▲右の端末は欧米のお店で本当によく見かけるタイプ

 

 

昨年12月に成立し、来春までに施行される見通しとなった改正割賦販売法。今後クレジットカードを取り扱う加盟店にはICカード対応、つまりICカード取引に対応した決済端末の設置が義務付けられることになった。この動きを受けて、3月7日〜3月10日まで東京ビッグサイト(東京・有明)で開催された展示会『リテールテックJAPAN 2017』にはICカードに対応する最新型の決済端末が百花繚乱、咲き乱れた。「やっぱり決済端末が好き」を自認する電子決済研究所としては黙っておられるはずもなく、会場で気になった決済端末を写真付きでレポートする。[2017-03-16]  

 

・mPOS、決済モジュール型もラインアップしたJ-Mups
クラウド型の電子決済システムとして設置店を急速に増やしている「J-Mups(ジェイマップス)」。JR東日本メカトロニクスと三菱UFJニコスの共同運営ブースにはその加盟店側のサービス窓口となる決済端末がずらりと並んだ。お弁当箱のような外観を持つ決済端末と、そこにつなげられた接触ICカードリーダライタ兼用PINパッド、そしてクラウド型のFeliCa対応非接触ICリーダライタは街中で目にする機会が増えている。これに加えて昨年10月にラインアップした、スマートフォンやタブレットに接続して使用するいわゆる「mPOS(エムポス)」型の決済端末「BluePad-50」も展示した。磁気ストライプ、接触ICカード、非接触ICカード(FeliCa電子マネー)に対応する。同社では今後、J-MupsでEMVコンタクトレス(国際仕様の非接触ICサービス)にも対応させる計画だが、センターとの接続処理に求められる要求時間への対応との兼ね合いから、EMVコンタクトレスではFeliCa電子マネー方式の処理で採用しているクラウド型(シンクライアント)ではなく、決済端末側で決済処理を行うリッチクライアント型で対応する予定だという。
また両社ではJ-Mupsについて決済モジュールとしての提供形態も用意する。これを組み込み、商品を上部からの画像認識とAI搭載により一括認識できるセルフレジ「ワンダーレジ」のデモが披露されていた。ベンチャーのサインポスト社が提供する。

▲非接触ICリーダもPINパッドも、もう何でもつながってしまう感じ

▲非接触ICリーダもPINパッドも、もう何でもつながってしまう感じ



▲mPOSタイプの決済端末「BluePad-50」

▲mPOSタイプの決済端末「BluePad-50」。auショップが採用



▲BOX内に商品を入れると上部のカメラが商品を自動認識。決済は電子マネーで(ワンダーレジ)

▲BOX内に商品を入れると上部のカメラが商品を自動認識。決済は電子マネーで(ワンダーレジ)



・カラフルなだけでなく、PCI P2PE準拠を先取りしたTMN
同じくクラウド型のFeliCa電子マネー処理を特徴とする決済サービス事業者、トランザクションメディアネットワークス(以下、TMN)では、次世代マルチ決済端末を披露した。通常、業務端末である決済端末は質素なカラーリングが多いが、同社の次世代端末はカラーラインアップが豊富で、加盟店が自店の雰囲気に合わせて選べる自由を提供する。同社が提供する従来型の端末が、磁気ストライプ、接触ICカード、非接触ICカード(FeliCa電子マネー)に対応するのに加えて、2017年度に銀聯カード、J-デビット、ハウス式プリペイドカード、2018年度にはEMVコンタクトレスにも対応を予定する。
セキュリティ面では「PCI P2PE(PCI Point to Point Encryption)」への対応に必要な決済端末側の要件に準拠していることも売りだ。クレジットカード業界では近時の割賦販売法改正により、すべての加盟店が2020年3月末までに「カード情報の非保持化」もしくは「PCI DSS準拠」を完了することを目指している。しかし、ことPOS加盟店(決済端末単体でなく、自社のPOSを利用/連動してカード決済処理を行っているカード加盟店)の「カード情報の非保持化」には大きなシステム改修が必要で、かたや「PCI DSS準拠」も一般の加盟店が取得するのは至難と言われていた。そこに登場した「PCI P2PE」は、決済端末から決済処理を担うセンターまでのカード会員情報の通信を暗号化することで、漏洩リスクを極小化する仕組み。ちょうどリテールテックJAPANの会期中の3月8日に、クレジット取引セキュリティ対策協議会から「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画2017」が公表されたが、この本文中にも「PCI P2PE」への言及があり、「カード情報の非保持化」と同等とみなす措置の一例として「PCI P2PE」が明記された。つまり、加盟店は「PCI P2PE」に対応すれば、PCI DSSへの準拠も不要ということになる。
この点に関し、対応を先取りしていたTMN社の担当者からはホッと安堵の声も聞こえてきたが、「PCI P2PE」への対応が決済端末や決済システムを提供するビジネスにおいては避けて通れないキーワードとなったことが浮き彫りになった恰好だ。

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▲決済端末だってお店が好みにあわせて選べるのは良いこと。と言わんばかりのカラーラインアップ



