クレジットカードからスマホが探せる! 世界で初めてTileを内蔵した三井住友カード実機レビュー【動画あり】

昨年末から今年にかけて行われた先行予約(12/16〜1/14)を経て、1月中旬からついに発行が始まった「三井住友カード Tile(タイル)」。限定1,500枚の発行ということで、勇んで申し込んではみたものの、当選しなかった人もいるかもしれない。幸い、筆者はもうあきらめかけた1月末に当選案内が舞い込み(写真1)、奇跡のゲットを果たすことができたので、レビューをお送りする。(*本文に動作に関するネタバレを含みますので、現在到着待ちの方はくれぐれもご注意ください)

写真1 メールで届いた当選案内

いざ、開封の儀。まずはカードとスマホをペアリング

 「三井住友カード Tile」は、スマートフォンと連動することで場所の追跡が可能になるデバイス「Tile(タイル)」の機能を世界で初めて内蔵したクレジットカード(写真3〜4)。三井住友カードが昨年12月から発行枚数を1,500枚に限定して募集を開始した。

写真2 開封の儀。この薄い箱型パッケージは三井住友カードが昨年募集した「TOKYO 2020 ウェアラブル」と同じものと思われる

写真3 カード表面には氏名の印字などもなく、シンプルな券面。ICチップの接触端子から内蔵したTile部分に配線がつながっていることを示すデザインだが、この内部基板イメージはイラストで描かれたもの

写真4 カード裏面にはカード番号などの情報が集約されて印字されており、ナンバーレス(NL)ではない仕様。下部にさりげなくBluetoothロゴが配置されているが、Bluetoothの通信機能を搭載したクレジットカードの存在自体、極めて珍しい

写真5 同梱されてくる専用充電器。カードを差し込みEMVチップを通じて充電するため、接触型ICカード用のリーダーと同じ形状となっている

 Tileのスマートトラッカー機能は、デバイスに内蔵されたBluetoothを利用して提供されている。ユーザーはあらかじめ、Tileの公式スマホアプリ経由でデバイスと接続(ペアリング)しておく。するとスマホとデバイスの間でお互いを認識し合うようになり、両方がBluetoothの通信圏内にあれば、どちらかの操作によってもう一方のデバイスのアラームを鳴らすなどして放置場所を特定できる。

クレジットカードのボタンを押すと、スマホが鳴って居場所を知らせる!

 三井住友カード Tileでは、まさにこの単体のTileデバイスの中身を丸ごとクレジットカードに内蔵してしまった。そのため、使い方や、カードとペアリングするためのスマホアプリ(iOSとAndroidに対応/写真6)も、単体のTileデバイスを利用する場合とまったく変わらない。
 この機会に初めてTileを利用するユーザーの場合、まずは使用しているスマホにTileアプリをダウンロード&インストールし、ユーザー登録を行う必要がある。
 無事に登録を済ませてスマホアプリにログインしたら、次はBluetoothの利用を許可した上で、三井住友カード Tileの表面・左下に描かれた「Tile」の文字の辺りを押す(写真7)。するとカードからメロディが流れ、クレジットカードとスマホのペアリングが完了する。

写真6 管理用アプリには、その他のTile向けに提供されているものをそのまま使用する

写真7 ボタンのある部分も実はイラストで描かれているだけなのだが、そのあたりを指で押し込むとグッとへこんでボタンを押した感覚になる。カード型電卓に似た作りか

 いま、ふつうに「クレジットカードとスマホのペアリングが完了する」と書いたが、もちろん、これは従来のクレジットカードの常識からすれば尋常ではない事態だ。
 ともあれ、ペアリングが完了すると、スマホアプリ上に「三井住友カード Tile」のアイコンと「探す」の文字が表示されるようになる(写真8)
 そう、さっそく探したいのだ。いま手に入れたばかりのクレジットカードを。はやる気持ちを抑えつつ、「探す」のボタンを押してみる・・・。

写真8 アプリを起動すると、自分のスマホと並んで「三井住友カード Tile」のアイコンが表示される。カードがスマホのBluetooth通信圏内にあれば「探す」の文字が出る

動画1 スマホから「探す」とクレジットカードが鳴って知らせる

 「そうか、そこにいたのか・・・ 全然気が付かなかったよ・・・」
 聞こえてくる音楽はたまごっちを彷彿とさせるピコピコ音に過ぎないが、クレジットカードから出力されていることを思い出すと、静かな感動が押し寄せてくる。試しにお財布の中にカードを収めた状態でも「探す」してみるが、そのままバッグの中に放り込んでいたとしても、耳を澄ませば確かに聞こえてくる。これで、カードを家の中のどこかに置き忘れてしまったとしても、スマホ操作ひとつで行き場を見つけることができそうだ。
 しかし、より面白いと思ったのは、逆方向の呼び出し機能である。先ほどスマホとのペアリングの際に押してみた、クレジットカードの表面・左下に描かれた「Tile」ボタン。ちょっとコツが要るのだが、ここを「ダブルクリック」すると、今度はスマホからリッチなメロディが鳴り出す仕組みになっている。当然、スマホがスリープした状態であったとしてもけっこうな音量で鳴ってくれるので、すぐにスマホのある場所を探し出すことができそうだ。

