【リテールテックJAPAN 2019】会場に吹き荒れたキャッシュレス旋風、コード決済に対応するゲートウェイと決済端末は激戦区に

2019年3月5〜8日の4日間にわたって東京ビッグサイトで開催された「リテールテックJAPAN 2019」。昨年に引き続き、「コード決済(バーコード、QRコードを利用する決済)」関連の出展が際立ったが、契約や接続を中継するゲートウェイや決済端末がかつてない充実ぶりを見せる一方で、提供各社の特徴が見えにくくなっていた。少し視野を広げてみれば、お店の「省人化」をうたうモバイル予約&決済サービスや、1つのスマホQRで複数の交通移動から生活までをサポートするソリューションの提案など、時代のニーズ変化を先取りした展示も会場に広がっていたようだ。

指静脈でプリペイド支払い〜日立・東芝テック・アララ・エブリイ

 日立製作所のブースでは、指静脈認証を本人のID情報として利用し、キャッシュレス決済を行う実証実験のデモ環境を披露した。中国・四国地方でスーパーマーケットを運営するエブリイの本部社員を対象に、今年5月から7月まで実際の店舗で実施する。エブリイでは、東芝テックのPOSシステム上で、アララが提供するプリペイド式ハウスカードの「エブリカ」を採用しているが、このカードに指静脈による生体情報を紐付けることで実現した。ブースの説明員によると、「生体情報だけで決済できる実験自体は他でも行われているが、社内など限られた環境での実施が大半。今回は実際のお店で実験する点で画期的」とのこと。

指静脈認証を用いた決済システムの「ユビペイ」を使用する

お客が自分のスマホで予約&決済〜Showcase Gig

 モバイル予約&決済サービス「O:der(オーダー)」を提供するShowcase Gigは、リテールテックJAPANの開催直前に、飲食店などでお客が自分のスマホから商品の注文と会計ができるシステム「SelfU(セルフ)」を発表し、ブースで初披露した。この手の注文端末は、テーブルごとに設置されたタブレットを通じて提供されるのが一般的だが、SelfUではテーブルに掲出したQRコードを読み込むだけでお客のスマホを注文端末として活用。当然、お店側にはタブレット等の設置負担がなくなるなどのメリットがある。

テーブルに掲出(印字)されたQRコードをお客が自分のスマホで読み取って注文する「SelfU」

 また、自立型のセルフ注文端末として「O:der Kiosk(オーダーキオスク)」を先行公開した。交通系電子マネー、コード決済などの決済手段に対応するほか、英語、中国語、韓国語などの多言語対応とした。

海外ではよく見かけるタイプのセルフ注文端末「O:der Kiosk」

コード決済にも対応したオールインワン端末も投入〜TMN

 電子マネーをはじめシンクライアント決済サービスを提供するトランザクション・メディア・ネットワークス(TMN)は、最新端末のラインアップとして「UT-P10」を出展した。接触IC・非接触ICのクレジットカード、汎用電子マネーに加えて、コード決済にも対応するオールインワン端末だ。

1台でコード決済にも対応した新決済端末「UT-P10」

 また、汎用タブレットなどに接続して使用するmPOS対応端末もラインアップに加えた。おなじみのPINパッドとカードリーダ一体型という外観の「UT-S10」のほか、腕時計のように手首に巻いて使用する「Cygnus」を展示した。説明員によると「移動環境で利用可能な決済ソリューションとして今回展示したが、Cygnus(のこの外観)に反応する方がとても多い」そうで、流通業界にも筆者のようなガジェット好きがひそんでいるのだろうか。

写真左のmPOS端末が「UT-S10」、その右がウェアラブル型の「Cygnus」

1つのスマホQRで駅からホテルまで一気通貫に〜オムロンSS

 オムロン ソーシアルソリューションズの「シームレスな移動サービス」を掲げたゾーンでは、自分のスマホに発券(表示)された1つのQRコードを使って、切符の購入から自動改札の入場、電動カートの利用、そしてホテルのチェックインまで済ませられる、いわゆる「MaaS(Mobility as a service)」を体感できるコーナーが用意されていた。

切符購入から改札通過までをスマホ画面に表示したQRコードで済ませられる

 決済端末提供では老舗のオムロンとあって、「オートローディング式のリーダライター用IC化ソリューション/EMVレベル2認定・DUKPT暗号化を実現」との文句がうたわれた「 eZ Squre(イージースクエア)」も展示されていた。ガソリンスタンドや病院、ホテル、駅といった場所に設置される「自動サービス機」に内蔵するIC化モジュールだが、「PCI-PTS認定済みのPINパッドでこのコンパクトさはなかなか他社に真似できない」(説明員)なんて実に渋いコメントを寄せてくれた。

自動サービス機のキャッシュレス化を実現する「 eZ Squre(イージースクエア)」

新端末続々対応も本質はその操作性に〜ネットスターズ

 オレンジ色の筐体が印象的な、中国・Sunmi製のコード決済専用端末提供で日本市場にその名を知らしめたネットスターズ。端末メーカーと誤解されがちだが、事業の本質はあくまで、さまざまなコード決済サービスを自動で識別して振り分けできる端末アプリの提供と管理センターの運営にある。会場には、1台でクレジットカードや非接触IC電子マネーなどにも対応できる新端末が並んだが、注目すべきはその統一感のある操作画面だ。

