経済産業省(商務・サービスグループ 消費・流通政策課)は4月11日、全73ページの大作「キャッシュレス・ビジョン」(*)を公表した。業界関係者は一字一句必読の文書だが、かなり長めでもあるので、筆者なりに表現を噛み砕き、短時間で頭に入れられるように要点をまとめてみた。当然「まとめ」のため、全ての項目を網羅しているわけではなく、モレ抜けの気になる方は原典を参照いただきたい。 *なお、経産省は昨年(2017年)5月にも「FinTechビジョン」を公表している。
■日本のキャッシュレス決済って、現状どうよ (1〜3章)
- 日本政府が2027年までにわが国のキャッシュレス比率を20%から40%へ倍増させる目標を掲げてがんばっているところだけど、経済産業省(経産省)でもクレジットカード会社さんなどと一緒にこの議論をやってみたところけっこう盛り上がったので、経産省の「ビジョン」として発表しちゃいますよ。
- 日本は口座引き落としなどの銀行間送金がかなり昔から使われていて、相当に利用されてると体感する。その数字を上乗せすれば、日本の現在のキャッシュレス比率は20%ってことないでしょう(もっと上のほうでは?)、って意見をよく聞くし、そうだなぁとは思うけれど、その統計数字が存在してないし、数字があったとしても外国のキャッシュレス比率のほうも同じように上乗せしないと公平じゃないので、とりあえず20%とするのでよいとしませんか。
- 世界のキャッシュレス状況を眺めてみると、基本的には国によってクレジットカード派とデビットカード派に分かれるけど、最近はスマホを使ったお手軽で便利な仕組みが登場していて、それらがものすごく使われ始めてる国もありますね。あとキャッシュレスの進んでいる国では、「現金禁止」な空気感とか、「クレジットカード使うと税金が安くなる」みたいな仕組みがあって効果テキメンな感じ。
- お金の流通に関する統計数字で見ても「日本人は現金好き」のようだけど、お客さんは「現金だと使い過ぎないし、持ってても安全だからこれで十分。現金しか使えないお店も多いので問題なし」ってなマインドが強いっぽい。お店さんは頑なに「端末の操作が面倒」とか、「カードだと余計な費用がかかるからイヤだ」なんて言ってるし、クレジットカードとか電子マネーを提供する会社さんすら「いや、そもそも手数料でそんなに儲からないし、ポイントとか付けなきゃいけないし、もう経営きついッス」とか言い出す始末。これは何とかしないと。
- でも最近、「人員削減」とか「店舗無人化」とか、銀行やお店のほうからコストを削減したい気持ちがぐんぐん盛り上がってきているようで、これはキャッシュレス推進にとってまさしくチャンス! 今まで課題と思われていた部分を解消した新しいサービスも続々登場してきてるので、こういうのをぜひ使ってもらって。
■状況はわかった。で、具体案を出せと言われれば (4〜6章)
- ということで、現状はわかった。じゃあ今よりキャッシュレスを進めるのに、具体的にどうしたらよいのか、何から手を付けたらいいのか、の観点から具体的な方法を16個考えてみたよ。
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①お店さん向け 6つ
②お客さん向け 3つ
③決済事業者さん向け 1つ
④産官学向け 3つ
⑤新産業向け 3つ(以下は特に重要と思われるもののピックアップ)
- GmailとかLINEは無料で利用できるけれど、「我が国におけるカードネットワークのデータ通信にかかる費用は、4キロバイトあたり有償」。もちろん一緒くたにはできないけれど、データ通信の安価な送金網が作れるといいな。
- 特にカードの利用金額が低額の場合に、加盟店手数料がお店の利益を上回ることが多々あるようなので、ここについては改善できる仕組みが必要だわ。
- キャッシュレス支払に対応するお店さんには補助金を出すとか、税金を少し安くしてあげたりして、加盟店手数料や端末代に充ててもらうのは効果があるかもね。だって一度導入してもらえたら、お店さんにもキャッシュレスの効果はわかってもらえる(はず)だからさ!
- いろいろと新しいキャッシュレス支払サービスが登場してるので、そろそろ操作手順とかデータの書き方とかを統一しておいたほうがよいんじゃないかな。
- スウェーデンとか中国みたいに「誰もがみんな使ってる決済サービス」が出てくれば、きっと日本のキャッシュレスも前進するはず。
- 現金使うよりも、キャッシュレスで支払ったほうが安い!とか出来ると、もっとお客さんにキャッシュレス支払を使ってもらえるはず。
- 加盟店手数料は、お店さんにとってはより安いほうがいいに決まっているけど、決済事業者さんもいろいろとやりくりしてがんばってる結果なので、簡単に規制するとか言うのはちょっと乱暴。まずは加盟店手数料を分解してみて、コスト削減の余地がないか調べてみよう。
- キャッシュレス支払の際の「本人確認」は、超重要だけどけっこう大変。なのでみんなが個別バラバラでやるのではなく、業界共通のものを作ってみんなで使えるとすごく良いね。
- と、ここまで書いてきてだいぶ盛り上がってきたので、政府の目標はキャッシュレス比率40%を2027年までに実現だったけど、経産省としては2025年に2年前倒ししましょうって呼びかけてしまおう。ちょうど大阪・関西万博もあるし、いけるっしょ。産官学の「キャッシュレス推進協議会(仮称)」を立ち上げて、さらにその先にある「キャッシュレス比率80%」を目指していこう!
以上
参照元:
「キャッシュレス・ビジョン」(経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課、2018年4月11日)
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001.html