キャッシュレス還元事業で消費増税後の9カ月間、中小・小規模事業者の加盟店手数料は「2.17%」以下に

関東経済産業局 産業部 流通・サービス産業課は2月14日、埼玉県さいたま市のさいたま新都心合同庁舎1号館にて「キャッシュレス・消費者還元事業」に関する説明会を開催した。今年10月1日から開始予定のポイント還元・割引という施策の実施まで7カ月少しと迫る一方で、なかなか詳細の見えてこないこの事業。ようやく開催された公開の説明会から手掛かりをつかんでいく。

いざ、さいたま新都心

3月には参加する決済事業者が決定、各社のプラン比較表をホームページに公開

 そもそもこの説明会は、地域で自治体や中小事業者を支援する機関などに向けて開催されたものだったが、関東経済産業局のホームページを通じて開催告知と参加募集が行われたこともあって、決済事業者も参加し、定員の300名は早々に満席となった。
 当日は関東経済産業局 産業部 流通・サービス産業課からの説明と、参加者との間での質疑応答が行われた。そこでわかったことを整理してお伝えしよう。
 平成31年度の事業予算案額は2,798億円に上るこの事業(下図)。まず、消費税率が引き上げとなる2019年10月1日から2020年6月30日までの9カ月間について、消費者がキャッシュレス決済手段を用いて、中小・小規模の小売店・サービス業者・飲食店など(以下、「中小・小規模事業者」という)で支払いを行った場合、個別店舗については5%、フランチャイズチェーン加盟店等については2%を消費者に還元する、というのが基本的な制度の概要だ。
 その還元方法は、取材日時点(2月14日)では確定しておらず、「ポイント」付与による還元だけでなく「割引」を含めて検討中という。3月上旬に決済事業者の公募が始まる頃までには確定する見通しである。
 また、この事業に参加する決済事業者は、該当する中小・小規模事業者に課す加盟店手数料を「3.25%」以下にしておく必要がある。その上で同事業の公募に名乗りを上げた決済事業者は、中小・小規模事業者に対してキャッシュレス決済のプランを提示し、そこから選択してもらう形式をとる。早ければ決済事業者の公募開始後、3月中旬には専用のWebサイト(https://cashless.go.jp)がオープンし、そこに各決済事業者のプランも掲載していく予定だという。
 その後、4月からは参加加盟店(中小・小規模事業者)の募集を開始し、10月までに説明会の開催と、イベント、周知ポスター、動画などを用いて制度の周知と広報を進めていく。

キャッシュレス・消費者還元事業(出典:平成31年度経済産業省予算関連事業のPR資料:一般会計「商務サービスグループ」分)
http://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2019/pr/ippan.html

還元事業の対象になるキャッシュレス手段は?

 還元の対象になるキャッシュレス手段の定義は「電子的に繰り返し利用できる決済手段」。これに基づいて、「クレジットカードのみならず、電子マネーやQRコード決済も対象」(原資料ママ)だが、残高使い切りタイプのプリペイドカードであるクオカードなどが対象から外れるほか、銀行振替も対象外となる。
 またこの事業は、消費税率の引き上げに向けた措置でもあるため、アリペイやウィーチャットペイといった外国人しか利用できないサービスも対象外になる。

還元事業の対象になる事業者と、還元率の違い

 還元率は、規模によって2種類の料率が示されている。中小・小規模事業者の場合で5%、フランチャイズチェーン加盟店等については2%。本部(フランチャイザー)の直営店や、大企業に該当するフランチャイジー加盟店(メガフランチャイジーと呼ばれる)は還元に対する補助はされない。(自社の営業として、同事業と同率の還元策を行うことは妨げられない)
 中小・小規模事業者の定義、判断は「中小企業基本法」に基づく。例えば小売業であれば「資本金5,000万円以下」か「常時使用する従業員の数が50名以下」のいずれかを満たせば適用となる。サービス業であれば「資本金5,000万円以下」か「常時使用する従業員の数が100名以下」となる。
 事業者の業種については基本的に問わないが、自動車購入や新築住宅の購入のように別の負担軽減策が講じられている取引や、換金性の高い非課税取引(郵便切手や商品券、プリペイドカードの譲渡など)については対象外となる見通しである。

決済端末も無償で導入可能、3分の2を国が、3分の1を決済事業者が負担

 先にも記した通り、この事業に参加する決済事業者は、該当する中小・小規模事業者に課す加盟店手数料を「3.25%」以下にしておく必要がある。これはあくまで「2020年6月30日まで」の料率だが、期間終了後の加盟店手数料率についても事業開始の前に経済産業省へ提示することが求められる。
 事業期間中は「3.25%」以下の加盟店手数料に対して、その3分の1(「1.08%」以下)を国が補助するため、中小・小規模事業者は「2.17%」以下の加盟店手数料でキャッシュレス決済を受け入れることができる。
 さらに決済端末などの導入費用についても、決済事業者が費用総額の3分の1を負担することを前提として、3分の2を国が補助することで、無償となる仕組みを用意する。「端末の所有権は決済事業者にあるので、無償でお店へ貸与いただくことになる。また、事業終了後も無償のまま継続して利用できるようになる予定」(関東経済産業局 産業部 流通・サービス産業課)という。

「消費税還元」の施策ではない

 振り返れば、前回の消費税率引き上げ(5%→8%)は2014年4月。そしてこの際には、増税に伴う需要の反動減が認められたという。そのため今回の引き上げでは「需要平準化対策」として今回のキャッシュレス・消費者還元事業が用意された経緯がある。
 今回の還元事業は「税込み価格」に対しての5%分の還元であることから、「消費税率が上がって負担の増えた分をポイントで還元する」という表現には問題がない。ただし、増税と、キャッシュレス化の推進とは本来、別の施策でもあることから、従来通り、「消費税還元セール」や「消費税還元ポイント」といったうたい文句はNGとなるそうだ。

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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