モバイル業界の伝統ある国際見本市、Mobile World Congress(モバイルワールドコングレス)の名前を冠する「MWC上海 2017」が、今年は6月28日(水)〜7月1日(土)の4日間に渡って中国・上海で開催され、今年は世界の104カ国・地域から約6万7,500人のモバイル業界関係者が参加した。
前回のレポートに引き続き、電子決済や個人認証技術に関連しそうな展示を紹介する。
■ドローンも飛ばせるほどの広大な展示会場
この数年、MWC上海の会場となっている上海新国際博覧中心(SNIEC)は広大だ。展示はW1〜W5までの5つのホール、加えて体感ゲームやドローンなど広い場所を要する展示を中心にE2、E3ホールと合計7ホールを利用して行われている。これに加えて、会場周辺の2つのホテル(Kerry HotelとJumeriah Hotel)において、関連企業等によるパートナープログラムやフォーラム、セミナーが開催された。
28・29・30日の各日には関連企業のVIPによる基調講演(キーノート)が行われ、それぞれ「The Human Element」、「Communications & The Human Element」、「Society & The Human Element」、「Industry & The Human Element」のテーマで講演が続いた。初日の28日にはKDDI代表取締役社長の田中孝司氏が登壇した。ただ、日本からはモバイルキャリアのブース出展もなく、今年のMWCでは日本企業の参加意欲が減退した印象を受けた。
■API開放による「AI」「チャットボット」イチ押しのVisaブース
Visaのブースでは、Visaネットをはじめ同社の決済関連技術やサービスへのAPIを提供する「Visaデベロッパー」を全面に出した展示を行っていた。チャットボットに組み込んで会話型のオンラインバンキングやクレジットカードサービスを提供する「Visa AI アシスタント」のデモや、VisaのWeChat公式アカウントを通じ、自然な対話により旅行手配やアポイントを実行できる「VIsaコンパニオン」などが提案されていた。他にも、カード会員の現在位置から地図情報と連動してクーポン情報を提示する「リアルタイムオファー」のデモが紹介されていた。
■中国移動(チャイナモバイル)の新eSIM
中国最大のモバイルキャリアである中国移動(チャイナモバイル)では、各種IoTデバイスの制御を押し出した展示ブースを紹介。これらのIoT機器向けに利用される「eSIM(エンベデッドSIM)」関連では、中国移動のeSIMとNTTドコモのeSIM(SIMの提供メーカーはそれぞれ異なる)を相互連携して使用できる仕組みをデモ展示した。例えば、eSIMを組み込んだデバイスを日本から中国へ製品輸出した場合でも、eSIMを抜き差しする必要なく、日本と中国のネットワークが切り替えられる。GSMA(GSM協会)の定めたeSIM管理仕様、「Remote Provisioning Architecture for Embedded UICC3.1(GSMAv3.1)」に準拠しており、MWC開催前日の6月27日付けでNTTドコモと共同発表していた。
■通信事業者が提供するQRコード決済「翼支付(BestPay)」
Alipay、WeChat Payの2強があまりに有名になってしまった中国のモバイル決済だが、「翼支付(BestPay)」もコンビニや飲食店で対応ロゴをよく見かけるサービスだ。通信会社である中国電信(チャイナテレコム)が提供するQRコード決済で、スマホアプリから現在地を利用して対応店を検索できるデモなどを展示した。ここでも、QRコードがあればレジでの支払いは無用、という提案になっている。
■ジェムアルト「モバイク」
ICカードメーカーとして知られるジェムアルトのブースでは、「Connect(接続). Secure(安全). Monetize(収益化).」のキャッチコピーを掲げ、自動車をはじめ、IoT機器への組み込み製品群を展示していた。
また、中国で爆発的に普及しているシェア自転車「モバイク」は、利用者がスマホアプリからQRコードを読み込むとロックが解除され、30分単位で課金される仕組みが採用されているが、これを実現するためにモバイクの1台1台にジェムアルトの「Cinterion M2M module」および「Machine Identification Module」が搭載されているという。
■トヨタ「SDL」で自動車とスマートフォンアプリ連携
トヨタ自動車は、スマートフォンと自動車を連携し、車内でのアプリ操作を可能とするオープンソース、「スマートデバイスリンク(SDL)」を全面に打ち出したコーナーを出展し、中国のアプリパートナーや、KDDIのアプリデモなどを紹介、来場者の目を惹きつけていた。
■アリババグループの「YunOS」
アリババグループが提供するOSが「YunOS」。スマホからスマート冷蔵庫、コネクテッドカーまで、何でも制御できるといった風情になっていた。
■中国人の6割が利用するテンセントの戦略
「デジタルコンシューマーサミット」で講演したテンセント・オンラインメディアグループ 企画・インプリメンテーション部門ジェネラルマネージャーのKiKi Fan氏。WeChatの9億3,800万アカウントをはじめ、中国人の60%が利用するというテンセントのアプリサービス。同社のビッグデータへの取り組みでは、ユーザーの静的データだけなく動的なデータを取り込むことで、リアルタイムに最適化を行っていると説明した。
■子供たちが作り上げる「YoMo」の世界
会場に忽然と現れた「YoMo」の文字。「The Youth Mobile Festival」の略だそうで、将来のイノベーターを育てようと企画された展示、ワークショップ、ハンズオンで、実に多くの子供たちが楽しそうにデジタル技術と格闘している姿が印象的だった。
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