富士通は5月13・14日の2日間、東京国際フォーラムで「富士通フォーラム2010」を開催した。ICT/クラウド、インテリジェント社会、ユビキタス・フロントなどのキーワードで多数の製品技術が披露された同フォーラムから、ICカード関連の展示を紹介する。
■電子カードホルダーによる患者案内ソリューション
病院での診察の待ち時間ほど、果てしなく長く感じられるものはない。今回、参考出展された電子カードホルダーは、この待ち時間をリアルタイムに表示することで、患者が売店や喫茶店など待合室以外の場所へも自由に行き来できるようにするソリューションである。
ポケットベルやPHSなど、大病院であれば従来からこれに代わる仕組みが提供されていることも珍しくない。これらに対して電子カードホルダーでは、通信方式として、人体への影響が小さい独自の無線技術(IEEE 804.15.4準拠)を採用した。
さらに個人の識別用にICカード診察券と組み合わせるようにしたことで、電子カルテシステムと連動した受付も可能になるとのこと。患者は病院に着いたら、置いてある電子カードホルダーに診察券をセットするだけで、受付から診察室への入室までの手間を省くことができる。
写真の通り、診察券として利用するカードには非接触ICカードを想定しており、説明員によると「住民基本台帳カードと同じタイプ」とのことなので、タイプB(ISO/IEC 14443)カードと思われる。
同社ではオフィスでの従業員証としての利用や、役所・銀行などでの待ち人数案内など幅広い導入シーンを想定している。
■交通カード「ですか」と連動したエコポイントシステム
土佐電鉄、高知県交通などの電車・バスに採用されているICカード乗車券「ですか」。そこでは、交通利用だけでなく、公共交通の利用実績に伴い交通エコポイントを付与する仕組みが提供されている。
ユニークな点は、貯まったエコポイントにより再び電車・バスに乗れるだけでなく、公共交通利用によるCO2削減量がインターネットのホームページ上で公開されていることである。これは個人だけでなく、企業や学校などの所属別に集計・公開することで、県民運動につなげることができるという。
実際、運用開始から約1年間で、約2,430トンのCO2削減効果が認められたという。
■「個人の健康情報を活用した社会の創造」=『PHR』
このほかインテリジェント社会のコーナーでは、「個人の健康情報を活用した社会の創造」のキーワードで『PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)』の紹介が行われていた。
『PHR』は、個人の医療情報や健診情報などを集約・蓄積することで、さまざまな機関が医療・健康サービスを提供することを目的とするデータベース。現在これらの情報は、医療機関(電子カルテを含む)や薬局、医療保険者などに点在して管理されているのが実情である。富士通ではPHRシステムを含む健康情報システムの提供を目指している。
すでに富士通のグループ社員12万人が同システムを利用しており、2010年4月には製品化も行っている。