アナタは体験したか? 2021年の新しい参拝スタイルはキャッシュレスお賽銭とモバイルオーダーで非接触な初詣

「えっ、お賽銭がQRコードのスマホ決済で出来ちゃうの?」「キャッシュレスだとなんとなくご利益なさそう・・・」なんて驚かれたり珍しがられたりしたのはもう過去の話。さらなるコロナ感染防止対策に余念がない2021年型の参拝スタイルには、ここにモバイルオーダーという強い味方が加わった。画期的だった神田明神の「オンライン × キャッシュレス」な取り組みを紹介する。

お賽銭はJ-Coin Payで。お賽銭が先か、拝礼が先か

 新年、とはいってもなかなか収束の見通しが立たないコロナ禍にあって、落ち着かない毎日。そんな中ではありつつも、輝かしい1年の初めに変わりはないということで、今年も神田明神(神田神社)に初詣へ出かけてきた(写真1、2)。今年の初詣は感染拡大防止が広く呼びかけられていたこともあり、どこの神社やお寺でも例年のような混雑は見られなかったようだ。24時間ライブカメラを設置して境内の様子を配信していた神田明神でも、いつもは本郷通り沿いの鳥居の先にまで作られる長い行列の光景はなく、境内に上がっても極端な人混みは避けられるようになっていた。

写真1 この豪華絢爛な感じが新年にふさわしい(隨神門)

写真2 神田明神には一部愛好家の間で「キャッシュレスの神様」(持ってる銭投げつけちゃうことから)とも目される銭形平次の碑も祀られている。来社された際にはぜひお参りしておきたい

 そんな神田明神では、みずほ銀行が提供するスマホ送金・決済サービス「J-Coin Pay(ジェイ コイン ペイ)」を2021年1月1日から導入、お賽銭の奉納に利用できるようになった。
 使い方はいたって簡単。御神殿の正面に位置する隨神門(前掲の写真1)や、御神殿の向かって右手側にある男坂入口(写真3)などに掲示されたQRコード(写真4)を見つけたら、J-Coin PayのスマホアプリからカメラでQRコードをスキャンする(写真5、6)。すると金額を指定する画面に移り変わるので、お賽銭として納めたい金額を手入力し、「この金額をはらう」ボタンを押すだけ。これでお賽銭が完了する(写真7)。スーパーなどではおなじみ、MPM(お店提示型)のスマホ決済と同じ手順なので、初めての人でもさほど迷わずに利用できるだろう。

写真3 ハードな階段ながら風情のある男坂側の入口。上り切ったら目の前にQRコード(画面は一部加工しています)

写真4 神田明神に到着して見つけるべきは、このスタンド(画面は一部加工しています)

写真5 隨神門の脇で見つけたJ-Coin PayのQRコード。ここでこうして参拝しているとそこそこ目立つ(画面は一部加工しています)

写真6 J-Coin Payアプリは、自分のQRコード表示と、カメラでのQRスキャン枠がひとつの画面に共存するUIを採用しており、支払い時に迷いがない(画面は一部加工しています)

写真7 今年もご縁がありますように。(画面は一部加工しています)

 問題は、QRコードの掲出されている場所。QRコードスタンドには「本殿の方を向き、二礼二拍手一礼の拝礼をお願い致します」と記載されていたが、「お賽銭箱が目と鼻の先に見えるこの場所まで来ておいて、本殿で拝まずに帰るのか」と思ってしまうのが人情だろう。本殿のお賽銭箱前が混雑している際には、確かにここですべてを完結させることも感染防止の観点からは望ましい。しかし、このもやっとした気持ちの行き場所をどうしたらよいだろう。
 そこで筆者がお勧めしたいのは、「お賽銭だけキャッシュレスで先に済ませておいて、本殿ではあえてお賽銭は入れずに拝礼だけする」スタイルだ。これならば現金に触れるリスクもなくせるし、参拝者の多くがキャッシュレスになれば、現金のお賽銭を用意して投げる時間の分だけ行列を短くできるかもしれない。
 キャッシュレスでのお賽銭に対応する神社仏閣は、今ではさほど珍しくなくなってきたが、いまだにキワモノ感が漂っているのか、利用している人を見かける機会は少ない。お賽銭の様式として、キャッシュレスで済ませるのが当たり前になるためには、あえて&わざわざそうすることのメリットをより多くの人に実感してもらう必要がある。

