突然だが、読者の皆さんは日本の通貨の「発祥の地」をご存じだろうか? こんな仕事をしているにも関わらず、お恥ずかしながら筆者はまったく知らなかった。まさか深い山奥の、木々が鬱蒼と生い茂った場所でこんな出会いがあるなんて! 電子決済好きなアナタに、今年は特別な夏休みをお見舞いしたい。
日本で初めて発行された通貨と耳にすれば、すかさず「和同開珎(わどうかいちん)」の名前が頭に浮かぶ日本人は多いだろう。たしか日本史の授業で習ったっけ。いや、読みは「わどうかいほう」が正しいんだったか?
それはこの際どちらでもいいとして、その「和同開珎」が重要である。日本で初めて流通した銭貨では、銅(Cu)が素材として使用された。このとき採用された銅が初めて発掘された場所が、埼玉県秩父市(旧・武蔵国秩父郡)黒谷地区にある和銅山。そのふもと付近に目指すべき「和銅遺跡」が残されている。
電車ルートを使う場合、今年3月から全駅でPASMOやSuicaなどの交通系ICカードが使えるようになった秩父鉄道を利用して、和銅黒谷駅で下車するのがよい。すると、いきなり駅構内に飾られた和同開珎のオブジェと対面できるので、ここで予習をしておきたい。
駅を東に出て、何げにキラキラネームな彩甲斐街道(さいかいかいどう)沿いに300メートルほど北上する。そこから東へ100メートルほど歩けば、やはり和同開珎が大きくフィーチャーされた聖神社(ひじりじんじゃ)が見えてくる。何しろお金の発祥の地であり、銭神様が祀られていることもあり、金運もグングン上昇するらしい。もちろん、和同開珎グッズ(?)も入手できる。
しかし、「日本通貨発祥の地」を目指すわれわれ取材班は、さらに東へ進んで和銅山に分け入っていかねばならない。ただし、壮大な景観のおかげもあって、辛い道のりというほどでもない。
今年の炎暑をやわらいでくれるたっぷりの緑と、涼しげに流れる沢の音に癒やされながら山道を下っていけば、いよいよ「発祥の地」であることを示す和同開珎のモニュメントが眼前に姿を現す。思ったより大きい!?
この地で発掘された銅が朝廷に献上されたのは、今から1,300年以上遡る西暦708年のこと。これを祝し、年号は「和銅」へと改元され、日本初の流通貨幣「和同開珎」の発行が始まる。スマホもインターネットもない時代、ふいに日本国におとずれた「和同ブーム」を想像してみると、なんだかほっこりしてくる。
ところで西武秩父への道のりは、特急ラビューを利用すれば、池袋からたったの77分で着いてしまうお手軽さ。これから夏休みな人も、もう夏休みは終わってしまったという人も、今年の夏は「日本通貨発祥の地」を目指してちょっと秩父までお出掛けしてみてはいかがだろうか(*)。
*本記事は決して広告ではありません。
参考リンク:
秩父市 和銅保勝会
http://wadohosyoukai.com/
ちょっとラビューで秩父まで|西武鉄道Webサイト
https://www.seiburailway.jp/railways/tvcm/