Zホールディングス(以下、「ZHD」という)とLINEは3月1日、同日付けで両社の経営統合が完了したことを発表した。今後、ZHDが傘下に抱えるヤフーとLINEの各サービスに関して、統廃合も視野に入れて検討を進める。スマホ決済サービスである「PayPay」と「LINE Pay」については、2022年4月にLINE Payが日本国内で提供するQR・バーコード決済を「PayPay」に統合する方向で協議を開始した。
海外では「LINE Pay」ブランドを継続
PayPayとLINE Payでは加盟店における連携を開始し、4月下旬以降、全国300万カ所以上(2021年2月24日時点。店舗やタクシーなどの登録カ所数)のPayPay加盟店のうち、ユーザースキャン方式(MPM)加盟店においてLINE Payでの支払いが可能になる。対象加盟店には順次、新しいアクセプタンスマークが発送される(写真1)。加盟店側での手続きは不要で、手数料などにも変更は生じないという。
この連携により利用者は、1枚のQRコードでPayPayとLINE Payでの支払いができるようになる。2021年2月末時点で、PayPayユーザー(3,600万)とLINE Payユーザー(約3,900万)の合算数は約7,500万に上る。
その上で、2022年4月にLINE Payが日本国内で提供する「QR・バーコード決済」を、「PayPay」に統合することを念頭に協議を開始した(写真2)。なお、連携やサービス提供にあたっては、関係各社が当該事業を行うために必要な法令上の要件を充足することが前提になるという。
台湾、タイ、インドネシアの海外で提供しているLINE Payについては、現地での普及度合いや認知度の高さから、今後も同じ名称でのサービス提供を続ける(写真3)。他方で、LINE Payの名称にて日本国内で提供されている「QR・バーコード決済」以外の決済サービス、非接触IC決済や国際ブランドカード、オンライン決済などもPayPayに統合するかどうかについては具体的な言及がなかった。
フィンテック領域ではユーザー行動にあわせた「シナリオ金融」を志向
ZHDでは役員10名からなる「プロダクト委員会」を立ち上げ、今回の合併によりZHDが傘下に抱えることになったヤフーとLINEの各サービスに関して、統廃合も視野に入れて検討を進める(写真4)。プロダクト委員長は、LINEからZHDの取締役GCPOに就任した慎 ジュンホ氏が務める。
例えばメディア事業であれば「ヤフーニュース」と「LINEニュース」の事業としての重複が想起されるが、現時点でこれらを統合することは予定していないという。「ヤフーニュースでは、ヤフートピックスを見る。LINEニュースはメッセンジャー欄に(記事が)一本表示されるといったように、それぞれに愛用されてる名物コーナーも違っている。『混ぜるな危険』と言うか(笑)、ユーザー情報が補完的だ」(Zホールディングス 代表取締役社長Co-CEO/共同最高経営責任者の川邊 健太郎氏)
「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」の3領域を「根幹領域」と位置付けるZHDだが、新たに「集中領域」として「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech」「社会」の4領域に注力していくことも発表した。
そのうちの「Fintech」事業では、「買う」、「予約する」、「支払う」、さらには「借りる」「増やす」「備える」といったユーザーの行動にあわせて、リボ/後払いやローン、投資商品、保険などの金融商品を提案する「シナリオ金融」を拡充していく(写真5)。
この4月にPayPay銀行へ名称変更するジャパンネット銀行と、LINE Financial、みずほ銀行が2022年度中の開業を目指しているLINE Bankなど、金融分野の中でも銀行や証券などには重複する事業体も多いが、これらは同社が「マルチパートナー」と呼ぶアプローチにより棲み分けが可能だという。