ステラ端末使いの対面店舗でも使える新BNPL「アトカラ」、会員登録ありで36回までの分割払いにも対応

GMOペイメントサービスとGMOペイメントゲートウェイ、三井住友カードの3社は2月6日、連名でプレスリリースを発信し、翌日の2月7日から新しいBNPLサービス「アトカラ」の提供を開始すると発表した。GMOグループではすでに2013年から「GMO後払い」を提供中だが、新サービスとの違いや、投入の狙いはどこにあるのだろうか。

登録不要な「都度与信型」は1回あたり5万5,000円まで

 3社の協業によりBNPL(「Buy Now Pay Later」の略)サービスを提供することは、2022年6月に3社業務提携の発表とあわせて予告されていたもの。当初、2023年春の提供を目指していたが、約1年後ろ倒しでのサービス開始となった。
 BNPLサービスである「アトカラ」(画面1)には大きく2種類のサービス形態が用意される。1つは本人確認や事前審査が不要の「都度与信型」で、もう1つは満18歳以上から申し込みが可能な「会員登録型」(画面2)

画面1 「アトカラ」のサービスロゴ(左)とイメージキャラクターの「アトカラッコ」

画面2 2つのサービス提供形態

 「都度与信型」を利用する際には、EC加盟店サイトから遷移した専用サイトから、携帯電話番号とメールアドレスを入力する。その後、携帯電話に飛んできたSMSの認証コードを入力することで、購入手続きが完了する(写真1)。返済方法は、コンビニ払いと銀行振込(所定の手数料が発生)、口座振替から選んで利用できる。手順が簡単な「都度与信型」だが、利用先はECサイトに限定(画面3)、返済も1回払いにのみ対応している。また1回の利用あたり、税込み5万5,000円が上限となっている。

写真1 対応するEC店舗では「アトカラ後払い」を選択して支払い手続きを行う

画面3 「アトカラ」に対応予定のEC加盟店

 これに対して、eKYCの本人確認を含めた利用者登録と、事前審査のある「会員登録型」では、出来ることの幅が広い。その初期審査も最短5分をうたうが、利用枠内であれば1回〜36回(13通り)までの分割払いが利用できる。6回払いまでは分割払い手数料はかからない。また、ECサイトだけでなく、対面取引にも対応した(画面4)
 対面で「アトカラ」を利用する手順は、コード決済と同様の方式になる。専用のアプリが提供されるので、アプリ画面から「QR決済」を選んでお店のレジに画面を提示する流れだ。ユニークな点は、QRコードを提示する画面で、事前に分割回数を選択できるようになっているところ(写真2〜5)
 三井住友カードが提供するステラ端末(据え置き型のstera terminalとモバイル型のstera mobileの2機種)を設置していて、「アトカラ」を契約している加盟店での支払いに利用できる。「アトカラ」に対応する対面店舗は、今年2月末から順次登場する予定だ。

画面4 2タイプの商品性概要

写真2 対面店舗ではアプリからQRを提示する。分割回数も選べる

写真3 「アトカラ」の対面利用は三井住友カードが提供するステラ端末に対応(加盟店は「アトカラ」の契約が必要)

写真4 決済完了後のアプリ画面

写真5 Webサイトやアプリから利用状況の管理が可能

「高額商品にも後払いを使ってもらえるように」

 与信管理を含め、BNPLサービスの提供主体となるのは、割賦販売法に基づく「包括信用購入あっせん業者」の登録を受けているGMOペイメントサービス。同社はGMOペイメントゲートウェイ(以下、「GMO-PG」という)の連結子会社で、主にEC事業者に向けて「後払い型」の決済サービスを提供する目的で2013年1月に設立された。同年から「GMO後払い」を開始し、2020年11月からは「GMO掛け払い」も提供している。
 GMOペイメントサービス・代表取締役社長の向井 克成氏(写真6)はBNPLに参入する同社の狙いを次のように説明する。「(これまで提供してきた「GMO後払い」では)高額な商品や転売リスクの高いような商材を扱うショップ様に使っていただくのが難しかった。今回これを改め、ジュエリーや家電、PCなどの販売にもお使いいただけるようになり、高額は分割払いも利用できる。今後も教育サービスや旅行などにも利用範囲を広げて営業展開していきたい」

写真6 GMOペイメントサービス・代表取締役社長の向井 克成氏

 また、向井氏が常務執行役員を務めるGMO-PG社から見ると、「新たな成長ドライバーになる」という。「決済代行業のGMO-PGでは年間15兆円を超える金額を決済しており、三井住友カード(SMCC)様とはステラや給与ビジネスへの展開で連携しているが、消費者向けビジネスに取り組むのは初めてのこと。そのため、コンシューマービジネスに強いSMCCと一緒にやりたいと考えた」(向井氏)
 一方、分割払いの与信ノウハウ提供を含めて「アトカラ」をバックエンドで支える三井住友カードの疋田 政彦氏(常務執行役員兼アクワイアリング統括部長/写真7)は、「(BNPLは)デジタルを活用した分割払い取引の拡大ととらえている。分割払いに関して、これまでは弊社と今年4月に合併するSMBCファイナンスのほうで、個品割賦を対面店舗中心に展開してきた。個品割賦はニーズがあるので継続していくが、BNPLはスマホで、対面で、分割払いも出来て、とデジタルで柔軟なサービス提供を目指していく」と事業上の位置付けを説明した。

写真7 三井住友カード・常務執行役員兼アクワイアリング統括部長の疋田 政彦氏

 「アトカラ」の「会員登録型」では、三井住友カードが提供する既存のサービスとの連携も検討されているという。「後払い利用者の6〜7割がクレジットカードを併用している」(疋田氏)との認識から、同社の会員向けサービス「Vpass」での利用明細表示機能や、Vポイントとの連携が検討されているそうで、近い将来には「アトカラ」の利用でVポイントが貯まったり、返済時にVポイントで充当するような使い方が出来るようになりそうだ。

記事初出公開後の2024年2月7日に、分割払いの手数料に関する記述を追記しました。

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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