写真8 J-Coin Payではちょうど1月末まで100円以上の支払いで50円還元するキャンペーンを実施中だったが、しっかりと「募金やお賽銭での利用は対象外」となっていた

ならばお札やお守りだって、行列せずにキャッシュレスで受け取りたい

 神田明神では、諸事情により神社への参拝が難しい人のために、御祈祷やお守り・お札をネット通販の要領で注文・決済でき、郵送などで送付してもらえる「オンライン授与」にも対応した。特筆すべきは、事前に注文・決済だけをオンラインで済ませておき、境内に設けられた専用の受取所に出向いてお守りやお札を受け取れる「モバイルオーダー」にも合わせて対応したことだ(写真9)

写真9 注文と決済だけオンラインで済ませ、受け取りは神社に赴くスタイルで利用できるモバイルオーダー(なお、モバイルオーダーは今年1月17日で終了)

 そもそも初詣での体験として、参拝のための長い長い行列をこなした後に、お守りやお札を受けるためと、今度は授与所の行列にうんざりした経験のある人は少なくないのではないだろうか。行列の伸び方もやや無法図であったり、目当てのお守りやお札を伝えるのにひと苦労したり、その後の現金の受け渡しを含めて、あまり率先してやりたい行動でもないだろう。
 そんな貴方にとって、「モバイルオーダー」は福音となる。事前に神田明神のWebサイトから画像と説明付きのお守りやお札の種類をゆっくりと選ぶことができ(写真10)、そのまま支払いもクレジットカード決済で完了できる(写真11)。そのカード決済も、リスクベースながらも3-Dセキュアに対応(写真12)しており、安心感がある。

写真10 お札やお守りを現地で選ぶのは、人混みもあってなかなか苦労することが多い。ゆっくりと一覧で眺めながら、欲しいものを決められるところもオンラインならではのメリット。「かごをみる」の「かご」を竹籠にアレンジしている配慮も嬉しい

写真11 決済方法はクレジットカードにのみ対応していた

写真12 国際ブランド3社の3-Dセキュアにも対応しており、安心感がある

 その後、受け取りの際にはモバイルオーダー専用の受取所(写真13)に出向き、決済完了時に表示される画面を提示すればよい。今年の年初の時点では「ネットで注文・決済した当日のみ受け取りが可能」という運用が行われていたが、当日には受け取りに来られない参拝者も多かったようで、筆者を含めて、当日でない注文であっても受け取りができた。杓子定規にあくまでも当初決めた運用を貫くのではなく、利用の実態にあわせてこのように柔軟な対応をしてくれるところに好感を持った。

写真13 神社の境内に出現したモバイルオーダー受取所の佇まいは、若干シュール?(失礼)

写真14 行列に並ぶことも、注文に焦ることも、支払いのために現金に触れることもなく、スムーズに授与品の受け取りに成功!

写真15 モバイルオーダー受取所の脇には、神田明神 LINE公式アカウントの友だちリンクも掲出されていた。QRコードの横にはなんとNFCタグも

 受取所で利用の状況をお伺いしてみたところ、「モバイルオーダーの仕組みは今年初めて導入したので(昨年までとの)比較はできないが、多くの皆さんに使っていただけているようです」とのことだった。

 神田明神が採用したモバイルオーダーの仕組みは、従来の対面授与におけるいくつかの課題を解消している点で合理的であり、感染症対策としても意義のあるものと感じた。来年もぜひ継続していただけることを切に願うと同時に、他の神社仏閣などにも広がってほしいと思う。
 (なお、モバイルオーダーは今年1月17日で終了しているので、ご来社される際にはご注意ください)

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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