JCBの統一コード決済ブランド「Smart Code」がいよいよ登場へ、今後5年間で数十万店への導入目指す

ジェーシービー(JCB)は2月20日、QR・バーコード決済スキーム「Smart Code(スマートコード)」を今年4月以降に提供開始すると発表した。昨年2月にスキームの構築着手に取り組む(写真1)と同社が発表してから1年、その間にもコード決済(バーコード決済、QRコード決済をまとめた呼称)への事業参入はさらに激しさを増し、消費者や店舗の利便性を損なわないようにと、並行して設立されたキャッシュレス推進協議会がコード決済規格の統一を目指す構図となっている。コード決済市場におけるジェーシービーの立ち位置を探っていく。

写真1 「Smart Code」の名称とロゴマークが初披露

すでに「ひと桁台後半の数の参加先が見えている」

 スマートコードは現在開発最終段階にあり、早ければ今年4月から、遅くとも今年の夏までにはサービスを開始する予定。第1弾として当初から対応を予定するのは、オンライン・オフラインのお店で利用できるプリペイドギフトカード「JCBプレモ」、メルカリ子会社であるメルペイが今後提供を始めるコード決済となる見通し。さらに複数のコード決済事業者との間で契約交渉が進んでおり、「ひと桁台後半の数の参加先が見えている」(ジェーシービー イノベーション統括部長の久保寺 晋也氏/写真2)そうだ。

写真2 ジェーシービー イノベーション統括部長の久保寺 晋也氏

交通系ICカード相互利用のイメージで展開

 スマートコードのサービス展開に当たっては、同スキームに参加するコード決済個社を示すロゴマークを包む形で共通ロゴを掲示する(写真3)。そのわかりやすい例として、SuicaやPASMO、ICOCAといった全国各地にある交通系ICカードのサービス名と、それらが相互利用可能であることを示す「IC」マークの関係がある。「スマートコードは、交通系ICカードの全国相互利用のイメージで共通化していきたいと考えている」(ジェーシービー イノベーション統括部次長の川口 潤 氏/写真4

写真3 スマートコードの利用イメージ

写真4 ジェーシービー イノベーション統括部次長の川口 潤 氏

キャッシュレス推進協議会の統一仕様に準拠

 スマートコードは、キャッシュレス推進協議会(以下、協議会)が策定に取り組んでいる「コード決済に関する統一技術仕様ガイドライン」に準拠することをうたっており、提供開始段階では協議会が今年3月末までに策定を目指している「CPM(消費者提示型)編」に対応する予定。「MPM(店舗掲出型)」については今後、開発を検討するという。

<参考URL>
2019/01/31「コード決済に関する統一技術仕様ガイドライン CPM(Consumer-Presented Mode)」について、バーコードに関する仕様を策定しました。(キャッシュレス推進協議会)

 なお、記者会見会場では「キャッシュレス推進協議会の統一仕様に準拠すれば、必ずしもスマートコードに乗らなくても互換性は取れるのでは?」との素朴な疑問も飛んだが、「コードの表示や読み取りといった表面の規格だけでなく、読み取ったデータのセンターへの飛ばし方であったり、契約の問題があるので、単純にキャッシュレス推進協議会の統一仕様に準拠したからといってスマートコード加盟店で使える、ということにはならない」(川口氏)との補足説明があった。

アクワイアラはJCBが担うが、コード決済事業者のオンアス契約は妨げない

 スマートコードに参加するコード決済事業者の立場は「イシュア(発行会社)」となり、「アクワイアラ(加盟店管理)」と「スキーム運営者(仕様管理を含む)」をJCBが担う。JCBは個別に定めた条件でイシュアから手数料を取る。アクワイアリングは将来的に、他社へ開放することも検討する(写真5)

写真5 スマートコードの商品性概要

 これとは別に、コード決済事業者が自ら独自に加盟店と直接契約(オンアス)することは妨げない。実際にスマートコードへの参加を表明しているメルペイでは、スマートコードの提供が始まる以前の3月中旬からサービス開始を予定するが、メルペイの独自加盟店とスマートコードの加盟店をその後に合流させていくという。
 スマートコードの参加加盟店は今後5年間で数十万店の獲得を掲げる。加盟店手数料はJCBが相対で料率を設定する。すでに加盟店営業は始めており、既存のJCB加盟店に対してはスマートコードの導入を働きかけているという。位置付けとしては、JCBカードに追加で提案している「QUICPay」と同様のところを目指したい意向で、既存のクレジット決済端末にQRコードを読める機能を順次、実装している(写真6)

写真6 コード決済に対応するクレジット決済端末や専用端末の例

参加コード決済事業者との間でセキュリティインシデントの事例共有も

 歴史あるカード会社のJCBが提供するコード決済のプラットフォームということで、セキュリティ面でスマートコード特有の優位性はあるのだろうか。
 記者が質問してみたところ、「スマートコードにはJCBが決済分野で培ったセキュリティのノウハウが埋め込まれており、将来的には『保証』のような考え方もありうる。また、複数の事業者が参加するので、セキュリティインシデントの事例を共有できることも特徴になるのではないか」(川口氏)とのコメントを得ることができた。
 JCBがコード決済市場で狙うのは、コード決済事業者と加盟店とを仲立ちしてつなぐプラットフォーム提供の立場だが、非接触IC決済における「QUICPay」の展開ともオーバーラップして見える。果たして乱立するコード決済サービスの数々が今後スマートコードに収れんされていくのか、あるいは統一されたコード規格を交えて、陣取り合戦が始まろうとしているのか、コード決済市場の視界はいまだ晴れない状況が続きそうだ。

 

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

Comments are closed.