Googleウォレット、12年ぶりにGoogleウォレットの名前に戻る【その歴史を振り返る】

あの「Googleウォレット」が帰ってきた。言わずと知れた、Googleの提供するデジタルウォレットサービスの名称である。日本では、「Android Pay」→「Google Pay」と来て、ここで初めて目にする「Googleウォレット」だが、その始まりはかれこれ12年前にさかのぼる。

日本でも3月29日に正式発表あり

 この話題がネットニュースやSNSなどを通じて、にわかにささやかれ始めたのは今年の3月中旬のこと。いわく、「自分のAndroidスマホに入れていた『Google Pay』アプリが知らないうちに『Googleウォレット』アプリに変わっていた!」
 怪談のような話だが、実話である。実はこの変更については、昨年(2022年)5月に開催されたGoogleの開発者イベント『Google I/O 2022』で初めて発表された後、海外では夏頃から順次、サービスの切り替えが始まっていた。
 この変更が、ようやく日本でも始まったことになる。そして、3月29日には日本のGoogleからも正式発表があった。Androidスマホの自動更新がオンになっていれば、アプリは自動的にアップデートされる。もしくは、Google Playストアから手動でも更新が可能だ(画面1)

画面1 アプリが更新されると表示されるチュートリアル画面

 しかし、この「Googleウォレット」の名前。世界でも日本でも初めて登場したわけではない。今をさかのぼること12年前、米国で初めて発表され、世の中にちょっとした「スマホウォレット」ブームを引き起こした立役者でもある。
 この機会にYouTubeの動画アーカイブを用いて、過去12年の変遷を振り返ってみよう。

■2011年5月、「(旧)Googleウォレット」が米国でサービス開始

Google Wallet Overview(動画/英語、2012年8月2日)

■2016年12月、名称変更となった「Android Pay」が日本でも提供開始

 上記の「(旧)Googleウォレット」は2011年のデビューだが、日本ではそれよりも以前から「おサイフケータイ(ウォレット)」が先行して提供されており、2010年以降はAndroid搭載スマートフォン向けアプリについても「おサイフケータイ」が対応した。
 この間に「(旧)Googleウォレット」は「Android Pay」へと名称を変更。そして2016年12月、ついに日本でも「Android Pay」が登場した。

「Android Pay を日本でも提供開始」(Google Japan Blog /2016年12月13日)

■2018年1月、「Android Pay」が「Google Pay」に名称変更

 その後、2018年に入ると、Googleが提供する決済サービス(Android PayとGoogle Wallet)を統合して、新しいブランド「Google Pay」に移行することが発表された。これを受けて日本でも、同年の2月頃から「Google Pay」へのサービス名称変更が行われている。この際、プリペイド型の電子マネーに加えて、「iD」、「QUICPay」、「タッチ決済」と次々に対応する決済ブランドを拡充しており、昨年9月に「モバイルPASMO」が対応したことも記憶に新しいところだろう。
 ブランド変更とともに、「Google Pay」としてのプロモーションも強化された印象があり、本誌でも2018年の6月にGoogleの冠イベントをレポートしている。

「Bringing it all together with Google Pay」(英語)(Google The Keyword/2018年1月)

【写真で見る】”サイフクリーム”を頬張りながら、Google Payの現在を評価してみる | 電子決済マガジン(2018年6月)

■そして2023年3月、「Google Pay」が「(新)Googleウォレット」に変更

「Google Pay アプリが Google ウォレット に」(Google Japan Blog/2023年3月29日)

「Phone, keys… Google Wallet | Google」(動画/英語、2022年5月12日)

 このような紆余曲折を経て、12年ぶりに生まれ変わった「Googleウォレット」アプリだが、前身の「Google Pay」アプリと異なるのは決して見た目だけではない(画面2、3)。決済(Pay)以外のサービスをデジタル化して収めることができる財布(Wallet)としての機能が強化されている。ポイントカード、デジタル搭乗券、IDカード、学生証、車のデジタルキーのほか、「COVID-19 ワクチン接種証明書、検査記録」の収納にも対応する(ワクチン接種証明書などは日本では現時点で未提供)。

画面2 「Googleウォレット」アプリの画面。画面下段のタブが消え、すべてのカードが一列に並ぶ(画面は一部加工しています)

画面3 変更される前の「Google Pay」アプリの画面(画面は一部加工しています)

 また、これらのカードの「Googleウォレット」への取り込みを容易にするために、Googleでは開発者に向けてウォレット共通のプラットフォームやAPIの提供を開始している。これを利用することで、「たとえば、航空会社のウェブサイトで航空券を購入すると、『Google ウォレット に追加』というボタンが表示され、それをタップすると搭乗券のデジタル版がウォレットに表示されます。」(上記『Google Japan Blog』より)といった運用が可能になるという。

 「Googleウォレット」アプリへの更新がまだという読者は、スマホの「お財布」を新調するつもりで、新年度の初めに気分を一新してみてはいかがだろうか。

 

画面4 結果的に、Appleのアイコンと極めて近似することに(左が「Googleウォレット」アプリ、右がiPhoneの「ウォレット」アプリ)

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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