▲加盟店がPCI P2PEに対応するとPCI DSS12要件のうち10要件が不要になると言われていたが、実行計画2017で全要件が不要になった

▲加盟店がPCI P2PEに対応するとPCI DSS12要件のうち10要件が不要になると言われていたが、実行計画2017で全要件が不要になった



・QRも非接触ICも1台で読みこなすデンソーウェーブ
ところで決済端末は、開発、製造したメーカーが自社のブースだけに出展するのではなく、さまざまな決済ネットワークや決済サービスに対応するという特性上、関係先である他社のブースにも出展されてデモ展示に使用されるケースが多い。デンソーウェーブの決済対応スキャナ「RX100」も、そんな製品の1つだ。
その特徴は何と言っても、非接触ICカードをかざす部分がクリアガラスになっており、光学センサーを通じてQRコードや、パスポート、マイナンバーのOCR読み取りに対応していること。AlipayやWeChat Payなど中国発のモバイル決済サービスに加えて、日本でもポイントカードやプリペイドカードをお店で利用する際にQRコードを提示する場面が増えてきた。そうしたニーズに応えてQRコードの開発メーカーであるデンソーウェーブが満を持して投入したのが本機種である。
FeliCaやEMVコンタクトレスといった非接触IC決済にも対応可能な同端末は、クレジット情報処理センターである日本カードネットワークも採用し、同社のラインアップするJET-S端末の外部接続リーダライタとして利用されている。

▲カードの裏面に印刷されたQRコードの読み込みもかざあすだけの簡単認識

▲カードの裏面に印刷されたQRコードの読み込みもかざすだけで簡単認識



・「JIS Ⅱ」対応は本気度の表れか〜インジェニコ
グローバルメーカーのインジェニコは、このほど日本法人のインジェニコジャパンを立ち上げ、日本市場への食い込みを狙う。世界でも1位、2位を争うトップメーカーとあって、端末のバリエーションもワイヤレス・モバイル型からタッチパネル対応型、自動販売機組み込み型、mPOSまで、種類豊富な世界標準端末を展示していた。
「PCI P2PE」へのいち早い対応もグローバルメーカーならではの同社の売りとなっており、PCI P2PEソリューション「On Guard(オンガード)」として、P2PE暗号鍵の安全な導入と運用をサポートする仕組みを提案した。他方で、グローバルメーカーに共通する課題として、日本の端末メーカーに後れを取らざるを得ないのが磁気ストライプカードの「JIS Ⅱ」(磁気カードの記録フォーマットで、日本独自規格。国際標準規格(ISO)と互換性があるのは「JIS Ⅰ」)読み取り対応がある。同社でも日本でしかニーズのない特殊対応にグローバル仕様の決済端末を合わせることは難しい事情があるが、今回は展示中の2機種で「JIS Ⅱ」に対応した。日本市場に向けた本気が伝わってくる。

▲右側のLANE5000はJIS Ⅱに対応した日本仕様向け戦略モデル

▲右側のLANE5000はJIS Ⅱに対応した日本仕様向け戦略モデル



▲右の端末は欧米のお店で本当によく見かけるタイプ

▲右の端末は欧米のお店で本当によく見かけるタイプ



▲決済端末ではオールドプレーヤーのインジェニコだってmPOSも堂々ラインアップ

▲決済端末では老舗のインジェニコだってmPOSも堂々ラインアップ



▲いかにも外国端末っぽいルックスにシビれる

▲いかにも外国端末っぽいルックスにシビれる人も



・タッチパネル、指紋センサー、QR対応など芸達者なキャッスル
台湾のキャッスルテクノロジーも世界中に決済端末を出荷するグローバルメーカーで、EMVコンタクトレスに対応することから、最近では同社の端末を日本の加盟店で目にする機会が増えているのではないだろうか。リテールテックJAPANへの出展も常連となりつつあるが、最新機種を紹介していた。
「SATURN1000」はAndroidベースのタッチスクリーン対応決済端末。光学式カメラのほか、指紋センサー、2次元コードの読み取りにも対応する。テーブルトップ型の決済端末である「VEGA1000」も同様に、光学式カメラ、指紋センサー、2次元コードスキャナーを搭載している。さらに「MP200」はコンパクトな筐体ながら、接触IC、EMVコンタクトレスに対応し、Wi-Fi、USB、Bluetooth、3G/GPRSなどの通信機能も内蔵するモバイル型端末だ。
同社では日本市場への展開に当たり、ポイントカード事業を展開する企業や、シンクライアント型のFeliCa電子マネーに対応(TFペイメントサービスの「シンカクラウド」)するなど、当地のパートナーと一緒になって端末の導入を進めているように見える。JIS Ⅱ対応への難しさなどでは、ご多分に漏れず、グローバルメーカー共通の悩みを抱えるが、対応する決済サービスの広がりにあわせて着実に存在感を示しつつあるといえる。
ややマニアックな点ではあるが、「SAMスロット4個(オプション)」、「SIMスロット2個」を搭載できるなどの特徴も日本メーカーにはあまり見られない特徴だ。

▲タッチパネル対応の最新端末「SATURN1000」

▲タッチパネル対応の最新端末「SATURN1000」と、コンパクトな「MP200」



▲カメラ、指紋センサー、2次元コードスキャナーを搭載した「VEGA1000」

▲カメラ、指紋センサー、2次元コードスキャナーを搭載した「VEGA1000」



▲「VEGA3000」はシンカクラウドに対応し、国内と海外の非接触IC決済に両対応可能

▲「VEGA3000」はシンカクラウドに対応し、国内と海外の非接触IC決済に両対応可能



 

 

(〈後編〉に続く)
●参考リンク
クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画2017(経済産業省)

 

[2017-03-16]