端末ラインアップは増えてもメニュー画面が統一されている

「au PAY」「FamiPay」などの新ロゴもずらり〜インコム・ジャパン

 特に、POS連携によるコード決済対応に強みを持つインコム・ジャパンは、端末を陳列するのではなく、大きな説明パネルを用いたブース展示に。台湾の「JKOPAY」や韓国の「PAYCO」といった今後対応予定のインバウンド銘柄に加えて、まだサービス前の「au PAY」「セブン・ペイ」「FamiPay(ファミペイ)」「ゆうちょPay」「メルペイ(同日時点ではサービス未開始)」などを含めて、コード決済サービスのロゴがずらりと並んだ。

インコム・ジャパンはパネル展示により対応可能なコード決済事業者の幅広さをアピール

パートナー企業の充実が日本市場参入の要に〜インジェニコ・ジャパン

 フランスの決済端末メーカー世界最大手であるインジェニコ。この数年で日本市場でも目にする機会が増えてきた。最新の端末ラインアップと併せ、日本市場におけるパートナー企業として、GMOフィナンシャルゲート、芝浦自販機、NTTデータ、富士通、三菱UFJニコス、日本カードネットワークの名前が展示パネルを通じて紹介されていた。

インジェニコ端末を採用する日本のパートナー企業の充実ぶりがわかる展示内容に

ゆいレールでアリペイ実験成功の実績をアピール〜TIS

 TISのブースでは、QRコードを公共交通機関のチケットとして自動改札を通過するデモが展示されていた。同社は昨年6月に沖縄都市モノレール(ゆいレール)で行われたAlipay(アリペイ)によるモノレール乗車の実証実験に参加しており、そこでの実績を来場者にアピールしていた。同社のQRコード関連の事業では、デジタルチケットのほか、「QR×DRIVE」のサービス名称で店舗とコード決済事業者の間を仲介するゲートウェイ事業も展開している。

展示会場に自動改札が置いてあるとやっぱり人は立ち止まって、見たくなる

左に動かせば即時払い、右に動かせば後払い〜インフキュリオン・グループ

 リテールテックJAPAN初出展のインフキュリオン・グループのブースでは、りそな銀行が今年2月から提供を開始したスマホアプリ「りそなウォレット」上で利用できる「SLiDE(スライド)」を紹介していた。ユーザーが、りそなウォレットのモバイル決済機能を使って買い物をした際に、その支払方法を後からアプリ上で簡単に変更できる。メニュー画面で、「つまみ」を左にスライドすればりそな銀行口座から即時に引き落としとなり、反対に右に動かすと後払いとなる。後払いは1週間単位で最大4週間後まで遅らせることができる。

りそなウォレットアプリが採用した「SLiDE」の操作画面

コード決済対応からCAFISトークナイゼーションまで〜NTTデータ

 クラウド型総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」を中心に、コード決済への一元対応、電子レシートの運用管理、インバウンド送客などの提案を行っていたのがNTTデータ。昨年の秋から提供を始めた「CAFISトークナイゼーション・ID預かり」は、カード番号をトークナイゼーション技術によってトークン番号や加盟店独自のポイント番号などに変換することで、カード番号を用いずに顧客管理やポイントサービスなどを提供可能にするサービスだ。「CAFISセンタ間接続」「CAFIS PastelPort」「CAFIS BlueGate」「CDS」などに対してサービスを提供する。

「CAFISトークナイゼーション・ID預かり」はCAFIS PastelPortなどで利用できる

消費者には登録を、店舗には導入を働きかけ〜LINE Pay

 リテールテックJAPAN会場で、コード決済の提供事業者として出展していたのがLINE Pay。展示ゾーンを消費者向けと加盟店向けの2つに分け、それぞれ消費者向けには200円分のクーポンを配布してサービス登録と体験を促したほか、加盟店向けにはコード決済の専用端末や紙スタンド、スマホ・タブレット向け店舗用アプリなどを展示して導入を働きかけていた。

コード決済事業者であるLINE PayのブースがリテールテックJAPAN2019会場に登場

加盟店端末のラインアップを陳列して導入を働きかけていた(写真は一部加工しています)

香港から日本市場への進出ねらい初出展〜スペクトラ・テクノロジーズ

 香港拠点の決済端末メーカー、スペクトラ・テクノロジーズ(SPECTRA Technologies)はリテールテックJAPANに初出展。Androidベースの決済端末「Apollo(アポロ)」は、磁気ストライプ、EMV(接触IC)、コンタクトレスに加えてコード決済にも対応可能だ。他にも、香港で実績のある自動販売機用端末「T300」などを紹介していた。

海外の関連展示会では常連組のスペクトラ・テクノロジーズ(香港)もリテールテックJAPANは初出展(写真はAndroidベースの決済端末「Apollo」)

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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