スマートフォン向けフリマアプリ「メルカリ」を展開するメルカリは8月10日、2023年6月期通期決算を発表した。2023年6月期(2022年7月1日〜2023年6月30日)の連結売上高は1,720億6,400万円で、連結営業利益は170億2,300万円と、いずれも過去最高を記録。主事業であるマーケットプレイス事業では、国内の流通取引総額(GMV)が昨年同期比10%増の1兆円規模(9,846億円)に達した(画面1)。
メルカードは125万枚を突破、積極投資は継続
同社では、子会社のメルペイ、メルコインを通じて、フィンテック事業の「メルペイ」「メルカード」「ビットコイン取引サービス」などを展開(画面2、画面3)。マーケットプレイスの成長を促すドライバーとして、GMVの最大化や、決済手数料削減への貢献が期待されており、中期的には「メルカリグループにおける第2の収益の柱」となることが目標に掲げられている。
2023年6月期のフィンテック事業は、「定額払い」など既存サービスの利用が順調に増加したほか、新サービスのロイヤルティプログラム開始、クレジットカードのメルカード発行枚数が125万枚を突破(2023年6月末時点)、ビットコイン取引口座開設数が提供開始から3カ月強で53万口座を突破、といずれも好調に推移した。その結果、フィンテック事業単体の売上高は昨年同期比29%増の312億円を計上。マーケットプレイス事業とフィンテック事業の間での内部取引(決済業務委託に関わる手数料)を控除する前の数値で、初めて5億円の営業黒字となった(画面4)。一方、第4四半期にはメルカードへの積極的な投資に伴う6億円の調整前営業損失を計上している(画面5)。
与信ロジックの更新で債権回収率が98.7%まで向上
フィンテック事業の利用者数ーーメルペイ「電子マネー」の登録、「バーチャルカード」の設定、「メルカード」の発行、暗号資産取引口座開設を行ったユーザーと「メルペイコード決済」「ネット決済」「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)」などの利用者の合計(自主退会・重複を除く)ーーは2023年6月末時点で1,571万人に上り、債券残高は1,178億円、債権回収率は98.7%だった。利用増に伴って債券残高が増える一方で、2022年に実施した与信ロジックのアップデート効果が第4四半期から反映されたことで、回収率は前期から0.6ポイント改善されている(画面6)。
単体での成長以上に、GMVの拡大や決済手数料の削減などグループシナジーが期待されているフィンテック事業だが(画面7)、例えばメルカード保有者のメルカリ利用時のARPU(1ユーザーあたりの売上)は、発行後3カ月目の時点で10〜60%増加する傾向が見られるという(参考値)。
本通期決算の結果を見る限り、メルカリにおけるフィンテック事業は、目的に掲げられた本業強化の役割を着実に果たしているといえそうだ。