービスの両方に対応できていることがわかる。
 「JPQR」はこれまで主に国内のコード決済サービスに関してお店からの利用を受け付けてきたが、今後はこれらと同列の選択肢として「JPQR Global」が申し込み可能になる。お店が希望しなければ「JPQR Global」を導入しなくてもよい。逆に、ひとたび「JPQR Global」を契約しておけば、今後の対応国の拡大にあわせて自動的に利用可能な決済サービスを増やせることになる。
 お店が決済事業者と契約さえすれば、1つのQRコードを店頭に掲出するだけですべてに対応できるというのが「JPQR」の根本思想なので、その点では「JPQR Global」も同じ土台の上に構築された仕組みといえる(写真3)
 なお、「JPQR Global」の企画運用主体はキャッシュレス推進協議会で、加盟店契約会社(アクワイアラー)をユーシーカード、JPQRスイッチングシステムの構築と運用をネットスターズが担当している。また同運用にあたってネットスターズでは第二種資金移動業者としての登録を完了している。

写真3 記念セレモニー周辺のディスプレイ(写真提供:ネットスターズ)

万博会場内でのキャッシュレス対応に変化は?

 8月25日にインドネシアと日本を中継でつないで催された記念セレモニー(写真4)では、インドネシア銀行総裁のペリー・ワルジオ氏が「現地通貨、越境決済の記念すべき日で、マレーシア、シンガポール、タイに続くクロスボーダー、越境決済となる。QRコードを使えばどこでも決済できる環境を作っている。LCT(Lacal Currency Transaction)の広がりもあり、ルピアと円の口座連携でさらに繋がりができる。パートナーシップを拡大していきたい」と話した。
 財務大臣の加藤 勝信氏もビデオメッセージを寄せ、「日本政府としてもインドネシアとの金融協力を進めていきたい」と語った(写真5)。また、セレモニーの後半にはインドネシア銀行副総裁のフィリアニンシ・ヘンダルタ氏による、QRISのJPQRを使った決済デモが披露された(写真6)

写真4 記念セレモニーの模様(写真提供:ネットスターズ)

写真5 財務大臣の加藤 勝信氏(写真提供:ネットスターズ)

写真6 QRISに対応するインドネシアのコード決済アプリを用いた「JPQR Global」での決済デモンストレーション。右はインドネシア銀行副総裁のフィリアニンシ・ヘンダルタ氏(写真提供:ネットスターズ)

 ところで大阪・関西万博では海外のコード決済への対応についてこれまで、WeChat Pay、UnionPay(銀聯)QRと、Alipayが提供する「Alipay+(アリペイプラス)」を通じた数十の決済ブランドとに対応してきた。

(参考)
大阪・関西万博の会場内で対応するキャッシュレス決済ブランドを発表-会場内にプリペイドカードへの現金チャージ機を設置- | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト(2025年2月14日発表)
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20250214-02/

 今夏に「JPQR Global」がこれに加わったことで、7月5日からはカンボジアの「KHQR」、そして8月17日からインドネシアの「QRIS」に対応するコード決済を利用している海外のユーザーが、大阪・関西万博会場の両国パビリオンや、公式ショップなどの一部で自国のコード決済が利用できるようになったという位置付けになる。

(参考)
大阪・関西万博会場で「JPQR Global」による決済サービスを開始〜カンボジアが最初の対応国に〜 | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20250704-03/

 「JPQR Global」を推進するキャッシュレス推進協議会では、今後もアジア各国との連携を順次始めていく予定だが、すでに「JPQR Global」のQRコードを設置したお店ではQRのコード差し替えや追加申込手続きなどが不要で、そのまま利用できるようになるという。万博会場以外での利用についても準備を進めており、今後アナウンスしていく方針だ。
 一方で、JPQRに参画する日本のコード決済サービスを海外の統一QRコードで利用できるようにするアウトバウンド(日本人の海外旅行者)向けの取り組みも行っていく計画で、最終的には双方向での連携実現を目指している。

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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