動画2 クレジットカードのボタンをダブルクリックするとスマホが鳴って知らせる

 筆者の場合、財布やカードを落としたり紛失した経験はほとんどないので、クレジットカードを探す必要に迫られる場面があまり想像できなかったが、スマホは結構な頻度で居場所が不明になる。家の中であっても仕事場であっても、すぐ近くにいるはずにも関わらず、行方不明になる。そんなとき、(筆者の場合)決してなくすことのない財布から三井住友カード Tileをサッと取り出し、ダブルクリック。ほどなくスマホを奪還するという一連の動作は、理にかなっていると感じた(写真9)。これは実際に所有してみなければわからなかった魅力だと思うので、読者の皆さんもぜひ機会があれば、Tileデバイスの使い勝手を体験してみていただきたい。

写真9 同じアカウントでログインすれば複数台のスマホを登録できるので、1台のスマホからもう1台のスマホを探すこともできる

通りがかりのTileユーザーが落としものの居場所を検知&通知

 ところでTileのスマートトラッカー機能を実現している技術だが、GPSを内蔵しているわけではないため、デバイスの位置情報などを把握することはできない。このため、TileデバイスがスマホのBluetoothの通信範囲から出てしまった場合には所在を探すことができない。
 そこでTileでは、スマホとTileデバイスが最後にBluetooth接続した場所を記録しておき、スマホアプリ内の地図に表示する機能が用意されている。これで、紛失してしまった場所の手掛かりを得ようという寸法だ。
 しかし、たとえば電車の中でカバンごとTileデバイスを紛失してしまったという場合、最後の接続場所がわかったとしても探しようがないかもしれない。そんな場合には、探しているTileデバイスの近く(Bluetoothの通信距離)を他のTileユーザー(とそのスマホ)が通りがかると自動的に検知し、デバイス所有者のスマホアプリにその場所を通知してくれる機能が効果を発揮する。
 このTileユーザーによって成り立つ「Tileネットワーク」は、世界195の国と地域のユーザーで構成されているというから、海外旅行中になくしてしまったクレジットカードの在処だって検知できるかもしれない(回収のためにもう一度現地に赴くかどうかは別に悩むとして)。TileのライバルであるApple社のAirTagでも同様の機能が提供されているが、匿名性を確保しつつ、ユーザー同士が助け合って落としもの・なくしものを探す仕組みは画期的といえる。
 加えてTileの場合、ユーザーだけでなく、TileデバイスのBluetooth回線を感知する専用の「Tileアクセスポイント」が用意されている。昨年12月末には東京メトロ・飯田橋駅構内の「お忘れ物総合取扱所」にこの「Tileアクセスポイント」が設置されたため、仮に東京都内の電車内で置き忘れてしまった場合でも、なくしものがお忘れ物総合取扱所まで到着すれば、ユーザーがアプリ上でそのことを確認できるようになるという。

Tile内蔵のクレカ代は5,500円、ATMや券売機などへの挿入は厳禁

 三井住友カード Tileの気になる価格だが、クレジットカードとしての維持費用は年会費が1,375円(税込)。初年度は無料。これとは別に、カード発行手数料として5,500円(税込)が請求される。現在は募集していないので評価しがたいところだが、つまりこのTileを使用するための5,500円をカード利用者が高いとみるか安いとみるかが、今後のサービス継続における1つのポイントとなるだろう。
 ところで従来から発売されているTileデバイスには、電池交換できるタイプと電池交換のできないタイプ(使い切り)とがある。これに対して三井住友カード Tileでは、リチウムイオン電池をカードに内蔵(写真10)することで、利用途中での充電を可能とした。取扱説明書によれば、1回のフル充電で最大約6カ月は利用が可能。また、カード送付時に同梱されてくる専用充電器にカードを差し込むことで、繰り返し充電して利用できる(写真11〜13)。ちなみに充電が切れた状態であっても、使えなくなるのはTileの機能だけで、クレジットカード機能自体は問題なく利用できる。

写真10 超薄型バッテリーを採用したことでカード自体の厚みを非接触ICカードの定格値である0.76mm以内に収めた(写真上)。写真下の「三井住友カード ナンバーレス(NL)」と比べるとほんの少し厚みが増した印象。ちなみに「NL」のほうはカード側面まで着色されたカラーコアカードのため、ちょっと違いが比較しにくい

写真11 専用充電器からUSB端子を引き出して給電する

写真12 なんとEMVチップを通じて充電する。充電端子を兼ねたEMVチップを新開発したという

写真13 充電が終わるとブルーの「Charge」ランプが消灯する

 プラスチックカードとしての耐久性についても、1,000回以上の屈曲テストをクリアした実力を持つが、ATMや券売機などのカード搬送機構を持つ機器への挿入は、取扱説明書上の「禁止事項」となっている。そのため、三井住友カード Tileではキャッシングが利用できず、キャッシング枠も用意されていない。
 また、説明してきた通り、特殊な内部構造を持っているため、カードを廃棄する際の取り扱いについても少し注意が必要だ(写真14)。リチウムイオン電池を内蔵するカードの大部分はリサイクル排出の適用となり、ICチップを切断して切り離した部分は不燃物廃棄となる。
 カードを入手した直後から、カードを捨てるまで、とにかく一連の手順や取り扱いが一般的なクレジットカードと異なっていることも、世界初のTile内蔵クレジットカードの楽しみの1つと言えるだろう。

写真14 取扱説明書を見ると、リチウムイオン電池の占める面積の広さがわかる。廃棄のためにカードを裁断する際には、発熱を抑制するため充電しないようにとの注意書きがされている

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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