【レポート】みずほブルーに染まった「Mizuho Suica」が登場、Apple Payのウォレットと直結するアプリとしては国内2例目に

みずほ銀行と東日本旅客鉄道(以下、「JR東日本」)は8月1日、東京・大手町のみずほ銀行本店で記者会見を開き、iPhone7以降のiPhoneとApple Watchに対応する「Mizuho Suica(みずほスイカ)」のサービスを提供開始したことを発表した(写真1)。みずほ銀行口座を持っていればアプリからSuicaを即時に新規発行でき、みずほ銀行の普通預金口座からのチャージ(口座振替)が利用できるようになる。年会費やチャージ手数料なども無料で、Suica提供エリア以外の利用者がiPhoneでSuicaを使いたいと思ったら、有力な選択肢となり得るサービスだ。

写真1 左から、東日本旅客鉄道 常務執行役員の野口 忍氏、みずほ銀行 常務執行役員の向井 英伸氏

■モバイルSuicaとは異なる銀行チャージ方式を採用
 8月1日からみずほ銀行が提供を始めたのは「iOS用みずほWalletアプリ」。みずほ銀行の普通預金口座を保有する個人であれば、このアプリを介して「Mizuho Suica(みずほスイカ)」をApple Payのウォレット上に新規発行できる(既存のSuicaからの移行には非対応/写真2、3)。みずほ銀行の口座から即時にチャージが可能なほか(オートチャージには非対応)、Apple Payに追加されたクレジットカードからのチャージと、現金チャージに対応する。銀行チャージの額は最低金額1,000円から1万5,000円までの範囲で選択が可能(Suicaの入金上限額は2万円)。

写真2 「iOS用みずほWalletアプリ」の画面

写真3 みずほ銀行のキャッシュカードが手元にあれば、その場でSuicaが発行できる

 Suicaと銀行の連携サービスとあって、特徴的なのは銀行口座残高を利用した直接チャージ機能。とはいえ、銀行口座からのチャージ機能自体は決して珍しくなく、従来の「モバイルSuica」でも提供されてきた。しかし、従来の銀行チャージがモバイルバンキングの仕組みを利用した「送金」によるチャージだったのに対し、今回は別方式の「ネット口座振替」を採用した点が大きく異なる。口座番号とキャッシュカードの暗証番号を入力するだけで、より手軽で簡単にチャージ操作を完了できるようになった。会見に出席したみずほ銀行・常務執行役員の向井 英伸氏は、「瞬間的に必要な金額だけチャージできるので、オートチャージ機能は付けていない」と操作の簡便さを強調する。
 なお、みずほ銀行が今年3月にサービス開始したAndroid端末向けの「スマートデビット」アプリ(QUICPay+対応)はこの7月までに「まだプロモーションを行っていないが、すでに約20万ダウンロードに達した」(向井氏)。これを好調と評価し、「『iOS用みずほWalletアプリ』と合わせて早期に100万ダウンロードまで持っていきたい」(向井氏)としている。

■「ATMは商売にならないが、銀行チャージは収益につながる」
 新サービスの提供に至った背景として、みずほ銀行では店舗における日本のキャッシュレス化推進における課題を、1)(少額の支払いにクレジットカードを出すことに気が引けて)手軽にキャッシュレスを利用できない、2)(特に若い人たちを中心に)クレジットカードを利用したくない、3)(店舗が)現金しか利用できない、の3つに集約。このうち、1)と2)にはそれぞれ「スマートフォン」、「デビット/電子マネー」が解決策になると整理し、これに対応する決済サービスが「みずほWalletアプリ」だと位置付けた。また、3)については店舗に決済端末が設置されていないケースを想定し、「QRコード決済」を充てていく考えを示した(写真4)
「iOS、Androidをお使いのお客様、それぞれにおいて便利な形を提供していきたい。まずはこの形(iOSはSuica、AndroidはQUICPay+)から提供を始めるが、ゴールとは思っていない」(みずほ銀行の向井氏)

写真4 店舗におけるキャッシュレス化のポイント

 また同アプリ提供による事業性、収益性の観点からは「現在、多くのお客様がSuicaに現金で入金しているが、その現金は銀行のATMから引き出されている。しかし、そのことは銀行の収益にはなっていない。これが銀行口座からの直接チャージになることで、当行が決済を通じた収益を得られるようになる」(向井氏)と説明した。
 これに対して、Suicaで協業するJR東日本は、「これまでは自社のインフラやアプリを中心に据えて取り組んできたが、今回は『みずほWalletアプリ』のパーツの1つとなることで、みずほ銀行様のお客に対して利便性を提供してきたい(写真5)。ご覧のように、みずほ銀行様の色に染まって展開されており、Suicaとして新しい一步を踏み出したと思っている」(JR東日本 常務執行役員の野口 忍氏)と意気込みを話した。

写真5 Suicaの新しい展開。これまでグリーンが基調だったSuicaが、あえてブルーな外観に

■Apple Payに連動する「別アプリ」は大日本印刷が支援
 同アプリは大日本印刷のモバイルウォレットサービスを採用しており、Apple Payの「Wallet」アプリ内に生成される(iPhoneのセキュア領域に書き込まれる)バーチャルカードのSuicaを直接コントロールできる(写真6、7)。Apple Payは基本的に、Apple社の提供する「Wallet」アプリを通じて操作、利用される仕組みだが、これまで例外的にJR東日本の「Suicaアプリ」がApple Payと連動する「別アプリ」として提供されてきた。この形態は、「iOS用みずほWalletアプリ」が国内2例目となる。

写真6 Apple Payの「Wallet」から見ると、しっかりと「青いSuica」が収まっているのがわかる

写真7 この通り、Apple Watchにも「青いSuica」が登場

 大日本印刷がみずほ銀行とスマホ向けアプリで協業するのは今回で3度目(写真8)。2014年1月の「かんたん口座開設」アプリ、今年3月の「スマートデビット」アプリ(Android端末向けQUICPay+対応のカードレスデビット)の開発に続いて、「iOS用みずほWallet」の提供を支援した。自社のDNPモバイルWalletサービスを機能拡張した「スマホ決済プラットフォーム」を活用し、Apple Pay用の各種API、みずほ銀行のAPI、そしてSuicaのシステムを連携させることで、サービス提供が可能になったという(写真9)
 会見に同席した大日本印刷・専務執行役員の蟇田(ひきた)栄氏は、「長年デジタルセキュリティ分野で培ってきた経験を生かし、これからもデジタルキャッシュレス社会に貢献していきたい」と抱負を語った。

写真8 左から、みずほ銀行 常務執行役員の向井 英伸氏と、大日本印刷 専務執行役員の蟇田 栄氏

写真9 みずほWalletアプリとスマホ決済プラットフォームの連携図

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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