Zホールディングスの上半期決算は増収・営業利益増。コロナ禍でも成長が止まらないPayPayに、下半期はクレカへの投資も

Zホールディングスは10月30日、2020年度第2四半期決算を発表した。第2四半期(7〜9月)の連結業績は、売上収益が対前年同期比15.4%増の2,833億円、営業利益は同20.5%増の476億円を計上した(写真1)。上半期(4〜9月)でも売上収益増(対前年同期比15.1%増)・営業利益増(同29.8%増)を達成し、コロナ禍にあっても成長を止めない、インターネット事業を主軸とした同社のポートフォリオ経営の強さを見せつけた(写真2)。

写真1

写真2

社員が9割在宅勤務でも増収・営業利益増

 他方で、この上半期には同社社員の「働き方」も大きく変化している。Zホールディングス・代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の川邊 健太郎氏(写真3)は、「この増収・営業利益増を、90%以上の社員が在宅でリモート勤務へ移行する中で挙げられたことが大きい。組織のケイパビリティの向上もあった上期だった」と上半期を振り返る。
 日本政府は新型コロナウイルスの感染対策として、企業に対し、今年の年末年始に関して休暇の延長や分散を要請しているところだが、同社の場合には「パフォーマンス(成果)が出せればどこで仕事しても良い『どこでもオフィス』の発想をしているので、帰郷先から仕事してもらっても構わない。したがって今の働き方でも(休暇が)十分に分散できてしまう」(川邊氏)こともあり、年末年始の就業日程はカレンダー通りを予定しているそうだ。

写真3 Zホールディングス・代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の川邊 健太郎氏。「最も力を入れているのはコマース事業だが、特にO2O事業が政府の『Go TO Travelキャンペーン』に連動して急速に回復した(第2四半期は対前年同期比で51.2%増)。クーポンの付与が旅行代金に対するパーセンテージだったので、単価の高いところに宿泊したい気持ちが高まり、高級な宿を揃えている『一休』などに利用が集中したのではないか」と話した

下半期は「eコマース物販」と「クレジットカード」に積極投資

 このところ、グループで提供している各種金融サービスの名称を「PayPay」へ統合しているZホールディングスだが、PayPayそのものの主要な取扱指標(KPI)は第2四半期も引き続き順調な成長を見せた。四半期の決済回数は4億8,656万回で対前年同期比で実に5.1倍に。加盟店数は256万カ所、登録者数は3,246万人(10月19日に3,300万人を突破)まで伸長した(写真4)

写真4

 川邊氏が「最大の成長基盤」と評価するPayPayの今後の展開では、ロイヤルティプログラム「PayPay STEP」の拡大を挙げた。PayPayをフックに、同社の関連サービスを利用することで「PayPayボーナス」の還元率を優遇するもので、eコマースやヤフーカード、ソフトバンクの携帯電話事業などとの相乗効果を狙う(写真5、6)。10月1日からは最大で20%を還元するプログラムに変更した。

写真5

写真6

 また、決済手段としてPayPayも使えるショッピングモールの「PayPayモール」では、この11月以降、出店する企業の実店舗在庫との連動を始める(写真7)。「ユーザーが事前決済することで、店舗における支払いオペレーションを簡素化し、感染リスクも減らせる。ユーザーから見ると、ネットで購入した商品を自宅に届けてもらうだけでなく、お店に取りに行けるようにもなる。このような『オフラインのBtoC』をオンライン化することで、われわれの事業に取り込んでいきたい」(川邊氏)

写真7

 日本IT団体連盟の会長として、平井 卓也・デジタル改革担当大臣との面談も報じられた川邊氏だが、「コロナ禍で日本のDXの遅れが顕著に表れたところだが、政府や官公庁の推進によってここから各所にデジタル化の波が訪れる今こそ、われわれにとって成長のチャンス。中長期的な成長を加速させていきたい」と意気込む。そこで不要不急の費用を抑制した上半期から姿勢を転じ、下半期は攻めの姿勢で注力領域を伸ばしていくという。
 そこで注力・投資領域として提示されたのは「eコマース物販」と「クレジットカード」の2つ(写真8、9)。PayPayモールやヤフーショッピングなどを通じた、PayPayの得意とする「還元」にも引き続き投資を振り向ける考えだが、「それ(還元)以上に利用者がわくわくしなければ、PayPayを定常的に使っていただくのは難しい。したがって機能面でも投資を考えていくし、それが外部にあるものであれば買収する手もある。チャンスと思えば、機動的に、大胆にやっていきたい」(川邊氏)とした。

写真8

写真9

写真10 (参考)PayPayの資本構成

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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