千葉県・佐倉市のニュータウン、ユーカリが丘を走る山万ユーカリが丘線(以下、「ユーカリが丘線」、写真1・2)とコミュニティバス(こあらバス)で、今年(2024年)6月15日から「顔認証」と「QR乗車券」の運用が始まった。注目されるのは、これがよく見かける“実証実験”ではなく“本格導入”であること。地域の住民だけでなく、ユーカリが丘を訪れた人でも利用できるという「ユーカリPASS」を、実際に入手して、その使い勝手を試してきた。
磁気式の切符を廃止し、「QRコード切符」へ切り替え
ユーカリが丘は不動産業の山万が開発を手掛けており、街を周回する鉄道事業についても戦後初の鉄道事業許可を受けた同社が事業を担っている。ユーカリが丘線は1982年11月に開業し、ユーカリが丘ニュータウンの中心部をテニスラケット型に周回する、ユーカリが丘のシンボル的な存在である。
そんなユーカリが丘線で山万とジョルダンが6月15日から運用を開始したのは「ユーカリPASS(顔認証乗車システム)」と呼ばれる仕組み(写真3)。パナソニック コネクトが提供する顔認証技術とジョルダンが提供する決済・チケット管理システム「JorudanStyle Point&Pass」を採用して構築された。
スマートフォンから個人情報などを登録することで使用できるサービスだが、専用のアプリではなく、Webブラウザから専用サイトにアクセスして利用する「Webアプリ」の形式で提供されている(画面1)。
ユーカリPASSは、「普通乗車券(切符)」のほか、割引定期券を除く「通勤定期券」に対応する。これに伴って、これまで磁気式で提供されてきた上記の券種は、6月14日で発売を終了している。代わって6月15日からは、新たにQRコードを印字した「普通乗車券(切符)」に置き換わった(写真4・5)。普通乗車券の運賃は、大人200円、小人100円の一律料金になっている。
ユーカリが丘線で使える乗車券には他に、通学定期券、回数券、一日・二日券、シニアパスがあるが、これらは6月15日以降も磁気券専用の券売機や改札機を利用できるようになっている。今後はこれらの券種についても順次、顔認証システム・QR乗車券の対応を予定しているという。
顔認証は、通勤定期券と普通乗車券の両方に対応
先述した通り、ユーカリPASSを利用するにはあらかじめ専用サイトでのユーザー登録が必要になる。
あらかじめ専用サイトから、個人情報の入力や利用規約への同意などの手続きを済ませた後に、スマホカメラを使って顔写真を登録、最後に乗車券の支払いに使いたいクレジットカードの情報を入力すれば準備は完了だ(画面2)。
なお、通勤定期券の場合には、クレジットカード以外に窓口での現金払いにも対応しているが、普通乗車券の顔認証による利用はクレジットカードに限られる。現金で乗車したい場合には先述の券売機で、QR乗車券を購入すればよい。
ログイン後の画面では、「自動的に顔認証でチケットを購入する」のトグルボタンが表示されているので、これをタップすることで、顔認証乗車が可能になる。この状態では普通乗車券がセットされており、ユーカリが丘線に1回乗車するごとに大人200円、小人100円の一律料金が登録したクレジットカードに課金される仕組みだ(画面3)。
同じ画面からは、割引定期券を除く通勤定期券の購入も可能になっており、その場合でも顔認証だけで改札が通過できる。
登録準備を済ませたら、いよいよ顔認証改札機へ向かう(写真6・7)。専用改札機の上部に据え付けられたタブレット画面に自分の顔が収まると同時くらいのタイミングで、ブルーの帯に「通行可」と表示されたので、これを確認して通過するだけ。いとも簡単すぎて、拍子抜けしてしまうスムーズさだ(写真8、動画)。
動画 顔認証改札 出場@山万ユーカリが丘線・地区センター駅
ちなみに、ユーカリPASSでは顔認証だけでなく、QR乗車券にも対応しているので、そちらを利用したい場合にはスマホに表示されたQRを同じく専用改札に設置された読み取り機にかざして通行すればよい。
なお、ユーカリPASSは、鉄道(ユーカリが丘線)以外に、コミュニティバス(こあらバス)での利用にも対応している(写真9)。こあらバスの各車両に設置された顔認証端末により、認証する。鉄道と同様にQR乗車券にも対応しており、ユーカリPASSのTOP画面中段にある「バス用QR」ボタンを推してQRを表示し、読み取り機にかざす流れとなる。
初めて訪れた地域で出会った電車やバスに、「顔パス」だけで乗車できる体験はとっても新鮮だった。夏休みの思い出作りに、今年はユーカリが丘での顔認証体験を加えてみるのもよいかもしれない(写真11)。
<参考URL>
顔認証・QR乗車券の乗り方について | ユーカリが丘 公式タウンポータルサイト